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[データマネジメント2012]

データマネジメント2012~ソーシャル、クラウド、ビッグデータの時代を勝ち抜く〜

2012年5月10日(木)

2012年3月7日、東京都の目黒雅叙園にて「データマネジメント2012」(主催:一般社団法人 日本データマネジメント・コンソーシアム)が開催された。さまざまな情報を高度に利活用し、具体的な「次の一手」に結び付けるには、どのような取り組みが必要となるのか。ユーザー事例やITベンダーのソリューション紹介など多くのセッションを通して、実務直結型の議論が展開され、会場は熱気が渦巻いた。

ソーシャルメディアやビッグデータなどのITトレンドは、新しいタイプのデータをどんどんビジネスに取り込み、効率的に「次の一手」を打っていくことを志向している。今後の企業ITには欠かせない取り組みであることは間違いないが、その一方で現実に照らしてみると、既存のデータさえも十分に整理・活用できていないケースは決して少なくない。

データの鮮度が疑わしく精緻な分析ができない、どこにどんなデータがあるか把握できていない、本来は同じ意味のデータなのに形式や表現が異なったまま散在している…。さまざまな理由があるにせよ、大局的に見れば「データの質が悪い」という所に行き着く。データ品質の計画的な維持・向上を図る取り組み、すなわちデータマネジメントがうまく機能していないのだ。

こうした状況を打開すべく、2011年4月に発足したのが「日本データマネジメント・コンソーシアム」である。ユーザーやITベンダーの会員企業40社以上が集まり、必要となる知識やノウハウを共有すると共に、啓蒙活動を積極的に展開している。

同コンソーシアムが設立以来初となる大型カンファレンスとして2012年3月7日に開催したのが、「データマネジメント2012」だ。当日は14のユーザー事例セッションと12のベンダーセッションが催され、データの高度な利活用に関心を寄せる多くの来場者でにぎわった。

最初の基調講演には、米AT&TでERPオペレーション・ディレクターを務めるBryon Rickey氏が登壇。「2000万ドルのコストを削減したデータ・アーカイビングセンターの意義と役割」と題して、ERPシステムのデータ量増大に対処するための取り組みを紹介した。

2つめの基調講演の壇上に立ったのはNTTドコモ 情報システム部情報戦略担当部長の白川貴久子氏。同社におけるデータ活用の実態について具体的に語った。以下、概要をレポートする。

[基調講演2] 米AT&T
iPhoneビジネスの成功によりデータ量が年率100%増加

Bryon Rickey氏 写真1 米AT&TでERPオペレーション・ディレクターを務めるBryon Rickey氏

発明家グラハム・ベル氏が創立したベル電話会社を前身に1885年、世界初の長距離電話会社として発足したAT&T。1億320万人もの加入者を擁する米国最大手の電話会社である。企業や消費者向けに音声・データ通信サービスを提供、2011年売上高は1267億ドルに上る。

同社がデータアーカイブを中心としたデータマネジメントに取り組み始めた背景には、企業合併に伴うERPシステムのデータ量の増加があった。携帯電話事業者の米シンギュラー・ワイヤレス(現AT&T・ワイヤレス)の合併に伴うシステム統合により、オラクルのERPパッケージ「Oracle E-Business Suite(以下、EBS)」を使ったサプライチェーン管理システムのデータ量が2倍以上の6TBに増加。この結果としてパフォーマンスの低下に直面した。

「3000以上の小売店が接続し、月次の帳簿処理など多数のバッチ処理に利用する。1日のアクセス件数は35億件を超えることも。EBSの性能低下がもたらすリスクは非常に大きかった」(Rickey氏)。

また、米アップルとのiPhone販売に関するレベニューシェアのために構築した「マーキュリー」と呼ぶカスタムアプリケーションもデータ量増加に拍車をかけた。AT&Tは、屈指のiPhoneリセラー。直近四半期は、全世界の販売台数の5分の1にあたる760万台を販売した。アップルが新型iPhoneをリリースするたびにデータ量が増加。当初10TBだったデータ量は22TBに膨らみ、バックアップの取得が困難になっていた。

3つのステップでデータを削減
手をつけやすいところから

インデックスによるチューニングには限界がある。AT&Tはデータアーカイブを中心に、物理的なデータ量を削減することにした。プロジェクトは、3つのステップを踏んだ。

第1のステップでは運用プロセスを棚卸しして、不要なデータが発生しないようポリシーを設定した。“データの取り込みが終わったファイルは必ず削除する”といった要領である。

第2のステップではデータベース内の不要なデータを削除した。具体的には、データの加工に用いる作業用テーブルや、パフォーマンス管理のためにジョブの実行結果を蓄積した管理用テーブルなどが対象。保持期間のポリシーを定め、それを過ぎたら削除するようにした。

第3ステップではアーカイブに着手した。アプリケーションが使用しなくなった過去の取引データなどを履歴データベースに移動する。ただし、業務データベースと履歴データベースをあたかも1つのデータベースとして閲覧できるようなビューを用意することで、既存の業務に影響を及ぼさないようにした。

当初はアーカイブシステムを内製していたが、システム構築の負荷が大きいことや、データの整合性などの面で不安があることなどから頓挫。各社製品を比較検討した結果、最終的にインフォマティカの「Informatica Data Achieve」を採用するに至った。

「Informatica Data Achieve」で5年間で2000万ドルのコストを削減

一連の取り組みの結果、本番環境のデータベースの容量をEBSは30TB、マーキュリーも54TB削減した。それぞれのシステムは災害対策やレポーティング、開発・テストなどのためにデータベースを複製しており、AT&T全体で見た場合の総削減効果はそれぞれ780TBと450TBに上った。

データ量の削減によってパフォーマンスも改善。性能低下を回避したことによって、バッチ処理や障害対応に要する時間を5年間でEBSは1万2000時間、マーキュリーは8000時間短縮、両システム合計で約2000万ドルものコスト削減効果を得られたと算出している。

「システムの症状を理解し、アーカイブの必要性を理解する。第1のステップだけでも相当のデータ量削減が見込める。全社的に実施すれば効果はさらに大きい。そのためには経営層の支援が不可欠。投資対効果を示して信頼を獲得することが肝要だ」(Rickey氏)。

[基調講演2] NTTドコモ
新技術の導入だけでなく分析スキルに長けた人材育成が必要

白川貴久子氏 写真2 NTTドコモ 情報システム部情報戦略担当部長の白川貴久子氏

データ分析をとりまく環境は年々進歩している。ハードウェア性能の向上や、マイニング技術の進化、並列分散処理技術の登場によって、大量データを対象に複雑な分析を行えるようになった。ソーシャルメディアの登場は新たな可能性をもたらしている。ただし、分析の技術やデータを保管する容器が揃っても、それを使いこなす人間がいないというのでは意味がない。

マーケティングリサーチ部門を経て、現在は情報システム部門で基幹システムの情報活用を担当するNTTドコモの白川貴久子氏は「新技術には積極的にチャレンジしなければならないが、分析の基本を押さえ、現場感覚を備えた人材を育成することも必要不可欠」と指摘する。

白川氏は2009年から“分析事例発表会”という社内向けセミナーを開始した。四半期ごとに各支社で巡回して、各支社の業務部門が行ったデータ分析の取り組みを発表する。どのようなデータ分析が可能なのか、どのようにすればより適切なデータ分析が可能になるのか、実例を使ってディスカッションする。

回を重ねて発表のレベルが上がってきたころを見計らって、マーケティングリサーチ部門で培ったノウハウを伝える分析設計演習も開始した。

「闇雲にデータ分析しても効果は期待できない。データ量が増えれば、見落とすことも多くなる。何が知りたいかを明確に設計する必要がある。意思決定に役立たなければ、いくらデータを分析しても意味がない。可能性は膨らんでいるとしても、使いこなさなければ意味がない。会社全体に資してこそ」(白川氏)というメッセージに、多くの来場者が大きくうなずいていた。

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