[技術解説]

仮想化の最新動向を知る─適用範囲広げ俊敏なサービス展開に応える

仮想化の最前線を追う

2012年11月7日(水)IT Leaders編集部

仮想化技術が注目されたきっかけは、物理サーバーの削減や設置場所の有効利用といった コスト削減策としてだった。現在はさらに、リソースを迅速に用意できる 即時性への期待が高まり、ストレージやネットワークなどに適用するケースも増えている。 仮想化はどこまで進化しようとしているのか。最新動向を追う。

ハードウェアのリソースを物理機器から切り離して柔軟に扱えるようにする「仮想化」。これまでは乱立する物理サーバーを統合したり、サーバーの余剰リソースを有効活用したりするといった、主に合理化(=コスト削減)の手段として用いられてきた。しかしビジネススピードが加速する中、情報システムを環境変化に即応させる“俊敏性”を得る手段として仮想化への期待が高まっている。

現に、サーバー領域だけにとどまらず仮想化の適用範囲を拡大しようという取り組みが活発化している(図1-1)。データ伝送路や帯域を動的に変更できるようにする「ネットワーク仮想化」はその筆頭だろう。種々雑多なストレージのリソースを集約して、要件に応じて最適化する「ストレージ仮想化」も実用化が進む。さらにデスクトップを仮想化してクラウド経由で提供する「DaaS」や、PC/サーバーに逐一インストールすることなく機能を利用できるようにする「アプリケーション仮想化」などもあり、仮想化のアプローチは企業ITの至るところで進化を続けている。これらの持つポテンシャルを知ることは、大規模な情報システムを展開する大手企業や、データセンター事業者にとって不可欠なこととなっている。

では今、どの領域がホットなのか。以下で概観していこう。

図1-1 仮想化製品を投入する主要ベンダー
図1-1 仮想化製品を投入する主要ベンダー

手作業をソフトで一元化、期待膨らむSDN

仮想化の最新動向を知る上で、まず押さえておきたいのがネットワークの領域だ。よく言われるように、ネットワークはスイッチやルーターなどの物理機器の設定に依存する運用が主流で、拡張性の面で見ると“静的”な域を出ていなかった。ITインフラを構成する3大要素であるサーバー、ストレージ、ネットワークのうち前2者の仮想化が進むのとは裏腹に、ネットワークは未開の地として残されてきた。

大規模ネットワークを活用する上での工夫がなかったわけではない。ネットワーク性能を維持したり、セキュリティ面での問題を回避するためにネットワークを論理的に分割する「VLAN」はすでに多くの企業が採用してきた。ただし、その仕様上、論理分割できる数に制約があったり、一度決めた構成に変更を加えるには手間がかかったりと、もどかしい部分が少なからずあった。

片や、スイッチ等の最新のネットワーク機器に目を向けると、メカニカルにデータ転送するような単純なものは限られる。大半はプロセサやメモリーを備えた“インテリジェント”な装置。誤解を恐れずに言えば、多数のネットワークポートを備えたサーバーが社内随所に散らばっているようなものである。

これらの挙動をソフトウェアで設定・ 変更できるとしたらどうなるか。そこにはネットワークの構成や伝送経路、帯域といった性能や運用性にかかわるものを「動的」に変更できる世界を創れるのではないか─。こうして出てきた考え方が「Software-Defined Network(SDN)」。文字通り、ソフトウェアを使ってネットワークを制御しようとするコンセプトである。「手間と時間を要したネットワークの設定変更作業を大幅に効率化できる。事業のスピードアップにも大きく貢献するだろう」(ネットワンシステムズ ビジネス推進グループ ビジネス推進本部 担当部長 高垣謙一氏)と期待する声が高まっている。

こうしたメリットに着目し、大手ベンダーが専業ベンチャーを買収する動きが目立ち始めた。ヴイエムウェアは2012年7月、SDNの分野で存在感を示すニシラネットワークスを買収。ヴイエムウェアはサーバーのみならず、ネットワークも含めて仮想化の適用範囲拡大に突き進む。

オラクルも同月、ネットワークベンダーのシーゴシステムズを買収した。シーゴは広帯域のインタフェースである「Infiniband」を複数の帯域に分割する技術に強みを持つ。こうした技術を活用すれば、ネットワークの利用効率向上や性能改善などが見込める。

SDNを具現化するOpenFlow、対応製品が相次ぎ登場

SDNというコンセプトを具体的に実装する技術として耳目を集めているのが「OpenFlow」だ。OpenFlowは、データの伝送経路などをスイッチとは独立したコントローラで規定し、動的にネットワーク構成を変えるための仕様である(詳細はPart3を参照)。

登場して間もない技術だが、早くから実証実験を重ねて製品化に踏み切ったのがNECだ。同社は2011年3月、OpenFlowを使って制御できるスイッチ「UNIVERGE PF5240」と、スイッチを制御するコントローラ「UNIVERGE PF6800」を同時に発表した。

NTTデータもOpenFlowに注力する1社だ。2012年6月にはソフトウェア型のコントローラ「バーチャルネットワークコントローラVer2.0」の開発を表明。8月にはOpenFlowコントローラと運用管理ツールである「Hinemos」を連携するオプションを発表した。

IBMが10月に市場投入したのが、OpenFlowコントローラの「Programmable Network Controller」。2011年11月に提供を開始したOpenFlow対応スイッチとともに、対応製品の拡充を進める。「今後はOpenFlowを使ったネットワークと、従来の既存ネットワークが混在することが想定される。こうした異なるネットワークを相互接続できる環境が必要だ。当社はOpenFlowをサポートするスイッチに加え、非対応となる既存スイッチまで制御するプラットフォームの開発までを視野に入れる」(日本IBM システム製品事業 システムx事業部 システム・ネットワーキング戦略担当 太田安信氏)。

ネットワークベンダーもOpenFlowをサポートする機器の開発に乗り出す。ブロケードコミュニケーションズシステムズはNECのOpenFlowコントローラと自社のOpenFlowスイッチを連携するソリューションを提供。スイッチ「Brocade NetIron CES」やルータ「Brocade MLX」などをOpenFlowを使って制御することが可能だ。

そのほか、ジュニパーネットワークスやアリスタネットワークスといったベンダーもOpenFlow対応製品の開発に乗り出す。シスコシステムズも現在は検証用途に限りながらも、一部製品をOpenFlowに対応させている。

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