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2013年に向けて

2013年1月16日(水)田口 潤(IT Leaders編集部)

あっという間に過ぎ去ろうとしている2012年。読者の皆さんにとっては、どんな年だっただろうか。

UML生みの親の一人、グラディ・ブーチ氏 UML生みの親の一人、グラディ・ブーチ氏

 企業向けIT製品に関して言えば、プライベートクラウドが浸透する一方で、4月にIBMがPureSystemsを世界同時発表。年後半には日立製作所、富士通が同様の垂直統合型プラットフォームを発売した。先行するオラクルExaシリーズを含め、選択肢がぐっと増えたことになる。垂直統合の意味は何か、オープンプラットフォームとの違いは何かなどは本号で特集したので、ご一読頂きたい。

 消費者向けIT製品では、やはりモバイルデバイスの充実が挙げられるだろう。アップルのiPad mini、グーグルのNexus7、アマゾンのKindleなどが出そろい、Windows8搭載のタブレット機も多数登場した。その結果、BYODを含め本格的にモバイル活用の環境整備に取り組む時期が到来した。何もしなければShadowIT(非公認の隠れIT機器利用)が進んでしまうからだ。

 事故や残念なことも多かった。事故といえば、ファーストサーバが6月に起こした顧客数6000件におよぶデータ消失がある。半年経った今、ほとんど話題に上らなくなったが、事故そのものを風化させてはならないと思う。

 政治のドタバタでマイナンバー制度が廃案になったことは、個人的に残念なことの1つである。データや情報を効率的に扱い、処理するためには何らかのコード化は欠かせない。「先進20ヵ国の中でこの種の制度を持たないのは日本だけ」との指摘もある。

 もちろん議論されてきたマイナンバー法案が本当に優れたものだったかには、多くの疑問が残る(例えば、全国民対象のICカードを発行する計画など)。「巨額の税金を投入して、役立たない巨大システムを作るだけ。廃案になってよかった」という意見も聞く。

 確かにそういう面はあるが、だからといって共通番号制度がなくていいという話にはならない。行政事務の効率化はもとより、税務や医療などの領域で国民サービスの向上は不可欠だ。プライバシー侵害のような負の側面を押さえることができれば、ITによる何らかの価値創出も容易になるはずである。

 2012年を振り返りつつ、2013年に我々は何をするべきか。改めて先進的な技術や取り組みを学び、咀嚼し、そして実践することが必要だと考える。電子政府を例に挙げれば、本号の中国電脳事情で「深圳市に電子政務資源センターが設立されたこと」を、韓国ICT事情では「電子政府の標準フレームワーク新版が公開されたこと」を報告している。これらをそのまま取り入れる必要はないにせよ、理解した上で日本にあったやり方で取り入れる(実践する)時期だろう。

 電子政府だけではない。IT、情報システムも同じ─。こんな思いから今、本誌はアドバイザーである札幌スパークルの全体監修のもと、「実践の視点からともに学ぶ」をコンセプトにした、少人数のワークショップ(勉強会)を計画している。正式にご案内できる段階になれば読者の方々に優先的に案内したい。なお、もちろん誌面でも、2013年は「実践につながる」を基調テーマに置きつつ、記事をお届けするつもりである。

 話は変わるが、UML(統一モデリング言語)を生み出した米Rational社をご存じだろうか。10年前に米IBMが買収した、開発方法論やツールのベンダーだ。先頃、“買収10周年を祝う会”が開かれ、縁あって出席した。熱気がある会だったが、書きたいのはそのことではない。UML生みの親の一人であるグラディ・ブーチ氏が、会の趣旨に賛同し、自らビデオ・メッセージを作って送ってきたことだ(写真、YouTubeにアップされている)。

 ブーチ氏は、その中で「確かなのはシステムが今後、我々の想像を超えて複雑になっていくこと。ソフトウェアの役割も大きくなる。それこそがエキサイティングな理由であり、自分たちのようなソフトウェア技術者にとって挑戦する価値がある」と語る。氏の年齢は57歳。「超」のつく有名人だが、偉ぶりもせず、引退するそぶりも見せず、ソフトウェアの価値を説き続ける。ここにも学ぶべき何かがあると思う。

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