【Special】

ゴルフ場予約のコールセンターにGoogle App Engineで情報基盤構築

2013年1月31日(木)

全国に135のゴルフ場、23の直営練習場を保有し運営する業界最大手のアコーディア・ゴルフ。同社は、予約チャネルの1つであるコールセンターにおいて、各ゴルフ場に付帯する情報を一元的に管理・参照するシステムを構築した。基盤には、グーグルのPaaSである「Google App Engine」を採用。国内での採用事例がそれほど多くないGAEを選択したのには、どんな背景があったのか。アコーディア・ゴルフの情報戦略を統括する田中理氏と、システム構築を担当したオープンストリームの佐藤浩二氏に話を聞いた。

田中 理 氏
田中 理 氏
株式会社アコーディア・ゴルフ 情報システム担当 マーケティング担当 副本部長
日本モトローラ、日本アイ・ビー・エムを経て2004年にアコーディア・ゴルフに入社。情報システム部責任者として会社全体のIT投資を統括。2012年度よりマーケティング部の責任者を兼務。

田中 理 氏
株式会社オープンストリーム
代表取締役社長 佐藤 浩二 氏
日本ユニシス、日本ヒューレット・パッカードを経て、2004年にオープンストリームに入社。2007年に社長に就任し、2008年に親会社の豆蔵ホールディングス取締役就任。現在、アクシスソフトの社長など6社のグループ会社役員を兼務。

アコーディア・ゴルフが運営するゴルフ場を予約するには、ゴルフ場への直接申し込み、Web、予約センター(コールセンター)への電話という3つのチャネルがある。現状の比率で見ると、それぞれ40%強、35%、20%といったところだ。ゴルフ場への直接申し込みはメンバー(会員権保有者)が中心であり、他社との差異化を図る上では、Webや予約センターの果たす役割がより大きくなる。とりわけ、コールセンター経由の予約はWebのそれよりもキャンセル率が低い傾向にあることから、「ユーザーエクスペリエンス、すなわち顧客が求めている情報を正確かつ速やかに提供し、いかに満足してもらうかがカギを握る」と田中氏は話す。

同社のコールセンターは九州地方に2カ所あり、全国130のゴルフ場の予約を集中して受け付けている。センターが九州にあっても「鴨川カントリークラブでコンペをやるのだが、ニアピン賞の推奨ホールは?」「大月ガーデンゴルフクラブに行くのに渋滞時の抜け道はあるか?」といった詳細な問い合わせに即答しなければならないし、当該ゴルフ場が何らかのキャンペーンを企画していれば漏れなく案内しなければならない。顧客満足度を高めるには、「オペレーターがゴルフ場の情報を1秒でも速く検索し得る仕組みが勝負所となる」(田中氏)。

Google Apps導入を機に
クラウドのポテンシャル知る

実は、オペレーター向けの情報検索システムを2009年から稼働させていた同社だが、満足いく応答速度が得られていなかった。そろそろ抜本的な刷新が必要だと思い始めた中で、田中氏が着目したのがGAEだった。

クラウドに目を向けた背景の1つとして、同社が2010年8月から社内メールシステムにGoogle Appsを利用していたことがある。安定性やパフォーマンスに不満はなかったし、過去のメールを探し出すようなシーンでも、Googleならではの検索技術に大きな潜在能力を感じていた。

そんな矢先、共通の知人を介して知り合ったのがオープンストリームの佐藤社長だった。早速、「Googleの検索機能やGAEを活用して予約センターのシステムができないものか」と相談を持ちかけた。2011年3月のことである。「ちょうど、当社でもGoogle AppsをはじめとしてGoogleのサービスを使い込んでいたし、PaaSにも注目していたタイミングだったので、非常に興味深い案件だと感じた」と佐藤氏は振り返る。その後も幾度となく意見を交わし、ビジネスとテクノロジーの両面で具体策を練っていった。こうして、時期同じくして両者がGAEに前向きな関心を寄せていたことがバネとなり、2011年5月に正式に発注が決まった。

迅速な情報検索を具現化し
予約1件に費やす時間を大幅短縮

ゴルフ場情報ツールは、約半年の開発期間を経て、2011年11月に無事にカットオーバーした。クラウド上にシステムを構築したことについて田中氏は、「お客様からの多種多様な質問に答えるには、テキストだけでなく写真なども含めて形式や属性の異なる大量の情報を格納しなければならないし、その種類や量は今後も増え続ける。それだけ世の変化が激しい中で、オンプレミスで自前で基盤を整備するようなアプローチでは追随しきれない。だからこそGAEに照準を当てたのであり、その選択は間違っていなかった」と語る。

操作面では、例えば情報検索においてはGoogleの検索エンジンがベースとなっているので、違和感なく現場業務に浸透していったという。思い付くキーワードをテキストボックスに入力する方法は、多くのオペレータが普段の生活の中で慣れ親しんでおり、求める情報を見つけ出す“ツボ”をすでに体得していることが奏功したようだ。

パフォーマンスについてはどうか。田中氏は「現場のニーズに十分応えられている」と高く評価する。というのも、従来は4分かかっていた1件あたりの予約が、今は3分程度にまで短縮できた実績があるからだ。さらに2分にすることを視野に入れているという。とりもなおさず検索の精度とスピードが上がった効果と見ている。「検索スピードが半分になれば、人件費などのコストも半分になり、TCO削減に大きく貢献する」(田中氏)。さらに安定性についても、カットオーバー以来、ほとんど問題なく稼働しているとのことだ。

クラウドといえばセキュリティの問題を懸念する声もあるが、「基盤としては非常に強固であり、安全面で難があると思ったことはない。ビジネス要求に照らせば、もっとも合理的な選択だったと考えている」と田中氏。

GAEの仕様理解に一苦労
そのノウハウを水平展開へ

もっとも、開発プロジェクトがすべて順風満帆に進んだわけではない。GAEに関する公開情報が思いのほか少なかったことや、前触れなく仕様に変更が加わる可能性があることなどに、たびたび悩まされたという。「スクラッチ開発なら簡単にできそうなことでも、GAEの仕様上の制約があって回避策を逐一考えなければならないといった局面が多々あった。実用に耐えうるかを判断するには、とにかく、自社でしっかり技術検証するしかなかった」(佐藤氏)。

例えば、データベースの検索レスポンスでも、当初は思い通りの速度が出ずに壁に突き当たった。「プロジェクトの途中で少し弱気な発言が目立った時期もあるが、『それを乗り越えてもらわなきゃ困る』と檄を飛ばした」と田中氏。オープンストリームの技術陣は知恵を絞り、キャッシュを使う独自技術をかませることで、検索のパフォーマンスを確保する道筋をつけた。「苦労はあったが、今となってはGAEにかかわる貴重なノウハウを得られた意義は大きい。他の案件でも、自信を持って提案できる素地が整った」と佐藤氏は考えている。

アコーディア・ゴルフにとって今回のシステムは、ITによる業務高度化の入り口に過ぎない。ゴルフ場に関する口コミ情報をマッシュアップで取り込むなどして、データの活用度や鮮度などをさらに高めていくことを構想中だ。「スモールスタートを切って、徐々にシステムを成長させていく。そうしたアプローチを無理なく進めていく上でもクラウド活用は有効な選択肢となる」─。プロジェクトを完遂した田中氏と佐藤氏が共に口にする言葉だけに、ぐっと重みを増して響いてくる。

Google App Engine をベースに開発した「ゴルフ場情報ツール」の画面例
画面 Google App Engine をベースに開発した「ゴルフ場情報ツール」の画面例。コールセンターのオペレータが、迷うことなく必要な情報を参照できるよう随所に工夫が凝らされている
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