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[セミナー「グローバル時代の製造業戦略」レポート]

“持たざるプライベートクラウド”が大競争時代の経営基盤を支える

2013年3月29日(金)

セミナー「グローバル時代の製造業戦略」レポート Part2 前半では、ITの進展がもたらす社会構造の変化と照らしながら製造業を取り巻く経営環境を整理し、これから目指すべき進路を考えることに軸足が置かれた。これを受けた後半では、経営基盤として有力視されるクラウドコンピューティングにテーマを踏み込んで、その動向に詳しい講演者が壇上に立った。

日本の製造業が、その卓越したモノづくりセンスを活かしつつ各国の競合と戦っていくには、ますます加速する世の変化にしなやかに追随し得る経営基盤が不可欠となる。こうした観点において、自社システムのグランドデザインの中にクラウドコンピューティングを組み込むことは、もはや必須事項と言えるだろう。クラウドについて、今、知っておくべき動向にはどのようなものがあるのか。セミナー後半のセッションの内容をレポートする。

シミュレーションで知るクラウド移行の経済価値

金谷敏尊氏 株式会社アイ・ティ・アール
プリンシパル・アナリスト
金谷 敏尊 氏

後半は「クラウド移行によるROIの創出」と題したセッションで始まった。講演者は株式会社アイ・ティ・アールでプリンシパル・アナリストを務める金谷 敏尊氏である。

冒頭、金谷氏は自社で実施した「IT投資動向調査2013」の結果の一部を紹介。2013年度に重視するテーマとして製造業では「業務コストの削減」「ITコストの削減」が上位に挙がり、「情報の活用度の向上」「グローバルビジネスへの対応強化」「既存システムの統合性強化」などがこれに続いていることを示した。

製造業を含み、「海外拠点の設置を準備/検討中」、すなわちこれから積極的にグローバル展開しようと考えている企業では2013年度にIT投資を大幅に増額する傾向にあるという興味深い結果の報告もあった。「IT予算が限られる中、製造業におけるコスト削減、またグローバル進出企業における適性投資への意欲が高まっている」と金谷氏は見る。

自社でIT資産を保有せずサービスとして利用できること、必要となる機能を取捨選択して使えること、コンピューティング能力を柔軟に増減できること…。投資効率の面でもニーズ即応という面でも、これからのITプラットフォームにおけるクラウドへの期待はここ数年で大きく高まってきている。では、企業は具体的にどのように取り組んでいるのだろうか。

ここで金谷氏は「クラウド/アウトソーシングに関する動向調査」(2012年6月)に言及。会計システムを例にシステム基盤の構築方式を尋ねた結果を示した。クラウド(プライベート/パブリック)活用は「現在」のところ24.7%だが、「今後」については51.2%まで伸びる。

その中で「パブリッククラウド」については半数近くが「VPC(バーチャルプライベートクラウド)」としての利用を検討しているという。これは、プライベートクラウド向けのITリソースを提供する形態のパブリックIaaSとも換言できる。クラウドシフトが着実に進むと見られる状況下、「“持たざるプライベートクラウド”への期待が根強い」(金谷氏)ことが伺える。

金谷氏は続いて、クラウドの投資効果について話を詳しく展開した。具体的には、プライベートクラウドやVPCを題材にとり、TCO(総保有コスト)を緻密にシミュレーションした独自資料に基づく。企業システムのTCOと言った場合、ハード/ソフト、開発、運用管理、サポートといった直接コストにばかり目が行き、エンドユーザーにかかわる手間や負荷、ダウンタイムによる機会損失などの間接コストはとかく見落としがちだ。これらも加味して、それぞれを積み上げて算出・シミュレーションしたデータは他になかなか見ないだけに貴重な存在だ。

会場では、年商2000億円、従業員2500人の製造業を例に、オンプレミスのIT環境をクラウド(プライベートクラウドまたはVPC)に移行するシナリオでシミュレーションした結果がスクリーンに投影された。4年をかけて順次移行するパターンと、一斉に移行するパターンとの比較にも踏み込んでいる。ちなみにクラウド環境はIIJ GIOを想定したものだ。

以下にこのシミュレーション結果の主なトピックを列記してみよう。

  • VPCに順次移行した際のTCOは、プライベートクラウド構築の場合の約77%に相当し、十分な効果が得られる
  • 資源調達、移行、運用、機会損失のいずれのコストにおいてもVPCは有利である
  • プライベートクラウドを構築する時、機器の調達(および保守)にかかわるコストが重くのしかかる。VPCではここを低減できる

これ以外にも、アイ・ティ・アールはTCOシミュレーションを通じた多くの知見を保有している。クラウドシフトを検討する際、同社に相談することで具体的で有効な判断材料が得られるはずだ。

顧客起点で考えたクラウドソリューション「VWシリーズ」

喜多剛志氏 株式会社インターネットイニシアティブ
プロダクトマーケティング部 GIOビジネス推進課長
喜多 剛志 氏

本セミナーの最後を締めくくったのは、株式会社インターネットイニシアティブ プロダクトマーケティング部 GIOビジネス推進課長の喜多 剛志氏。“持たざるプライベートクラウド”への期待が高まるの受け、それに対応する同社のソリューションを詳しく紹介した。

クラウド環境というと、とかく「パブリックかプライベートか」といった議論が先行しがちだが、喜多氏は「顧客にとっては、ITリソースが専有か共有か、それをどのようにつなぐのか(インターネット接続かプライベート接続か)、といったことが重要。クラウドリソースの活用も企業が求める本筋の議論をしなければならない」と話す。

確かに、クラウドに対する企業のニーズは様々だ。単純な例を挙げるなら、

  • 共有リソースをインターネット経由で使いたい
  • 共有リソースをWAN/LAN経由で使いたい
  • 専有リソースをインターネット経由で使いたい
  • 専有リソースをWAN/LAN経由で使いたい

といった具合である。

IIJとしては、こうした多様なニーズにすべて対応することがコンセプトにある。とりわけネットワークについては「インターネットありきでは考えていない。顧客のWANを直収することも可能で、それはまるで顧客の1拠点からリソースプールを提供しているような感覚だ」(喜多氏)という。サーバー環境にしてもメニューラインナップになければ個別ファシリティを用意することにも対応。「利用者は運用から手離れできるし、ネットワークも自由に選べる。かつアセットは不要だ。これこそ、今求められているクラウドサービスである」(同)と強調する。

こうした取り組みは、とりもなおさず“持たざるプライベートクラウド”の具現化に向けたものだ。同社がアイティメディアと共同で実施した調査によると、一般的なプライベートクラウドの課題として以下の声が上位となったという。

  • ハードウェアの保守・運用をしなければならない
  • 高スペックなハードウェアが必要になるため初期費用がかかる
  • 会計的に、ハードウェア資産を持たなければならない

だからこそ、「高い自由度を持ちながらプライベート志向のクラウドサービスが必要となる」(喜多氏)とし、同社は着々とサービスを拡充させているとする。代表的なものとして詳細を解説したのが「IIJ GIO VWシリーズ」である。

IaaSの自由度を高めることが中核コンセプトとしてある。通常のIaaSでは“OS付き”で提供されるのが一般的だが、VWシリーズは仮想化基盤「VMware」までのレイヤーを対象にしている。つまりユーザーはOSから上にかなりの自由度が提供される。「VM(仮想サーバ)をいくつ展開してもいいし、そこで稼働させるOSも自由。BYOL(所有ライセンスの持ち込み)も許容している」と喜多氏。VMwareの管理コンソールのUIおよび管理者権限もそのまま提供する。

パブリックのIaaSの場合、様々な制約条件がつくことも多く、オンプレミスで稼働している既存システムをそのままクラウド環境に移行するには幾多の壁に直面することがよくある。これに対しVWリーズは、その自由度ゆえ制約が取り払われ、かつ“プライベート志向”であることが訴求ポイントになると強調。事実、既存案件ではSAP ERP、JD Edwards、SuperStreamといった基幹システムの稼働プラットフォームとしての引き合いがありユーザー企業からパートナー企業まで検証、採用を進めているという。

VWシリーズは、単なるインフラストラクチャだけを用意するものではない。OSをはじめとする各種ソフトウェアを提供するポータル「GIOライブラリ」では、ユーザーが迅速かつ安全にシステム環境を整えるための機能を用意している。一方IIJでは、グローバル展開も進めており、アジアなど海外に拠点を構える企業の支援や、DRを視野に入れたITリソースの分散配置といったことにももちろん対応する。

製造業を筆頭に日本の企業が国際市場で突出した存在感を示し、熾烈な競争をリードしていくには、弾力性とキメ細かさを備えたIT基盤が絶対に欠かせない。それを全面的に支えていくために、IIJはこれからも顧客起点でサービスのラインナップを拡充していく考えだ。

以下より、喜多氏の講演資料
「製造業のアジリティを高めるITサービスの活用
~持たないプライベートクラウドの提供モデル~」

をダウンロードしてご覧いただけます。

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セミナー「グローバル時代の製造業戦略」レポート Part1
ITが社会基盤となる大局観を持ち、サービスと組み合わせた「価値の製造業」を目指す

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