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映像コンテンツをモバイル端末に配信 アプリ開発を二人三脚で乗り切る

2013年4月1日(月)

ジュピターテレコム(J:COM) × オープンストリーム ジュピターテレコム(J:COM)は今、モバイルデバイスの特性を活かしたコンテンツ配信ビジネスを強化している。その先駆けとなるのがiOS、Android端末を対象としたオンデマンドサービスの「Xvie(クロスヴィ)」。アプリを開発する短期集中プロジェクトはどう進んだのか。2人のキーマンが対談で振り返る。

ケーブルテレビサービスを起点に、高速インターネット接続サービスや固定電話事業などにもビジネスを拡大してきたJ:COM。同社が今、特に力を注いでいる領域が“TV Everywhere”〜いつでも、どこにいても、どんなデバイスからも、好きなコンテンツを視聴できる、という環境の整備である。

オンデマンドによるコンテンツ配信の仕組みはすでに世に知られているところだが、ユーザー体験をさらに高度化させるものとして注目されているのがタブレット端末やスマートフォンといった、ここ数年で急速に普及し始めたデバイスである。「自宅の居間で見ていたドラマの続きを、自室や通勤途中でモバイル端末でチェックする…。こうした柔軟な視聴スタイルを提供しなければ、“TV Everywhere”の真の魅力をユーザーに伝えられない」とジュピターテレコム 商品企画本部長 渡辺一正氏は語る。

その思いを具現化するサービスが「Xvie」。テレビ+セットトップボックスの環境におけるオンデマンド配信の基盤はすでに整えていた同社だが、モバイルでの視聴も可能にすることで顧客にとっての視聴機会や環境をさらに向上させ、サービスの総合力に磨きをかけようというものだ。iOSとAndroidに照準を当て、開発プロジェクトがスタートしたのは2012年6月のこと。サービスインの目標は同年11月1日に据えられた。

経験とノウハウに基づいた短期集中プロジェクト

渡辺一正氏 株式会社ジュピターテレコム
商品企画本部長
渡辺 一正 氏
住友商事、米国住友商事を経て、2003年日本ワムネット(株)代表取締役社長、2009年(株)ジュピターテレコム営業本部長補佐、2010年商品戦略本部長、2012年より現職。

J:COMはサービス仕様をまとめる過程において、より専門的な知見やスキルが必要だと感じるに至った。映像コンテンツをスマートデバイスで扱うという新規性と複雑性に富んだこの案件。「サービス仕様を技術仕様に着実に落とし込むには経験とノウハウがものをいう。短期集中でプロジェクトを完遂するために、アプリ開発、特に動画配信に強い会社に協力を仰ぎたいと考えた」と渡辺氏。

世の中のトレンドを受けてスマートデバイスのアプリ開発を担う会社は増えているものの、映像配信の技術にも精通しているとなると条件はぐっと厳しくなる。周囲に相談を持ちかける中で候補に挙がり、同社が白羽の矢を立てたのがオープンストリームだった。

「挑戦しがいのある案件だというのが第一印象。ただしスケジュールがタイトなだけに、かなり“熱い夏”になるのは間違いないと腹をくくりました」と代表取締役社長 佐藤浩二氏は振り返る。

スマートデバイスへのコンテンツ配信について、それほど多くの案件をこなしていたわけではない。ただし、「映像に関してはかなりの経験値を積んできた自負がある。仕様の決め方や変更への柔軟な対応など、映像関連プロジェクト特有の進行を理解していることが強みになる」(佐藤氏)との思いがメンバーを奮い立たせた。

ユーザーと開発陣の両社がゴールを共有して邁進

佐藤浩二氏 株式会社オープンストリーム
代表取締役社長
佐藤 浩二 氏
日本ユニシス、日本ヒューレット・パッカードを経て、2004年にオープンストリームに入社。2007年に社長に就任し、2008年に親会社の豆蔵ホールディングス取締役就任。現在、アクシスソフトの社長など6社のグループ会社役員を兼務。

それにしても、時間的余裕はない。開発期間の短さを克服するには、過去のプロジェクトよりもさらにマネジメントを徹底する必要があった。「まず、J:COMのチームと当社の開発チームでゴールを共有することを徹底した。このことが後々の開発にも良い影響を与えたと思う。実装すべき機能についても厳密に優先順位を付け、必要なものを絞ることが欠かせなかった。この作業も一緒にやったことが奏功したのではないか」(佐藤氏)。

ユーザーと開発サイドが目標を共有するというプロセスは、特に期間が限られているプロジェクトでは欠かせない作業だと渡辺氏も同意する。「最初の段階で共通のゴールを決めたことで、その後の開発に安心感が生まれた。当社の要望を聞き入れた上で『実現のためのアプローチ』を明確にしてくれたので、これは任せられると心強かった」(渡辺氏)と話す。

もっとも、開発はすべて順風満帆だったわけではない。特に、最後まで気を緩めることができなかったのが品質の確保だ。映像配信をメイン事業にしているだけにアプリの完成度を落とすことは絶対にできない。

そこでオープンストリームでは、特にAndroidの技術的な問題を掘り起こす技術チームと、必要な機能を押さえていく仕様チームに分かれ、それぞれの成果を8月から9月にかけてマージし、10月をまるまるテスト期間に充てた。J:COM側もPC向けサイトの人員を投入し両社とも総力戦で取り組んだ。

先にも触れた通り、テレビで見ていたコンテンツを途中からスマホで見るといったケースを想定しているので、テスト工程も当然のことながら複雑になる。モバイルアプリ単体の動きに問題はなくても、デバイス間連携がうまくいかない“落とし穴”が考え得るし、その組み合わせも多岐にわたる。J:COMのメンバーもテストに参加するなど、入念なチェックを繰り返す日々。最後の最後までブラッシュアップを続け、晴れて11月1日のサービスインを迎えることができた。

機能強化は今後も続く
二人三脚でユーザー価値追求

「ゴールを共有し、率直に意見交換しながらプロジェクトを進めるオープンストリームさんの開発スタイルには非常に満足している」と振り返る渡辺氏だが、現状に甘えることなく先駆的な挑戦をこれからも続けていくと言う。

ケーブルテレビのコンテンツは地上波のそれに比べて格段に多い。「量はあっても何を見たらいいのか」というユーザーの声もよく聞かれれることだ。おすすめコンテンツをきめ細かく提供したり、過去の視聴履歴からリコメンドしたりといったことを検討していかなければならない。

モバイルならではの特徴を生かしたメニューや機能も面白いのでは?と佐藤氏は語る。「たとえばテレビにはないGPS機能を活用したコンテンツ配信なども考えられる。またモバイルであれば、家族単位ではなく個人単位にIDを付与し、そのIDごとに配信番組を変えるといった機能なども求められるようになってくるだろう」(佐藤氏)。

一部では“テレビ離れ”が叫ばれる中で、事業者はこれまでとは異なる視点でコンテンツ事業を展開していく必要がある。XvieはJ:COMにとって、モバイル時代における試金石ともいえる。その第1ステップは無事にクリアした。そしてさらなる改善を目指し、この夏にはアプリの強化を予定している。もちろん開発はオープンストリーム。両社にとって今年もまた“熱い夏”が到来しそうだ。

開発したアプリの画面例
開発したアプリの画面例。J:COMのビデオオンデマンドがスマートフォン・タブレットで楽しめる。自宅のテレビで見ていたドラマの続きを外出先で楽しむといったことが可能だ

Photo:高橋 久雄

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