[技術解説]

これだけは知っておきたい、7つのストレージ技術

詳説 ストレージの最新技術

2013年5月3日(金)IT Leaders編集部

仮想化は、ごく最近の技術トレンドととらえがちだが、ストレージにはかなり早期から適用されてきた。物理ディスクを論理的に区分けしたり、複数のディスクを束ねて論理ボリューム(1つの管理単位)を形成するといった手法はその一例だ。冗長性確保の文脈で語られることの多いRAIDにしても、技術的には仮想化そのものである。

 物理ディスクをまとめるところから始まったストレージ仮想化は、時代とともに上位レイヤーへと適用が進んだ。以前、サーバーとストレージは1:1で紐付いていた。複数のサーバーに付属するストレージの未使用領域を合算するとかなりの容量になってムダが多い。バックアップなど運用の手間も負担になる。そこでサーバーからストレージを切り離し、複数のシステムで共用する取り組みが進んだ。SANの登場には、こうした背景がある。

仮想化の適用は定番、実用期に入るSSDも影響大

ITが事業活動の隅々に浸透するにつれ、企業がハンドリングするデータの種類はログデータや音声、動画など多様になり、量も膨れ上がった。何しろ現在、1日に生み出されるデータは2.5エクサバイト(10の18乗、100京バイト)。西暦2000年までに記録されたデータの総量が12エクサバイトといわれるので(米カリフォルニア大の調査)、すさまじさが分かる。

その勢いは今後さらに加速する。だからストレージにはさらなる弾力性や拡張性が求められる。運用はできるだけ楽をしたいという条件付きだ。こういった背景があってHDDを基本とするストレージ技術は今も日々、進化している(仮想化を中心とした技術動向の詳細はhttp://www.snia.org/sites/default/files/sniavirt.pdfに詳しい、図3-1)。

図3-1 ストレージは様々な領域と実装方法で仮想化が進んできた。地色は最近の注目分野
図3-1 ストレージは様々な領域と実装方法で仮想化が進んできた。地色は最近の注目分野
出典:SNIA Techinical Tutorial “Strage Virtualization”を元に編集部が作成

一方、よりすさまじい勢いで進化しているのが、半導体技術をベースにしたSSDである。パート1でガートナーの鈴木氏も指摘しているようにエンタープライズ用途で使えるSSDが実用期に差し掛かってきたことは、ITインフラのデザインに大きく影響を与えそうだ。システムの性能を語る時に、必ずといっていいほど、ハードディスクのI/Oスピードの限界が取り沙汰されてきたのは周知の通りだからである。

何よりも、HDDでは様々なチューニングが欠かせなかった諸問題を、SSDでは一掃できる可能性がある。一部にSSDを採用し自動階層化(これも一種の仮想化技術である)で運用するだけでも、かなりの実効性があるはずだ。

データ量が激増する時代に注目技術への理解を深める

「ビッグデータに対応する」ことの意味は、必ずしも「自社が保有する大量のデータのすべてを対象にして分析・活用すること」を指し示すものではない。むしろ「いつか役立つかもしれないデータも含めて、どんどん蓄えておける環境を用意する」ということに近いものと言えるだろう。「将来、あの時のこんなデータが必要だと分かったとしても、データを取得していなければ何もできない。今はともかく蓄積することが優先であり、技術的にもそれが可能だ」(米大手ネット事業者、eBay)。スケールアウトNASやオブジェクトストレージなどは、そうした観点で存在感が増してくる。

ストレージの巨大な単一リソースプールを用意し、用途やデータタイプ、アクセス方法などを問わず、アプリケーションが必要とする容量を随時提供する─。これが1つの理想だが、今はまだ実現困難。例えば、アクセス速度を重視する基幹業務処理、大量データの分析処理、多種多様な非定型データのアーカイブなどの使途別にストレージを構成するのが、現実解だ。

ではそれぞれの領域でどんな技術が“エマージング”なのか。本パートでは、昨今、動きが活発な技術領域にスポットを当ててトピックを追っていく。

図3-2 “動的最適化”がストレージの理想像
図3-2 “動的最適化”がストレージの理想像

フルフラッシュストレージ:半導体メモリーの超高速性を活かす、大手ベンダーも新興市場に名乗り

技術解説

物理的な記憶媒体として、ハードディスクではなくフラッシュメモリー(SSD)を使う動きが加速している。ケタ違いに高速で消費電力も少ないという特性を活かすためだ。ネックは容量当たりの単価がまだ高いこと。コンシューマ分野の製品でも10倍以上の開きがあり、信頼性を求められるエンタープライズ向けではさらに差が開く。現実解として、右ページで解説するの「自動階層化」の上位レイヤーに位置付けたり、DBMSとストレージの間に配置してキャッシュとして使う試みがされてきた。

しかし、SSDの価格は下落傾向にあり、フルフラッシュで構成するストレージも次第に現実味を帯びてきている。

ユーザーのメリット

即応性を最優先するDB処理や、ECサイトの検索処理…。レスポンスを追求するために、従来はDB周りをチューニングしたり、並列分散処理をしたりするのが通例だった。それでも、とかくボトルネックになるのがヘッドのシーク/サーチ時間に起因するハードディスクのI/Oスピードだった。

フラッシュストレージを適用すれば、大幅な改善が見込める。すべてをフルフラッシュ装置でまかなう時代はまだ先のことだが、業務要件によっては実用期に差し掛かっている。

製品動向

ネットアップのフラッシュストレージ「EF540シリーズ」 ネットアップのフラッシュストレージ「EF540シリーズ」

製品化では米国のベンチャーが先行した。Pure StorageやViolin Memory、XtremIO(EMCが買収)といった企業だ。だが、ここにきて大手も動きだし、にわかに活気づいている。

ネットアップが2013年2月22日に発表したのが「EF540」。30万IOPS以上というアクセス速度とミリ秒以下のレイテンシを両立する。2Uの筐体に800GBの2.5インチSSDを24個搭載。最大容量は19.2TBだ。最小構成での価格は2054万円。

EMCはフルフラッシュの製品系列として「ProjectX」と呼ぶ開発案件を進めてきた。買収したXtremIOの技術がベースとなる。製品名も「XtremIOとし、年内には正式に市場投入する見込みである。

他の大手も追随するだろう。フラッシュの高速性を活かしながら容量単価が高い欠点を補うため、データの重複排除/圧縮などの技術と組み合わせ、より多くのデータを扱えるようにする工夫が焦点の1つとなりそうだ。

「サーバーサイドフラッシュも活況に」

ストレージというと、サーバーと別建てで設置する装置(つまりはディスクアレイ)を想起しがちだ。だが、フルフラッシュの文脈で語られるアプローチはこれだけではない。PCIeカードの形でサーバーに内蔵するタイプの製品があり、ローカルストレージ、あるいは外部ストレージのキャッシュとして使うことでデータへの高速アクセスを実現している。

この分野の先駆的存在がベンチャーのFusion-io。そのほかEMCがXtremSFとして展開、IBMは買収したTexas Memory Systemsのラインナップを持つ。サーバー内のフラッシュ活用もまたホットな市場となりそうだ。

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ストレージ仮想化 / SSD / RAID / フラッシュストレージ / ILM / オブジェクトストレージ / シンプロビジョニング

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