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「国をつくるという仕事」研究開発戦略センター、岩野和生氏が選ぶ3冊

2013年5月15日(水)

小学生のころは伝記が好きでね。エジソンやパスツールは何度読んだことか。こんな人になりたいなぁと子供心ながら憧れたものです。その後は本から遠ざかった時期もあったんだけど、大学に進学したら周りは読書家ばかり。学生運動が盛んな時期で、世の中を変えるんだと燃える連中は総じて、様々な本に触れて知識を高めようとしていました。ビハインドを感じて、私もむさぼるように本を読むようになり、その習慣が今でも身に染み渡っています。

国をつくるという仕事国をつくるという仕事
西水 美恵子 著
ISBN: 978-4862760548
英治出版
1890円

お勧めの本がたくさんあって迷うところですが、まずは「国をつくるという仕事」(西水美恵子)を挙げましょう。貧困などにあえぐ途上国に赴き、自立的発展に心身を捧げた筆者の言動や思いには心打つものがあります。真に豊かな暮らしとは何かをあらためて考えるよいきっかけになります。その点では「ピダハン」(D.エヴェレット)も一読の価値あり。アマゾン奥地に暮らす少数民族の言語文化や価値観のユニークさを綴ったノンフィクションです。人の営みの豊かさって、凝り固まった“常識”で判断してしまいがちですが、それがすべてではないことに気付かされます。

これらを先に挙げたのには理由があって…。ITって、個人の生産性を上げるとかビジネスに競争力を持たせるとかの文脈でとらえる方が少なくないと思いますが、今やもっと大きな使命を担っているものだと思うのです。平たく言えば、社会基盤そのもの。水や道路と同じで生活に密着し、合理性をもって“豊かさ”に人を導くポテンシャルがある。2015年には脳をシミュレーションできるようになるという研究報告もあり、コンピュータが本格的に“知”の領域にも入ってきます。

そうして考えると、IT業界に関わる我々は、社会システムのデザインにもっともっとコミットするべきだし、その責務があると思うのです。大袈裟に言えば、ITのプロフェッショナルとして未来にビジョンを持たなければならない。その大局観はきっと日頃の仕事にも活きるはずです。

基本となるのは、ITの社会的役割や影響について理解を深めることでしょうか。その観点ではフリーマン・ダイソン氏の著作「科学の未来」「ダイソン博士の太陽・ゲノム・インターネット」が示唆に富みます。「自動車の社会的費用」(宇沢弘文)と「私的企業と社会的費用」(K.W.カップ)は共に古い本ですが、中に書かれている考察は今でも光を放っている。ソーシャルやビッグデータがもたらす価値を考えるには「Reinventing Discovery(オープンサイエンス革命)」(M.Nielsen)、「The Fourth Paradigm」(Microsoft Reser-ch、オンライン公開)がお勧めです。

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