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世界と戦う“ホンダ流グローバルIT構築”の凄み─グローバル最適生産を支えるITのあり方とは?

CIO賢人倶楽部のグローバルシステムセミナーから【前編】

2014年3月5日(水)田口 潤(IT Leaders編集部)

2014年2月27日、「世界で勝つグローバルシステムの要諦」(CIO賢人倶楽部/レイヤーズ・コンサルティング共催)というセミナーが開催された。今回は、本田技研工業・IT本部の有吉和幸氏が基調講演で語った内容を紹介する。

2014年初めの一大イベント、「ソチ・オリンピック」。日本人選手は限界を超える練習を積み重ね、勝負に挑んだ。結果として冬の海外オリンピックでは過去最多のメダルを獲得したが、世界の壁はまだまだ高いことも、改めて明らかにした。

これを企業、特に企業ITに置き換えるとどうか。世界で戦うためにITをどう構築/運営するか、CIOやIT部門の役割はどうあるべきかは、多くの企業にとって真剣に検討するべき重要テーマだろう。海外の先進企業と同じやり方が合うとは限らないし、たぶんすべての企業に通用する正解があるわけでもない。それでも他社が何をどのように実践しているのかを知りシェアすることは、間違いなく有用である──。

そんな考えの下、任意団体のCIO賢人倶楽部と、その事務局を務めるレイヤーズ・コンサルティングは、「世界で勝つグローバルシステムの要諦」と題したセミナーを開催した(IT Leadersは協賛)。基調講演には、本田技研工業・IT本部の有吉和幸氏(本部長代行)が登壇。急ピッチで変わる自動車業界の事業環境に対応するべく、あたかも多次元連立方程式を解くような複雑な難題にチャレンジする、“ホンダ流IT戦略”を明らかにした。

続いてレイヤーズでIT部隊を率いる有川理氏(統括MD)はズバリ、「グローバルシステム構築の必須ポイント」を解説。最後に、CIOの役割や開発運用のソーシングの考え方、IT組織と人材育成に関して、パネル・ディスカッションを展開した(写真1)。参加したのは大手企業のCIO、情報システム部門長などITリーダー約120人。昨年7月に実施したセミナーの第2回という位置付けである。

写真1 セミナー当日のパネル・ディスカッションの様子

グローバルシステムに焦点を当てただけあって、どの話も盛りだくさんの内容だった。以下、長文になるので、2回に分けてセミナーの模様を紹介する。今回は「ホンダ流、真のグローバルシステムの実現」と題した有吉氏の講演にスポットを当てる。

ホンダ、地産地消からグローバル最適生産へ転換

「今日、お話しするのは先進事例ではなく、現在進行形の話です。課題共有というスタンスでお聞き下さい」─。こう前置きした有吉氏は、(1)ホンダの事業概要、(2)ITの位置付けが変わったこと、(3)グローバルと日本のITのあり方に関する考察、(4)ホンダにおけるITの最新事情、を語った。

ホンダの事業は、二輪車、四輪車、汎用品(エンジンなど)に大別でき、販売面の海外比率はそれぞれ99%、80%超、95%と非常に高い。生産も同様で1550万台の二輪車は98.8%、四輪車が75%が海外生産だという。「以前は、二輪車は東南アジアや南米などコストが安いところで生産し、四輪車は米国や日本で生産して輸出というパターンだった。現在では地域特性に合わせる必要性から、四輪車も海外比率が高まっています(図1)」。

図1 ホンダにおける自動車の生産推移。海外は75%

それ以上に大きな変化が、グローバル生産体制の変化だ。「これまでの海外生産は、各地に“リトルホンダ”を作って地産地消するやり方でした。地域特性や為替変動を考えるとこれが最適だったからですが、これではもう勝てません。同じ海外生産でも、世界で最も安く作れるのはどこか、部品はどこで調達するのがベストかなど、現在ではグローバル・オペレーションに変わりつつあります」。消費国またはその近隣で生産するというシンプルなモデルから、グローバル市場をにらんだ最適生産へ移行するというのだ。

こうした中でIT組織やITの位置付けを、変えつつあるという。これまではITの統括機能はなく、各地域の自立を基本とした体制だった。具体的には、地域ごとの横軸を基本に事業や機能が縦軸に配されたマトリクス組織である(図2)。これに対し現在では全体最適を意識した体制に移行する必要がある。そこで、まず「グローバルISマネジメント・ボード」と呼ぶ会議を設置した。「3つのレイヤーに分けて議論を進めています。全域における情報システム戦略の立案や地域特性とあまり関係ないIT基盤を検討するグローバル、北米や欧州、アジアといった大きなリージョン、それに各国のローカルという区分けです。この中では日本もローカルの位置付けですし、グローバルが決めたことをリージョンやローカルが実装するかどうかは、その地域の自由です。つまり個別でやっていたことをグローバルに変えようとしているが、まだ議論を進めている段階で、こうだという結論はでていません」。

図2 ホンダのIT部門におけるグローバル体制

 

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