[市場動向]

ヴイエムウェア、パートナー4社と提携しネットワーク仮想化事業を国内本格展開へ

2014年4月30日(水)五味 明子(ITジャーナリスト)

ヴイエムウェアは2014年4月24日、国内パートナー企業4社との提携を含むネットワーク仮想化事業の拡大に向けた施策を発表した。米VMwareが掲げる「Software-Defined Datacenter(SDDC)」促進の一環で、同社のネットワーク仮想化プラットフォーム「VMware NSX」を中心とした、“ソフトウェアが定義するシンプルなITインフラ”で顧客企業のSDDC移行を支援する。

  「国内市場におけるネットワーク仮想化への関心は非常に高まってきている」─。会見に臨んだ同社 代表取締役社長の三木泰雄氏はこう切り出した。「7年ほど前、サーバー仮想化の市場を当社がパートナーと一緒に作っていったように、ネットワーク仮想化についても思いを同じくするパートナーと協力しながら拡大を図っていく」(同氏)。

ヴイエムウェア代表取締役社長の三木泰雄氏

 ヴイエムウェアが今回掲げた、VMware NSXによるネットワーク仮想化ビジネス拡大の施策は以下の3つである。

  • プロフェッショナルサービスの拡充 … ネットワーク仮想化の検証、導入、運用計画を一元的に支援、SDDC実現までを含むコンサルティングサービスの拡大
  • 経験豊富なパートナーとの支援体制 … SDDCの思想に賛同し、共に移行を推進するパートナー企業と「Elite Initiative」を設立
  • ネットワーク仮想化認定資格制度の設立 … VMware NSXを中核とした認定資格制度の提供開始
会見にはElite Initiativeに参加したパートナー4社も駆けつけエンドースを表明した。左から三木社長、CTC 執行役員 藤岡良樹氏、ネットワンシステムズ 執行役員 篠浦文彦氏、日立製作所 プラットフォーム部門COO 和田宏行氏、富士通 プラットフォームソフトウェア事業本部長 藤原隆氏、カサドCTO
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 今回の発表に伴い、伊藤忠テクノソリューションズ、ネットワンシステムズ、日立製作所、富士通の4社がElite Initiativeのパートナーとして参加。VMwareと協力しつつVMware NSXをはじめとするネットワーク仮想化技術の顧客企業への導入を図り、SDDC実現を推進していくことを表明している。

ネットワーク仮想化とSDDCの可能性

 発表会では、米VMwareでネットワーク担当最高技術責任者(CTO)を務めるマーティン・カサド(Martin Casado)氏が登壇し、ネットワーク仮想化市場の現状と可能性について語った。

 そもそもVMwareが掲げるSDDCとは、「(ネットワーク機器を含む)ハードウェアは限りなく汎用的でシンプルな構成にし、データセンター運用に必要なあらゆる機能をソフトウェアで定義する」という考え方に基づいている。クラウド時代におけるデータセンターのスケーラビリティやレジリエンス(弾力性)強化の重要性から発展した概念とも言えるだろう。実際、Amazon Web Services(AWS)やGoogle、Facebookといった巨大インターネット企業は自社のデータセンターで使用するハードウェアを極力シンプルな構成にし、“Software-Defined”なアプローチに舵を切っている。

 先駆的なネット企業だけでなく、「ネットワーク仮想化の流れは金融や流通、通信といった一般的な業種にも広がっている」とカサド氏。これらの企業がなぜサーバーやストレージだけでなくネットワークの仮想化を急ぐのか。その理由として同氏は「スピード、経済性、セキュリティ」の合理的並立を追求していることを挙げる。

 とりわけ重要なポイントとなるのがセキュリティ。「現状、セキュリティ投資の伸びよりも、セキュリティ侵害の伸びが上回っており、それはネットワークの信頼性が大きく揺らいでいることに起因している。抜本的な解決策としてネットワークの仮想化を選ぶ企業が増えてくるはずだ」とカサド氏は読む。

 ルーターやスイッチといったネットワーク機器単体で個別にセキュリティを向上させるのは限界が近づいている。ハイパーバイザ(仮想スイッチ)にセキュリティプラットフォームを実装するネットワーク仮想化のアプローチの方が、安全で信頼性の高い環境を構築できるというのが氏の主張だ。

現状のITインフラにはコンテキストとアイソレーションのギャップを埋める技術は存在しないため、セキュリティが危うくなりやすい。ネットワーク仮想化技術はこのギャップを埋めることを目指す
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 「思い通りのセキュリティポリシーを順守するには、要件としての“コンテキスト”を失うことなく、ハードやソフトの各レイヤーが分離した環境(アイソレーション)を両立させることが重要。だが、現状ではコンテキストとアイソレーションを横断するアーキテクチャは存在しない。だからこそネットワーク仮想化を図り、ハイパーバイザにその役割を担わせ、セキュリティコントロールをハードから分離させるのが現実的だ」(同氏)。

 一方でネットワーク仮想化は、SDDCを実現する4つの仮想化プロセス(サーバー、ストレージ、ネットワーク、自動化)の中でも最も実現が難しい分野と言われている。技術的な理由に加え、スイッチやルーターといったネットワーク機器は、x86ベースがほとんどのサーバーとは違ってオープン化が進んでいないという背景がある。ここ1~2年で、よく耳にするようになった“Software-Defined Network”にしても、標準化については業界の足並みが今ひとつ揃っていない。

 こうした背景下、VMwareが昨年発表したVMware NSXは、ハードウェアに依存しないネットワーク仮想化プラットフォームとして業界内外から注目を集める。すでにスターバックスやBestBuy、Nexon、チャイナテレコムといったグローバル企業での導入実績があり、国内でもニフティやNTTが採用を発表したことで大きな話題となった。ヴイエムウェアとしては今回の発表をきっかけに、通信業界だけでなく、金融や製造、流通といった大企業へのネットワーク仮想化を推進していきたい考えだ。

 三木氏は「ソフトウェアの定義によってデータセンター自体を構成・運用していくSDDCは、従来ながらのネットワークの考え方が馴染みにくいアーキテクチャ。一方で、ネットワークを含むITインフラをシンプルに構築/運用したいというニーズはここ数年、グローバルで大きく高まっている。多くの日本企業もネットワーク仮想化に関心を寄せているが、先駆的な取り組みには慎重な姿勢となりがち。障壁を1つひとつ取り除いて、導入までの道のりを短くしていくのが当社の大きな使命だ」と話す。

 カサド氏は日本の顧客について「技術に対する関心は非常に強く、世界の中でも飛び抜けて成熟/洗練されたユーザーだ」と評価し、「ネットワーク仮想化も必ず受け入れられると信じている」と続ける。サーバー仮想化の領域で市場を築き多くの実績を上げてきたヴイエムウェアだが、はたしてネットワークにおいても思いが伝わりユーザーを動かせるのか。今後の動向に引き続き注目していきたい。

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