[デジタル時代のマーケティングテクノロジー]

ビジネスの成長の鍵を握る顧客体験の最適化:第3回

2014年5月23日(金)アドビシステムズ マーケティング本部

マーケティング活動を取り巻く環境はここ数年目まぐるしい勢いで変化しています。デジタル時代に効果的なマーケティング施策を立案・実行するための基礎となるマーケティングテクノロジーを解説する本連載。前回は、マルチチャネルについて説明しました。今回は、デジタルマーケティングで最も需要視されている顧客体験について説明します。

 第1回でお話したように、コミュニケーションのデジタル化に伴い、企業は消費者の様々な行動をデータとして蓄積し、マーケティングのアクションに活用できるようになりました。

 マーケティングに活用ができるデータは様々です。その一例が「自社サイトへの訪問」に関わるデータです。訪問者が「どこから来たのか」「検索にどのようなキーワードを使ったのか」「どの広告をクリックしてきたのか」などです。他にも、「購買履歴」といった自社のCRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理)データ、第3者のデータプロバイダーが持つ訪問者の「趣味」「趣向」「他社サイトでの購買履歴」といったデータもあります。

 今日の企業は、これら多種多様で、かつ膨大なデータから、最適な「体験(experience)」を設計し届けることを、顧客から期待されているのが現状です。当社が2013年に実施した調査『Adobe 2013デジタルマーケティング最適化に関する調査結果』によれば、「何らかの最適化されたコミュニケーションを行うと顧客は好意的な反応を示す」と回答した企業が57%に上ります。顧客の行動や趣味、趣向を無視したコミュニケーションは最早、顧客に嫌われることを意味しています。

顧客体験の最適化が企業にもたらすメリット

 デジタル化よるコミュニケーションの変化以外に、なぜ今、顧客体験(CX:Customer Experience)の最適化が注目をされているでしょうか。いくつかのデータを基に紐解いていきましょう。

 最初に、顧客体験の最適化を図ることで企業が得られる成果は何でしょうか。米国の調査機関Forrester Researchと当社が過去に実施した調査『The ROI Of Personas』では、Webサイトで、ペルソナを活用したコミュニケーションを実施することで、Webサイト訪問者の注文完了率が50%、平均購入金額が25%増加すると試算しています。

 実際、当社の顧客企業である某グローバルPCメーカーでは、顧客体験の最適化により、顧客の平均購入金額が14%増加するという結果を得ています。

 次に、顧客体験の最適化に対し、企業がかける期待について見てみましょう。米国の調査機関Econsultancyと当社の共同調査『Quarterly Digital Intelligence Briefing 2014 Digital Trends』では、2014年に自社が取り組むべきだと考えているデジタルマーケティングの領域に「顧客体験の最適化」が第3位に上がっています。顧客体験の最適化は、企業にとって成長をもたらす取り組みであり、多くの企業が今後、拡張もしくは新しく取り組む領域だと言えます。

企業が顧客から取得するデータの流れ

 では、企業は、どのようにして最適化のための顧客の情報を取得していけばよいのでしょうか。ここで第1回同様に、ある消費者がECサイトで買い物をする流れを例に、ECサイト運営者の立場から、取得できる情報を見ていきます。

 ある消費者が、街角でスマートフォンを使ってWebサイトを閲覧しています。この時点では、この消費者について詳しい情報は全く分かりません。

 しばらくすると、その消費者は何かを思い出し、検索サイトでECサイトを検索しトップページを訪れます。ここで、消費者とECサイトが接触したことで、消費者に関して、以下のような、いくつかのデータが蓄積されます。

■Webサイト訪問時に取得できる情報:位置情報、初回訪問者か再来訪か、会員登録の有無、検索キーワード、OS情報、ブラウザの種類

 この時点でもまだ、この消費者の詳細までは分かりません。次にこの消費者は、ECサイトの男性向け鞄のセクションを訪問し、旅行用のキャスター付きスーツケースと、バックパッカー用の大型リュックサックをそれぞれ何点か閲覧します。ここで、この消費者について、次のような新たな情報が得られます。

■Webサイトの行動から取得できる情報:性別(行動情報を基に判断)、興味のある製品カテゴリー、興味のある製品、興味のあるブランド

 その後、この消費者は製品を購入するために、ECサイトで、あるアウトドアメーカーの大型リュックサックの製品ページで「購入」ボタンをクリックし、購入に向けて、会員登録などいくつかの情報を入力します。ここまで進むと、この消費者については、さらなる情報が得られ、ECサイト側では、より鮮明な顧客像を確認できます。

■登録後に取得できる情報:名前、年齢、性別、メールアドレス、過去の製品購入状況(顧客データベースの情報)、DM送付歴、問い合せ内容など(CRM情報)

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