[市場動向]

今後、日本の情報サービス業界はどう生き残るべきか?─情報サービス業界の生き残り策

JISA会報 2014 Summer ピックアップ(3)

2014年9月17日(水)情報サービス産業協会(JISA)

情報サービス産業協会(JISA)は2014年5月26日、「アメリカのTOPエンジニアとこれからの『IT』」を語り合おう」というイベントを開催。当日の討論の模様を会報誌「jisa quarterly 2014 Summer」(No.110)に収録している。ITリーダーにとっても示唆に富む内容が含まれているので、同協会の許可を得て転載する。

はじめに

 コンピューティング・コストが極限まで安くなると何が起きるか? あらゆるモノがインテリジェントになるとどうか? そこまで行かないにしても、クラウドの進展は企業に何をもたらすのか? そして、アプリケーション(ソフトウェア)開発のスタイルはどうなっていくのか?

──こうしたことを探るため、米国のIT/ソフトウェアの先端動向に詳しい成本正史氏(米マイクロソフト パターンズアンドプラクティス シニアプログラムマネージャー)を招いた討論会「アメリカのTOPエンジニアとこれからの『IT』を語り合おう」を、情報サービス産業協会(JISA)が実施した。聞き手はJISA副会長の横塚裕志氏(元・東京海上日動システム社長)、コメンテータは細川努氏(アーキテクタス代表)である。

 ある種の極論が含まれるが、それでも成本氏の話は示唆に富む。「今までもソフトウェアは重要だったのですが、これからはソフトウェアが企業の優劣を決定づけるようになります。IT を活用できている会社とできていない会社では、当然できている会社が勝つわけです──<中略>──ITが利益を生むので、コストダウンするのではなくて、ITに倍払ってもいいから、例えばエネルギー効率を2倍改善してくれということになってくるのです」といった下りがその1つだ。

 そこでJISA会報(2014 Summer)に掲載された討論会の記事を、同協会の許可を得てそのまま転載する。なお、この記事の想定読者は情報サービス企業の経営層であることに注意頂きたい。ユーザー企業のCIOなどITリーダーの方々には多少違和感のある記述もあるが、そこは読み飛ばして頂ければ幸いである。

 なお、記事は3回に分けて掲載し、本稿はその「第3回」となる(本誌)。

第1回:クラウドやIoTは何を引き起こすのか? 米国TOPエンジニアが語る「これからのIT」

第2回:今後、ソフトウェアアーキテクチャと開発スタイルはどう変化するか?


情報産業発展の順序

成本 日本の情報サービス業界がどうすべきかというところを、お話ししたいと思います。簡単に言うと、放っておいても発展すると言えます。理由は、ソフトウェアが世の中を支配するからです。ソフトウェアが支配するということは、ソフトウェアの重要性は自然に上がるので、我々ソフトウェア技術者、業界自体もそれにつれて発展します。

 もっと細かく言うと、こういう順番で起きます。まずソフトウェアへの依存度が飛躍的に高まります。ビジネスがオンラインに移行し、またITを駆使することで各業界で何兆円という節減効果が出るからです。

 そして依存度が高まった結果、システム性能がビジネスの利益に直結します。企業としてはいかに多くの優秀な開発者を抱えるかということがプライオリティになってくるわけです。その数と質によって会社の優劣が決まります。従って、産業界全体でソフトウェアの人材に対する需要が高まるわけです。Twitter社で一人でやっているような人は、たとえば1億円貰っていても、僕はまったく驚きません。

 それは極端かもしれませんが、年収1000万円、2000万円という人は当然出てくるでしょう。我々自体を商品として考えれば、とにかく需要と供給のバランスで、需要が高まっても供給はそんなに増えないので、待遇は改善されます。

 これはすでに起き始めています。グリーとか、ディー・エヌ・エーとか、新卒で確か年収1000万というケースもありますよね?大量に優秀な開発者を抱えて、どんどん早くゲームをつくることで儲かるというビジネスモデルなので、彼らにとってはソフトウェア開発者こそが何よりも重要なリソースです。

 だから新人に年収1000万も出せるわけです。他の業界にも同じことが起こるでしょう。待遇がいいところに優秀な人が集まりますから、優秀な人がどんどん集まって、ソフトウェア業界全体が活性化し、その結果さらに優秀な人が集まるというポジティブなスパイラルが起こるでしょう。

 僕はコンシューマー向けのほうがよりインパクトが大きいと思ったので、そこにちょっと時間を使ってしまいましたが、医療、教育、レストラン、コンサルテーションなどがすべてオンラインに移行したらどれだけのインパクトがあるか。

 そこには当然ソフトウェア技術者が必要になるわけですから、併せて考えると今後我々ソフトウェア技術者には非常に明るい未来が待っています。これが今日、皆さんに一番伝えたかったことです。以上の話は自然に起きることなのですが、その動きをより加速させましょう。米国では本日お話しした認識がすでに広まりつつありますが、日本でも同じ認識を早く徹底させたほうがいいですね。

 それは我々が給料を上げたいということより、そうしないとビジネスそのものがうまくいかなくなってしまって、競争力を失うからです。そうならないために今から備えをしておいてくださいということです。

業種単位での長期的な戦略を策定する

 そして製造、流通などの業種単位での長期的な戦略を策定することも大事です。実はつい先月、オバマ大統領が製造業向けに提言を出しています。4つの中長期的戦略を掲げていて、当然ビッグデータも含まれています。そういうものが大統領名で出てくるのがアメリカの強みであって、日本もそういうことを積極的に実施するべきです。

 さらにはパイロットで先行モデルケースをつくるのもいいと思います。例えば、メーカーと組んで、本日お話ししたようなことをモデルケースにするのです。ITはここで使って、こういうデータ分析をした結果、何%の効率改善ができ、ビジネスでこれだけの利潤を生んだという事例をいくつか作るといいでしょう。

横塚 日本の場合、ビジネス側の人が、専門家に任せておけばいいやということで、そういうリクエストがなかなかこっちに来ない。またITベンダー側だけで、オンラインビジネスにしましょうと提案したとしても、あまりビジネス側が反応してくれないので、そっちへ行きそうな気配が現状はないのです。

成本 日本は大体半年、1年遅れですから、どちらかというと、アメリカの先行事例を使うといいかもしれません。

横塚 アメリカで芽生えつつあるということですか。

成本 はい。

横塚 ビジネス側がどういうことをきっかけにそう思い始めるのかということを教えてもらえれば、日本でもそういうムーブメントを起こしたいなと思うのですが。

成本 複数のことの組み合わせですが、たとえば「Internet of Things」というのはもう2~3年いわれていて、そこにビッグデータという分析用のテクノロジも出てきて、それを活用した事例も既に出てきているのを見て、これをやっておかないとまずいのではないかというところぐらいまでは、共通認識としてあると思うんですよ。

横塚 日本でビッグデータのシンポジウムみたいなものをやっていて、ツールや取り組みの説明はしているけれども、これを使って、これだけ儲けたという話はあまりないんです。

成本 まったくないわけではないと思います。たとえばマーケティング分野で、いかにデジタル化されて効率を上げたかとか、そういうことはあると思います。

横塚 そういう具体例をあまり見ないので、ビッグデータはCRMと同じように言うだけ言って終わってしまうのかなみたいなところがあります。

成本 いまビッグデータと言っているものは技術寄りの話ばかりなので、浮き沈みがあるのですが、ビジネスの観点から見て、どれぐらいインパクトがあるかというのは変わりようがないと思います。

横塚 そこが知りたいのですが、アメリカではオープンな事例としてあるのですか。

成本 事例はけっこう出てきています。例えばレアメタルなどの鉱山を発掘する会社のケースでは、トラックなどの機材の稼働率が非常に重要なんですが、各機材から送られてくるデータをもとに故障を未然に防いだり、修理期間を短縮したりして、結果的に稼働率を15%程度向上させたといった事例だとか、建設、製造、航空、金融、保険、医療などほぼ全業種で一斉に立ち上がり始めました。

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