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データ分析の専門家はもういらない!?米IBMがWatsonによる分析サービスを発表

2014年9月22日(月)田口 潤(IT Leaders編集部)

「強力なアナリティックス」「この10年間で最大」−−。こんな形容詞を冠した分析サービスを米IBMが発表した。同社のスマートマシン「Watson」を使い、自然言語による分析処理を可能にする。文字通りのものなら、データ分析という行為を変革するだけに、同サービスの形容詞は、あながち大げさとは言えない。

 IBM、強力なアナリティクス・サービスを発表−−。こんなタイトルの発表文が先週、届いた(日本IBM発のニュースリリース)。本文には「IBMは本日(9月16日現地時間)、アナリティクス分野のリーダーとして、この10年間で最大の発表となるWatson Analyticsを発表しました」とある。「強力な」とか「この10年間で最大の」とか、いささか大げさな形容詞があるが、それだけ気合いが入っていることは間違いない。一体、どんなサービスなのか?

図1:Watson DeepQAのアーキテクチャー図1:Watson DeepQAのアーキテクチャー
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 本誌読者には「Watson」は馴染みがあるだろう(関連記事)。IBMが開発し、現在はオープンソースになっている「UIMA(Unstructured Information Management Architecture)」という技術や、「DeepQA」というアーキテクチャーを実装したスマートマシン(知的システム)である(図1)。

 大量のデータや文書を整理して蓄積し、それらを元に問い合わせ内容を推論して、正しいと推定される結果を確率付きで返す。癌の診断をはじめとする医療や、法律分野、金融分野などへの応用がすでに進んでいる。

データ分析専門家の代わりになる

 では「Watson Analytics」とは、どんなものか?発表文にある説明を要約すると、以下の3つの機能を提供する。

(1)シングル・ビジネスアナリティクス・エクスペリエンス
ビジネスの専門家が、他のメンバーとコラボレーションを行うのを支援する。そのために、データの源を明らかにし、クレンジングや精緻化を行い、洞察を発見し、結果を予測/可視化し、レポートまたはダッシュボードを作成する

(2)ガイド付きの予測アナリティクス
予測分析を活用して関連性の高い主要な事実を明らかにし、予測していなかったパターンや関係を発見する作業を行う。新たな質問や、より良い洞察をひらめかせ、ビジネスにとって一番重要な部分にユーザーを導く

(3)自然言語による対話
ビジネスにおいて使用される言葉や、一般的な言葉を使うため、ユーザーが知りたい内容を単純に入力できる。事象が発生した原因や発生が予想される事象を示す結果をすべて馴染みのあるビジネス用語で生成する。ビジネス専門家は質問の微調整をして問題の核心に迫れる

 分かるようで分かりにくいが、要はこういうことだ。

 Watson Analyticsはビジネスの現場で求められるデータ分析や活用に関わる知識ベースと推論の仕組みを備えている。利用者は分析対象となるデータさえインプットすれば、自然言語で問い合わせながらデータを分析できる。

図2:Watson Analyticsの画面例。画面は購買理由の分析ケース図2:Watson Analyticsの画面例。画面は購買理由の分析ケース
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 例えば「自社の製品売上の主な促進要因は何か」「どの福利厚生が従業員の維持に最も効果的か」「締結できる可能性が最も高い契約はどれか」といった質問を理解し、答を返す(図2)。グラフの作成も自然言語で指示できる。さらに言えば、「なぜその答に辿り着いたか」という推論過程を示せる利点もある。

図3:スマートデバイスからも利用できる図3:スマートデバイスからも利用できる
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 この時、利用者は回帰分析や相関分析といった分析手法を知る必要も、分析モデルを作る必要も、さらにグラフ化(ビジュアル化)の手法を知る必要もない。あらかじめデータを投入しておけば、後は自然言語で問い合わせるだけ。営業担当者からCEOまで、すべてのビジネスパーソンが利用できる。モバイルデバイスからでも利用できる(図3)。

 簡単に言えば、Watson Analyticsは、データ分析の専門家の代わりに働く、現代のエキスパートシステム(専門家を代替するシステム)というわけだ。

 実際にどれほど簡便に分析できるのか、データ分析の専門家なしには困難とされる予測分析(Predictive Analysis)の実用性はどうかなど、デモも詳細説明もないのでよく分からない点もある。そうだとしても、様々なデータ分析ツールを活用できていない企業や、データ分析の専門家を採用できない企業にとっては朗報になる可能性が高い。当初はできないことがあっても、学習によりできることが増えるのが、Watsonのようなスマートマシンの特徴だからである。

Tableauなどデータ可視化ツールを意識?

 それにしてもなせWatsonの応用として今、アナリティックスなのか。IBMの製品であるSPSSやCognosなどとの競合はどうなのか。「データサイエンティストやアナリスト向けに主にデザインされ、可視化に主眼を置くアナリティクスオファリングとして提供されているものと異なり・・・」という発表文の記述から推察すると、米タブローソフトウェアの「Tableau」や、米クリックテックの「QlikView」、独SAPの「SAP Lumira」などを強く意識しているようだ。

 もちろんWatsonのポテンシャルを広めるのに向くという面もあるだろう。IT関係者ならWatsonの名前は知っているにせよ、医療や法律など特定分野の専門家でないと、実際にWatsonに触れる機会はない。データアナリティクスのような汎用的な用途であれば、その問題を解決できるからだ。

図4:IBMのCloud Marketplaceの画面例図4:IBMのCloud Marketplaceの画面例
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 IBMはWatson Analyticsを、同社のクラウドサービスである「SoftLayer」上で稼働させ、クラウド上のソフトウェアやサービスの販売サイトである「IBM Cloud marketplace」を通じて提供する(図4)。同社のPaaS(Platform as a Service)である「IBM Bluemix」上でも提供し、外部の開発者やソフトウェアがWatson Analyticsを組み込んだアプリケーションを開発できるようにする計画もある。

 実際の提供開始は2014年秋から。利用料は基本的に無料だが、本格利用する場合に有償になるフリーミアムモデル、あるいはサポート付きのプレミアムパッケージを用意する。英語版しかないことが残念だが、投入するデータ項目名を英語に置き換えたり英語で問い合わせたりすれば、問題なく使えるはずだ。Watsonのポテンシャルを知る意味でも使ってみる価値はある。

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