[海外動向]

再浮上するIT資産管理、クラウド/IoT時代の“必需品”に

2014年9月29日(月)田口 潤(IT Leaders編集部)

IT資産管理−−。この言葉から浮かぶのは「コンプライアンス上のやっかいな決め事であり、できれば避けて通りたい」といったイメージかも知れない。しかし実際にはまったく異なるようだ。国際IT資産管理者協会・日本支部が開催したカンファレンスから、新しいIT資産管理のあり方を紐解いてみよう。

 IT資産管理と聞いて思い浮かぶことの多くは、「保有するハードウェアやソフトウェア資産の管理」であり、特に管理があいまいになりがちな「PCなどクライアント機や、そこで動くソフトウェアを管理し、無駄な出費や著作権違反などをなくす」といった認識だろう。

 こうした日本での認識を払拭すると同時に、IT資産管理の必然性を訴えるために、国際IT資産管理者協会(IAITAM)の日本支部が2014年9月25日、国内初のカンファレンス「「IAITAM ACE JAPAN 2014」を開催した。米国では「IAITAM ACE」として、2002年から年2回のペースで開催しており、最近では年間1500人が参加する規模になっている(関連記事)。

 では、IT資産管理をどう位置付けているのだろうか。またなぜ今、関心を集めているのだろうか。同カンファレンスの3つの講演から、(1)IT資産管理とは何か、(2)なぜ今必要なのか、(3)実践するにはどんな方法があるのか、についてまとめてみよう。

 なお3つの講演とは、『日本におけるIT資産管理の今後(IAITAM日本支部の武内烈支部長)』『企業を取り巻くIT環境のパラダイムシフトとIT資産管理(あらた監査法人の岸泰弘パートナー)』『クラウド時代に最適化したIT資産の運用管理とは』(日本マイクロソフトの西脇資哲業務執行役員)』である。

 結論から言えば、「企業におけるIT資産管理は、製品の設計や製造におけるBOM(部品表)に相当する。従って必要不可欠」である。特に「これからのIoT(Internet of Things:モノのインターネット)の時代には、さらに重要になる」というとだ。

 問題があるとすれば、「IT資産管理」という言葉から想起される、「ともかく管理すればいい」といったイメージや、「コンプライアンス上、ある程度のことは実施せざるを得ない」といった印象だろう(余談だが、日本支部には用語の工夫を望みたい)。

(1)IT資産管理とは何か

 本題に入ろう。IT資産管理について、あらた監査法人の岸氏は「ITの計画、リソースの調達、展開、維持、廃棄という一連のプロセスにおいて、コストやリスクを低減し、経営戦略に合致するよう、IT資産を監視・管理することです」と語る。IT資産とはソフトウェア、ハードウェア、サービスなどを指す。

図1:IT資産管理は、製造業におけるBOMに相当する図1:IT資産管理は、製造業におけるBOMに相当する
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 「IT資産管理は、製造業におけるBOMに相当します」と述べるのは、IAITAM日本支部長の武内氏だ(図1)。「製造業では、製品をどんな部品でどう構成するかが品質を決定づけます。情報システムも様々なIT資産を使ってサービスが構成されます。製造業でBOMが欠かせないのと同様に、ITコストの最適化、ユーザーに提供するITサービスの利便性や柔軟性を向上するためにIT資産管理は欠かせません」というわけだ。

 当然だが、部品表だけでは製品を作れないのと同じく、IT資産管理はゴールではない。ITの全体最適や迅速な変化対応を可能にする手段だという。単に保有するハードウェアやソフトウェアを台帳で管理すればいいというわけではない。「保守契約やサービス契約、発注書管理なども含まれます。ですから統合された管理システムが必要になります」(武内氏)。

 日本マイクロソフトの西脇氏は、「クラウドファースト、モバイルファーストと言われる時代、ソフトウェア自体の形態が変わり、ライセンスの提供形態も変わってきています。Office365のようなサービスを、どう管理すれば適切かという疑問を持って頂きたい」と指摘する。

 例えばモバイルデバイス。企業保有の端末が管理対象になるのは自明だが、従業員が保有する、いわゆるBYOD(Bring Your Own Device)の端末はどうか。

 「業務に使う以上、OSのバージョンやセキュリティ設定、使用するアプリケーションなど何らかの管理は必要でしょう。モバイルトラフィック量も料金に関わってくるので管理し、さらに利用量を予測する必要があります」(西脇氏)。IT資産そのものが大きく広がっているというのだ。

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