[インタビュー]

“何でも自社で”への執着を断ち切ってこそ改革が成就する

コニカミノルタが世界5極に展開する“BIC”の意義

2015年2月25日(水)川上 潤司(IT Leaders編集部)

モノ作り一辺倒から、真の顧客価値を提供する会社へ──。複合機など、情報機器の製造・販売を主軸にビジネス展開してきたコニカミノルタが、中期計画「TRANSFORM 2016」を旗印に改革を進めている。一連のアクションの中で注目したいのが、世界5極体制で推進する「ビジネスイノベーションセンター」(BIC)の活動だ。プロジェクトを統括する、市村雄二氏(マーケティング本部 副本部長/ICT・サービス事業統括部長)に狙いや現状について話を伺った。

2014年度からの3カ年計画「TRANSFORM 2016」を掲げ、意識の面でも事業の面でも文字通り“変革”の必要性を訴えています。まずは何が背景にあるのかをお聞かせください。

 これまでの当社のビジネスの柱は、複合機を中心とした情報機器の製造・販売です。複合機というのは、メカやエレキ、ソフト、化成品などの技術が密接に絡み合っていて、“摺り合わせ”が巧くできないと良い製品は作れず市場では勝てません。日本のメーカーが昔から真骨頂を発揮してきた領域で、事実、OEM(相手先ブランドによる製造)などを勘案すると、国内勢がかなりのシェアをグローバルで誇っています。

コニカミノルタ マーケティング本部 副本部長 / ICT・サービス事業統括部長の市村雄二氏

 しかし、長い目で見ればプリントアウトの市場がシュリンクしていくことは目に見えている。環境への配慮や生産性向上の側面からペーパーレス化はますます進んでいくでしょう。デンマーク政府が紙を徹底的に減らす宣言をしたような動きは、早晩、各国に広がります。銀塩カメラがデジタルカメラに一気に置き換わってフィルム製造や現像処理のビジネスが斜陽化したようなことが、複合機の市場にも世界規模で起こり得るのです。

 だからこそ、企業体力があるうちにビジネスの主軸を移さなければならない。とはいえ、それは簡単な話ではありません。長きにわたってモノ作りをしてきた会社はどこもそうだと思いますが、プロダクト志向から抜けきれず、従来の延長線上でより良い製品を一生懸命に作り込もうとしてしまいます。例えば、これまで毎分50枚の印刷速度を、どうにかして60枚にしようとかね。技術者としてのプライドは大事なんだけれども、世の中の大きな潮流を見落としては元も子もない。そこを全社的に強く意識するために、改革を急いでいるのです。

なるほど。それで、貴社のビジネスに変革を巻き起こそうということで、専門チームとなるビジネスイノベーションセンター(BIC)を新設したという流れでしょうか?

 誤解してほしくないのは、ここでいう「ビジネス」とは“当社の顧客”のビジネスのこと。BICは、世界各国でビジネスを手がけている顧客にイノベーションをもたらすことに主眼を置いているのです。

 「ビジネスにITは不可欠」というフレーズは前々から言われていることですが、その実態はここ数年で大きく様変わりしました。IT部門がグローバルにERPパッケージを導入してきたようなケース、つまりは業務遂行を支援するためにITを使うというレベルを超え、ITそのもので新しい事業を創る時代に突入しているのです。その意味で、ビジネスとITは今や渾然一体なのです。

 モバイルやクラウド、ソーシャルといった技術の進歩が同時並行的に進む中、ITのコンシューマライゼーション、コモディティ化が巻き起こっているのは周知の通りです。企業の事業部門はITに疎いなんて言っていたのは昔の話。感度や問題意識の高い人たちがビジネスサイドにどんどん出てきており、新時代に相応しいビジネスを我先に立ち上げようと懸命になっています。そこに当社が食い込んで価値を提供できるようになりたい。それを具現化することが、結果的には当社のイノベーションに帰着するという考えです。

 その時に、社内のR&D部門が持っているものなど、自社の要素技術を優先的に持ち込もうと考えてはいけない。本当の意味での“カスタマーセントリック”な企業を目指そうということで創ったのがBICなのです。

 BICのメンバーのミッションは、顧客と握り合って顧客に価値をもたらす事業アイディを提案し議論し、それを実現していくことです。今までにはないビジネスモデルを考えるとなると、当然、新しいテクノロジーも不可欠。その選択肢のワンオブゼムに、当社のR&Dの成果物が絡んでいると、それはそれで幸せなことですが、現実には厳しいことをまずは自認しておかなければなりません。

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