[IoTの本質と価値を探る]

第2回:シスコのIoEビジョンに見る、IoTのユースケースと潜在的な経済価値

2015年3月2日(月)冨永 裕子(ITアナリスト/コンサルタント)

IoT(Internet of Things)は、つかみどころのないテクノロジービジョンである。現時点でIoTのアプリケーションやサービスとして提供されているものをよく見ると、決して目新しいものではないことに気づく。本連載では、着眼点や重要な事象などを示しながら、IoTの本質と、個人や企業、社会にもたらされる価値を探っていく。

 前回、米シスコシステムズのコンサルティング部門、シスコ コンサルティング サービス(CCS)のホワイトペーパーから、IoTが登場した背景と範囲が拡散していく過程を眺めた。IoTに関係する文献を探してみると、IoTとM2Mが両方揃って提示されることが多い。今回は、CCSが2013年に発表したIoEの経済価値に関するホワイトペーパー「Embracing the Internet of Everything to Capture Your Share of $14.4 Trillion」を取り上げ、IoT分野における同社のビジョンである「IoE(Internet of Everything)」の位置づけや、同ビジョンを参考にIoTの潜在的な経済価値について考えてみる。

シスコが提唱するIoEとは

 CCSによると、全世界のインターネットに接続可能なデバイスの数は、2013年時点に1兆5,000億台と推計されている。そして、このうち実際に接続されているデバイスの数は100億台程度にすぎないという。つまり、まだ99%超のモノがインターネットにつながっていない。これらのデバイスがインターネットに接続されるということは、より多くの人や情報が相互に接続され、プロセスが変わることを意味する。

 シスコは、デバイスのある場所に行く必要があった時代、デバイスを持ち歩く時代を経て、現在をIoTの時代だとしている(図1)。この図を見ると、IoTとは、一般に理解されているあらゆるモノがインターネットに接続されたネットワークではなく、むしろインターネットに接続できる複数のデバイスを持ち歩くようになった現状を示しているように見受けられる。そしてシスコはマルチデバイス時代のIoTの先を見据え、すべてのものがインターネットでつながる将来像をIoEとし、IoEとは「ヒト、プロセス、データ、モノをひとまとめにし、これまで以上に密接で価値のあるつながりを作り出すこと」と定義した。単にモノだけでなく、ヒト、プロセス、データの視点が加えられていることが、IoEというビジョンの特徴だと言えるだろう。

図1:インターネットにつながるモノの急激な増加(出典:シスコ コンサルティング サービス、2013年)

 Ethernetの共同発明者の1人であるロバート・メトカーフ(Robert Metcalfe)氏はかつて、「ネットワークの価値は利用者の2乗に比例して増加する」と提唱した。これはメトカーフの法則として知られており、前回、「ネットワーク同士が接続すればもたらされる価値は増大する」と説明したこともこれを論拠としている。利用者(ヒト)に加えてデバイス(モノ)も考慮すれば、インターネットに接続されるデバイスが増えるほど、ネットワークの価値は飛躍的に増大することになる。

 シスコはIoEにおけるインターネットへの接続形態には、M2M、M2P(Machine-to-Person)、P2M(Person-to-Machine)、P2P(Person-to-Person)があるとしている。P2Pは、従来型のコンピューターを介したヒト同士のネットワークであり、P2PをIoEの構成要素の1つとするのはシスコ独特の考え方だ。言い換えると、IoTの構成要素はM2MとM2Pの2つであり、IoEはIoTを拡大したビジョンと考えることができる。

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