ビジネスを成長させるのにITは不可欠。情報システムのデザインや実装にユーザー自身がコミットしなければならないのは当然のことだが、ITベンダーも“プロフェッショナル”として課題解決を支援する存在であるべきだ。しかし、その実態の多くは理想とかけ離れている。
今や企業情報システムは「ビジネスをドライブするエンジン」と言える存在になった。エンジンを作ることも、使い方を考えることも、使うことも経営の重要事項になった。当然、経営者は直接関与しなければならないし、技術課題を担当する部署(多くはまだシステム部門と呼ばれている)は外部の専門家たちと連携して、戦略的企画やデザインなど経営目的を実現する仕組みを作っていかなければならない。
情報システムの構築や運用において、発注側の主体性の無さや丸投げ体質、そしてシステム部門の機能不全を指摘する声は大きい。動かないコンピュータやシステム裁判など、様々な問題の裏には発注側の問題が少なくないことも事実だ。専門メディアはベンダー側を敵に回すわけにはいかないからユーザー側の不作為を指摘することが多くなり、その類の記事も目立つ。しかし平衡感覚を効かすためにもベンダーの実態を正しく理解したほうがいい。
日本と米国ではユーザー企業とベンダー企業の関係が根本的に異なるので、比較論で論じても意味がない。日本企業にコンピュータが導入されてきた歴史的背景を考え、現状を見るべきだ。日本のIT産業は汎用コンピュータメーカーが主導する形で作ってきた。そこを頂点に、1次受け、2次受け…N次受けという多重下請け構造である。
インターネットとシステムのオープン化によって環境が明らかに変貌した。その技術的進化は急速で広く、深い。2006年に登場した「クラウド」という言葉は、当初こそ雲をつかむような話だったが、今や実体となって重要な要素になっている。「ビックデータ」、「デジタルマーケティング」「M2M」「IoT」など新しい概念に迷走しているのは、ユーザーよりむしろメーカー系を中心とする古典的なシステムベンダーではないのか?
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