[インタビュー]

米ガートナーに聞くシステム運用の未来像、カギはValueOpsとBusiness Value Dashboard

2015年6月3日(水)田口 潤(IT Leaders編集部)

クラウドによってIT基盤の構築は大幅に楽になり、例えばシステム運用の負担は激減する、構築や運用管理に関わるコストも大幅に低減できる…。クラウドの利点が語られる時、こういった類の話は多い。ITインフラやその運用を担う責任者や担当者からすれば、気になるところだろう。極論すればシステム運用は不要になる、そうでなくても業務内容は大幅に変わることを意味するからだ。

 実際のところはどうなのか? 米ガートナーでIT運用管理のリサーチを担当するジェフ・ブルックス氏(マネージング・バイスプレジデント)に、それを含めた「デジタルビジネス時代のIT運用管理の最前線」を聞いた。同氏は「ITの役割が変わる中で、ITインフラ構築や運用管理チーム(以下、I&O=Infrastructure&Operations)が変革を迫られているのは事実。しかし運用管理チームが不要になるとか、そういった話ではない。ITを通してビジネスをどう良くするかを考える時、役割はむしろ重く大きくなる」と語る。以下、Q&A形式で同氏の考えをお届けしよう。

ValueOps、BVDとは何か?

──最初にシステムの運用管理技術に関わる技術トレンドを聞きます。下図はブルックスさんが講演で示したハイプサイクルですが、この中で例えば「ValueOps」や「Business Value Dashboard (BVD)」は聞いたことがありません。それぞれ、何を指すのでしょうか?

図1 ITオペレーション管理のハイプサイクル(出典:ガートナー)
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ブルックス氏:ガートナーは「Bimodal IT(2つの流儀のIT)」を提唱していますが、知っていますか。

──企業のITには既存の業務プロセスをシステム化するモード1と、存在しないサービスをITで実現するモード2という2つがあるという考え方のことですね。

米ガートナー リサーチでバイス プレジデントを務めるジェフ・ブルックス氏

ブルックス氏:そうです。多くの企業の情報システム群はモード1であり、運用管理も確実性、安全性を重視するモード1のやり方が主流です。一方で現在は、モード2のシステムが急速に増えています。モード2では何よりもスピードが大切になります。そこでビジネス価値に基づき、クイックにアクションを分類/優先順位付けする方法を、IT運用管理部門に提供する。それがValueOpsです。

 ハンドメイドの製品をオンラインで販売するEtsy(https://www.etsy.com/jp/)という会社があります。2012年、この会社が運用環境にデプロイした件数は6419件にも上りました。これ以外にも構成を変更するデプロイが3851件あり、196人が運用環境へのデプロイ作業を担当しています。

──年間で6400回もシステムを更改しているのですか?

ブルックス氏:そうです。それがモード2のシステムで求められるスピードであり、そのためにValueOpsに関わる技術があります。当然、運用管理にもスピードが求められています(図2)。例えばモード2のシステムのために新しいITツールを導入する場合、ともかく使ってみてダメならどんどん捨てるといったアプローチが必要です。じっくり評価し、テストに時間をかけるわけにはいきません。普段からPoC(概念実証)を繰り返すようなことが必要です。ValueOpsはその指針やアプローチのことです。

図2 I&Oに対するビジネス部門からのスピードのプレッシャー(出典:ガートナー)
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 もう一つのBVDは2年半ほど前に登場した、I&Oがビジネスにもたらす価値を可視化するツールです。企業のI&Oの多くは、ITのビジネス価値を上手く伝えられずに苦労しています。このコストで10TBのデータを処理しているといっても通用しませんからね。ビジネスの言葉でITの価値を伝えることが必要なんです。BVDはビジネス・パフォーマンスを測定する項目を定義し、ITインフラや運用管理とリンクして可視化します。

──BVDは考え方でしょうか、それとも何らかのツールがあるのでしょうか?

ブルックス氏:まだ市場規模は小さいのですが、ベンダーもツールも存在します。例えばeMite、Execview、Northcraft Analytics、PureShare、Vyom Labs、Xtractionといったベンダーです。I&Oは自らの価値を説明するべきですから、こうしたツールの有用性は高いと考えています。

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