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リクルートテクノロジーズが深層学習を応用した画像解析システムを開発、サイトへの実装も

2015年7月16日(木)川上 潤司(IT Leaders編集部)

リクルートテクノロジーズはDeep Learning(深層学習)を応用した画像解析システムを開発、「ホットペーパービューティー」などグループ企業が運営する情報サービスサイトの一部で実利用を開始したことを2015年7月16日に発表した。

 読者諸氏には馴染みが薄いかもしれないが、手足の爪の装飾、いわゆるネイルアートに気を遣い、相応のお金を費やす女性が確実に増えている。流行を取り入れつつ、自分らしいこだわりを演出したい──。そう願う人々にとって、今や最大の情報源はインターネット。総合美容サイト、著名サロンの公式ページ、ファッションリーダーの個人ブログなど、参考になる情報が溢れている。

 こうした中で存在感を高めているのが、自分好みのデザインを求める顧客と、技術力/サービス力を訴求したいネイルサロンとの、マッチングを図る情報サービスサイトだ。代表的なのが、リクルートライフスタイルが運営する「ホットペッパービューティー」。ヘアカットやエステなど美容に関わるサロン全般を対象とする検索・予約サイトという位置付けだが、ネイル情報が充実していることで注目を集めている。

 この手のサイトにおいては、ユーザーにとっての使い勝手、とりわけ「思い描くイメージにぴったりの情報に確実にたどり付けるかどうか」が肝となる。ネイルアートの場合、ユーザーの最大の関心対象は、実際の作例を示す画像データだ。「似たデザインで、もっと赤味が強いもの」「色は気に入ったけど装飾にもう一工夫ほしい」といった際に、的確なリコメンデーションができることが望ましいが、これがなかなか難しい。画像データ1つひとつに「オレンジ」「グラデーション」「ビーズ」といった画像の特徴を示すタグ情報を付与し、それらをキーに検索・抽出するアプローチが一般的だが、運用に手間がかかるし、特徴を文字で表現するのには自ずと限界がある。

 だからこそ、この課題を解決する道筋をつけることは、サイトの価値を高めることに直結する。求めるネイルアートの画像を探しやすいとの評価が広がれば、サイトへの訪問数や滞留率などの増加が見込める。“人通り”の多さは、ネイルサロンを呼び込む好材料。顧客もサロンも増えれば、そこに一定の商機が生まれ、場を提供するリクルートも含めて三方よしの好循環が生まれるというわけだ。

 前置きが長くなったが、リクルートグループは今、そんな取り組みを進めている。ITを基軸にグループ各社の事業拡大を支援するリクルートテクノロジーズが、最新の機械学習技術を応用した画像解析システムを開発。前述の「ホットペッパービューティー」のスマホアプリにおけるネイル情報検索機能を皮切りに、実装を始めたことを発表した。

 人間の脳構造を模した学習モデルであるDeep Learning(深層学習)や、精度向上に必要な情報を自動推薦するActive Learning(能動学習)など、機械学習ロジックを組み合せることによって、画像から物体を認識する精度を高めているのが特徴とする。

図 Deep Learning を応用した画像解析の概要(出典:リクルートテクノロジーズ)
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 画像中の物体認識において、中核に位置付けているのがDeep Learning。画像データを細分し特徴点を自動抽出することによって、人間の関与なく学習を繰り返す。ここで得た結果を元に、最終判定フェーズにはパターン認識モデルの1つであるSVM(Support Vector Machine)を採用。認識精度を高めていくには学習データを継続的に加えていくアプローチが有効だが、それに相応しいデータを用意するのに人間か介在すると手間(=コスト)がかかる。ここにActive Learningのアプローチを適用して、自動推薦する試みをしている。一連の仕組みを実装したシステムは、API(アプリケーション・プログラミング・インタフェース)を介して利用可能。これにより、専門知識がなくとも画像データを渡せば、解析結果が得られるという。

 リクルートグループが各種サイトで提供する情報サービスでは、膨大な数の画像データを取り扱っている。画像データの中に写っている物体を一定の精度で自動解析・判定するメドをつけたことで、さまざまな応用が期待できる。「ホットペッパービューティー」の事例のほか、リクルートライフスタイルが運営するキュレーションメディア「ギャザリー」において、不適切画像を見つけ出す試みに適用したところ、1時間あたり3万300枚を超える速度で、判別のベースとなるラベル付けができ、高い精度で運用できているという。

 Deep Learningの先駆けとなるニューラルネットや機械学習といった領域では過去、何度かのブームが巻き起こり、壁に直面しながらも粛々と研究が積み重ねられてきた。昨今は膨大なデータのハンドリングが可能となり、それらを処理するコンピューティングパワーも強大かつ身近になったことから、本格利用に向けた様々な取り組みが活況になりつつある。国内企業の中にも、先進テクノロジーを商用利用しようという事例が出てきたことはとても興味深い。

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