[調査・レポート]

「至って普通のExcelファイル」「Zeusの父」…サイバー世界の夏は危険がいっぱい─RSAのフィッシング攻撃報告

2015年8月13日(木)河原 潤(IT Leaders編集部)

フィッシングがスピアフィッシングに進化し、今日では標的型攻撃が蔓延するなど、サイバー攻撃/詐欺の手口の進化がとどまるところを知らない。しかもこれらは夏季に勢いをつけて増殖する。EMCジャパンRSA事業本部の月次セキュリティレポート「AFCC NEWS」の最新版(2015年8月12日発行)が、フィッシング攻撃の最新傾向を伝えている。

普通のExcelファイルを装ったトロイの木馬

 まず、RSA AFCC(Anti-Fraud Command Center:詐欺対策指令センター)が報告する最新のトピックを紹介する。AFCCは、2014年末から、マルウェアに感染させるマクロを仕込んだPDFやWord文書を添付したメールを使った攻撃がさらに増加していることを警告している。同チームで先日、大量のJPEG画像を装ったファイルを貼り付けたExcelワークシートの拡散を確認した(画面1)。「chika」という名前が付けられたこのシートには、Excelのアタッチメント画像とおぼしきものを同梱し、そのアタッチメントを開くために使うアクティベーション・ボタンが付いている。

画面1:トロイの木馬を感染拡大させるためのExcelファイル(出典:EMCジャパン RSA事業本部)

 ユーザーがこのボタンをクリックすると、Excelのマクロ機能を有効にするようメッセージが表示される。指示に従うと、あっという間にトロイの木馬「Pony Stealer」がインストールされるという仕組みだ。このPony Stealerは、感染したPC からさまざまな情報を窃取すると同時に、金融関連情報を窃取するトロイの木馬「Banker」のインストールまでも行うという。

“Zeusの父親”なる凶悪マルウェアが再び流通

 AFCCが次に挙げるのは、銀行顧客を狙うマルウェア「Kronos」だ。AFCCによると、Kronosが最初に報告されたのは2014年7月で、その名はギリシャ神話に登場するZeusの父親に由来する。史上最悪と言われたZeusマルウェアにあやかろうというクラッカーの意図が見える。

 Kronosは、サーバー間通信の暗号化や主要WebブラウザがサポートするHTML/JavaScript インジェクションに対応している。正規サイトにアクセスしたと思ったら、改変ページに飛ばされ、銀行アカウントのPIN情報や「秘密の質問」の答えを窃取しようとする。ほかにも、ステルス機能や他のトロイの木馬、セキュリティソフトによる干渉を拒絶し、サンドボックス環境での実行を拒否するためのRing3ルートキット機能も組み込まれているという。

 EMC RSAによると、2015年2月にKronosと関連のあるC&CCommand & Controlサーバーを特定した後、このサーバーもマルウェアも姿を消していたが、最近になって再びKronosが地下犯罪者フォーラムで発売されているのを発見したという(図1)。そこでなされていたオファーは、アップデート、完全サポート、マニュアル類の永年無料提供が付いて、前回の半額以下の3000ドル(支払いはビットコイン限定)だった。

図1:地下犯罪者フォーラムに掲載されたKronosの広告(出典:EMCジャパン RSA事業本部)
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●Next:国内で金融機関の名前を騙るフィッシング攻撃が急増

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