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[ビッグデータが変える課金システムの姿]

ソーシャルメディアが対顧客システムに変更を迫る:第4回

サービス化で重要性増す課金

2015年9月25日(金)Andrew Tan(独Enterest CEO)

テレコム業界で導入が先行する課金システムですが、他業界でもサービス化が進む中で課金システムの重要性が増しています。前回は、課金システムにおけるビッグデータの課題とチャレンジについて考えました。今回は、急速に広がったソーシャルメディアが課金システムに与える影響を考えます。

 筆者は先頃、長年の友人と会話する機会がありました。話題は「この20年でテレコミュニケーションがどれだけ変化を遂げたか」です。その会話の中で、かつて私の両親が、海外留学をしていた姉にかけた国際電話の請求書をみてショックを受けていたのを思い出しました。それからは電話料金を気にして、両親と姉との会話は、短くて要点のみの連絡になっていました。

 また当時、我が家には電話が1台しかありませんでした。誰かが電話を使っていると、それ以外の家族は、外の世界との唯一のコミュニケーション手段を遮断されたような気持ちになったものです。特に父は、まるで孤島に閉じ込められ、飲み水の最後の一口を持っていかれたような顔をするのでした。だから私は、いつも公衆電話を使っていたのです!

 当時と比べ、互いに情報をやり取りする方法は、本当に変わりました。今やコミュニケーションの方法は、至るところに存在しています。最後に手紙やハガキを書いたのは、いつでしょうか?未来は、私たちが考えているよりも早くやってきたのです。

 ビジネス分野でも、スマートフォンを使って世界中とビデオ通話をすることは、もう当たり前です。一方、我が家では、玄関ベルを配達員が鳴らすと、その模様を収めた画像が私に送られてきます。私が、どこにいたとしても、そのライブ音声・映像を通じて、その配達員と話をしたり、お隣に荷物を預けておくように頼んだりすることができるのです。素晴らしいことです。

顧客を知るためにソーシャルメディアをどう活用するかが重要

 現在、情報は至るところにあり即座に発信されます。ほんの5年前と比べても、誰もがより多くの情報を手にすることができます。新しい技術が新しい可能性を
広げるにつれ、どんな場面で、どんなコミュニケーション手段を活用するかという選択肢も広がります。何を選択するかは、年齢層や個人の好みによっても異なりますが、いずれもサービスの特性を良く見極めながら、自分に合ったものを場面に応じて使い分けようとしています。

 例えば停電が起きると、人々は即座にインターネットで近隣のつぶやきをチェックし、その停電が町の一部だけで起きているのか、それとも、もっと広範囲で起きているのかを判断します。同時に彼らは、使い慣れたソーシャルメディアで怒りをぶちまけることもできます。特に若い世代においては、ソーシャルメディアは重要な役割を果たしています。

 このことは、通信サービス事業者(CSP:Communication Service Provider)のサービスを利用する顧客にとっても同様です。彼らは、気に入らないサービスがあれば、「Facebook」や「What’sApp group(訳注:LINEのようなアプリケーション)」で友人たちに教えるでしょう。そこでの評価は、あっという間に拡散してしまうのです。対策は万全でしょうか?

 通信に限らず、あらゆるサービス事業者は、こうしたことを念頭に、自社のサービス戦略を常に考えながら対応しなければなりません。そのためには、顧客のことをこれまで以上に深く知る必要があります。サービス事業者にとってのソーシャルメディアは、それを活用するかどうかを議論している場合ではなく、既に、どうすればうまく活用できるかを考えるべき段階にあるのです。

ソーシャルメディアは顧客に関する膨大な情報源

 多くの通信サービス事業者は既に、様々な方法でソーシャルメディアを利用しています。ですが、その活動の大半は、企業のFacebookページやTwitterへの投稿など、自社の広告です。言い換えれば、顧客全体に対して、たった1つの「存在点」を持っているにすぎません。

 それよりも、顧客1人ひとりと直接コネクションを持ち、各個人に直接働きかける方が、ずっと効果的です。にもかかわらず、そうした戦略には出遅れがちです。若い世代や中高年の世代と、それぞれが望む異なる形でつながりを持つことは、マーケティング上とても重要なことです。

 Facebookを例にとれば、利用者は各個人の設定に応じて、友人や、写真、その他の商品や音楽、映画さらには政治的活動に至るまで、多種多様な興味のあるものの情報を共有します。顧客とコネクションを持てれば、サービス事業者は顧客それぞれについて様々な情報を得られるのです。

 さらにFacebookに加え、「LinkedIn」や「Snapchat」「subject matter forums」といった各種ソーシャルメディアを利用することで、顧客の情報源は、ほぼ際限なく広げることができます。つまり、“ソーシャルクラウド“上では膨大な量の情報を、簡単に入手できるのです。

多くのシステムが個々人対応にはなっていない

 これまで、顧客についての情報源の中心はCRM(Customer Relationship Management)システムでした。しかし、ソーシャルメディアの台頭で、その重心が変わったのです。あらゆる種類のメディア、特にソーシャルネットワークを利用して、人々が気持ちや意見を交わすようになり、グローバルなコミュニケーションのデータ量は指数関数的に増加したからです。

 ソーシャルメディアから情報を取り出すことは、ビッグデータ分析の領域へ足を踏み入れることを意味しています。ビッグデータ分析により、サービスに関して、どの顧客が、どういう問題を抱えているかとか、個人の関心が何かなどを深く分析できます。

 そうなれば、セグメント単位ではなく個人1人ひとりにまで掘り下げた個別のサービスメニューを提案できるようになります。個別化された商品パッケージが実現するのも時間の問題でしょう。つまり、顧客がコールセンターへ不満をぶつけてきてから対応するのではなく、顧客が解約を決める前に率先して顧客へアプローチする機会が与えられたということです。

 しかし、現在の課金システムやCRMシステムは、顧客プロフィールに基づく個別のメニュー/パッケージを提案するための柔軟性は持っていません。バックエンドシステムも全く新しくする必要があります。

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