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トヨタが自動車へのAI応用に5年5000万ドル、MIT/スタンフォード大と共同研究へ

2015年9月10日(木)田口 潤(IT Leaders編集部)

取り組みが進むIoT(Internet of Things:モノのインターネット)の中でも、産業界への影響が大きい分野の1つが自動車だろう。AI(Artificial Intelligent:人工知能)と組み合わされるとなればなおさらだ。2015年9月初め、トヨタ自動車は米国の有力校であるMITとスタンフォード大学と自動車へのAI応用に関する共同研究を実施すると発表した。ただし予算は年間1000万ドルと“小粒”なのが気にかかる。

 自動運転の時代でも”Fun to Drive”を追求する−−。トヨタ自動車は2015年9月4日、米MITのコンピュータ科学・人工知能研究所(CSAIL)および米スタンフォード大学のスタンフォード人工知能研究所(SAIL)との間でAI研究で連携することを発表した。

写真1:トヨタの新型自動運転実験車(出所:トヨタ自動車)写真1:トヨタの新型自動運転実験車(出所:トヨタ自動車)
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 「自動車メーカーがAI研究」というと自動運転車を連想しがちだが、トヨタの目的はそこではない。年齢や病気の有無に関わらず、あらゆる人がドライブすることの楽しみ(Fun to Drive)を得られるようにするのが目的で、「研究は人間中心であり、Googleの自動運転とは異なる」(トヨタ自動車専務の伊勢清貴氏)という(写真1)。言い換えれば、ドライバーの能力に応じて自動運転のレベルを変化させたり最適に支援したりする車が目指す姿である。

 となると当然、自動運転機能を大前提としながら、ドライバーの能力や意思、路面状態や天候などを把握したり推測したりしてアシストし、ドライバーに運転する楽しみを提供できなければならない。Googleなどが実用化を急ぐ無人運転車とはまったく違うアプローチであり、実用化の難度は無人運転よりも高いだろう。

 両大学の役割はどうか?CSAILは事故の犠牲者をなくすべく、自動運転のための意思決定アルゴルズムとシステムを研究開発する(MITの発表資料)。MITの教授であり、自律ロボットの専門家であるDaniela Rus氏が研究を率いる。

 一方のSAILは、画像認識を含めたコンピュータビジョン、人や外界の状況に応じた意思決定システムを研究する(スタンフォード大の発表資料)。SAILのディレクターであり、コンピュータサイエンスを専門とする准教授のFei-Fei Li氏が、新設の「SAIL-Toyota Center for AI Research」を牽引する。

 共同研究の対象は自動車だけではない。近距離やインドアの移動に適したモビリティツールもある。トヨタは個人の短距離移動ツールや医療・介護ロボットも研究開発している。これらも共同研究の範疇に入るのだ。

 発表の大きなトピックは、両研究所をトヨタ側で統括するExecutive Technical Advisorとして、Dr. Gill Pratt氏を招聘したこと。同氏は元MITの教授であり、現在は国防高等研究計画局(DARPA)が実施する「Robotics Challenge」のプログラムディレクターとして知られる著名人である。

 Robotics Challengeは、「3.11」における福島原発の事故に触発され、障害物が散乱するシビアな環境で作業できるロボットを競うコンテストだ。2013年12月には日本のロボットベンチャーであるSCHAFTが優勝し、その後に米Googleに買収されたこともある。Pratt氏にとって日本は馴染みがある国なのかも知れない。

 逆に気になるのは研究費の額。トヨタが共同研究に投じる予算は今後5年間で5000万ドル、120円換算で60億円。CSAILとSAILに2500万ドルずつという内訳であり、年間にすると各々500万ドルと意外に少額に思えるのだ。実際、トヨタ全体の研究開発費は2015年度が1兆500億円なので、その0.1%強でしかない。

 研究分野や性格は異なるものの、例えば米Amazon.comは米Washington大学の2人のAI研究者に2億ドルをファンドしている。米Microsoftの共同創業者であるPaul Allen氏は自らの研究機関である「allen institute for artificial intelligence」に3億ドルのファンドを積んで脳科学やAI研究を推進している。GoogleやFacebookなども大学との共同研究には意欲的だ。

 自動車に占めるITの比重が増す一方であることを考えた時、トヨタにおける外部とのAI研究が今回の発表の規模に留まるとは考えにくい。トヨタ自身による研究開発はもちろんのこと、同社の今後の動きに注目する必要があるだろう。

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