[市場動向]

ドローンの情報漏えいを防止する技術をNICTが開発

2015年10月2日(金)杉田 悟(IT Leaders編集部)

現在ドローンは、高度な空撮技術を活用して測量、インフラ点検などの分野で急速に利用が広がっている。しかし、ドローンは遠隔制御に無線技術を利用しており、乗っ取りや情報漏えいのリスクを抱えているのも事実だ。そこで国立研究開発法人 情報通信研究機構(NICT)はプロドローン、サンエストレーディングの2社と共同で、ドローンの制御の乗っ取りや情報漏えいを完全に防御する、暗号化による安全性強化技術を開発し、2015年9月28日に発表した。

 ドローンは、遠隔操縦または自律飛行のできる無人マルチコプターだ。Amazonが配送に活用することで一躍有名になったドローンだが、空中で安定的に静止でき、これまでにない鮮明な空撮画像が撮れることで、測量やインフラ点検、農業分野など様々な分野での活用が検討されている。

 しかし、スマートフォンで操縦できる機種もあるドローンは、遠隔制御に無線LANなど一般的な無線通信技術を用いており、傍受や干渉、妨害の影響を受けやすいといわれている。つまり、コンピューター同様にハッキングされるリスクを抱えているということになる。ドローンは空を飛ぶものだけに、墜落などその危険性はきわめて高いといえる。また、現在市販されているドローンの制御距離は1km程度に制限されており、広域での安全な飛行制御技術が確立されていないという課題もある。今回3社が共同開発に成功したのは、この2つの課題を解決するための技術だ。

 乗っ取りや情報漏えいを完全に防御する技術には、暗号化技術が用いられている。ドローンの無線通信技術の1つであるシリアル通信の制御信号(2.4GHz)を、パケットごとに異なる真性乱数表を使ってワンタイムパッド暗号化した。ワンタイムパッド暗号化とは、送信する情報のデジタルデータと同じ長さの真性乱数を暗号鍵として使い、1回ごとに使い捨てる暗号方式のことだ。

 暗号化は、完全ランダムな数字の系列である真性乱数と制御信号パケットの足し算で行うシンプルなものとなっている。従来の暗号化で用いられていた複雑な関数や膨大な計算を必要としないためデバイスの性能に拠らず、処理遅延のないセキュア制御通信が行えるようになったという。

 一方、広域での飛行制御の安全性を確保するためには、ドローンを広域で飛行誘導する新たな技術を開発した。ドローンに真性乱数を使った複数の暗号鍵を搭載し、複数の地上局に対となる暗号鍵を用意しておく。2つの地上局間で飛行制御を引き継ぐ処理を、次々とリレー形式で行っていくことによって、ドローンを広域で飛行誘導できるようになるというものだ。

 この技術を実現するためには、複数の地上局に暗号鍵を配送する必要があるため、NICTは2つの「世代」の配送方法を考案した。第1世代は、宅配サービスなどを使った人手による配送で、第2世代は原理的に盗聴されない暗号鍵を共有する量子鍵配送ネットワークによる自動配送だ(図)。

(図)暗号鍵を複数の地上局に配送する2世代の方式(出展:NICT)
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 量子鍵配送(QKD)ネットワークは、物理的に防御されたセキュアノードを介して2つの回線を接続、安全なセキュアノード内でQKDによる暗号鍵をもう一方の暗号鍵でカプセル化してリレー配送する。これにより複数のQKDリンクをネットワーク化して、セキュアな状態で制御範囲の長距離化、広域化を実現するという。

 NICTによると、QKDには量子学の法則に基づいたランダムな秘密鍵を用いており、どのような盗聴技術や暗号解読技術でも絶対に破られないことが数学的に証明されているという。今回の実験は、NICTの光テストベッド上に構築されたQKDネットワーク「東京QKDネットワーク」を使って行われた。

 いずれの配送方法についても実証実験に成功しているが、まずは技術的に確実な第1世代の配送システムを2年以内に商品化する予定だ。第2世代の配送システムについては、継続して研究開発を行っていくとしている。

 宅配サービスを利用する第1世代の配送システムは、コストや手間がある程度かかると想定されるため、実用的ではあるが利用範囲は限られそうだ。あくまでも本命は第2世代システムということになるだろう。第2世代システムは、実装上の制約が多いドローン上でも、簡易な方式で高い安全性を実現できる方法とされており、本格的なドローンのビジネス利用を促進するためにも、早期のサービス化が待たれる。

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