肩書きとしてCIO(最高情報責任者)を名乗る人が出てきているものの、本質的に機能している例は必ずしも多くはない。当事者意識が希薄で、“丸投げ”するようなケースも相変わらず散見させる。その一方で、時代の変化を的確に読み、ICTを成長や事業創造のエンジンと位置付けて躍進する企業もある。そこには、どのようなキーパーソンが存在しているのか──。
企業の経営者が情報システムに関心を持った象徴的な出来事が15年ほど前にあった。西暦2000年問題、いわゆるY2Kである。コンピュータのリソースを節約するために年号を西暦の下2桁で処理するのが通例だったため、2000年には99から00に戻る。それがコンピュータの誤作動を引き起こす可能性があると懸念されたのだ。2000年は特殊な閏年にあたり、それだけでも異常な振る舞いをするかもしれないとか、交通や医療、金融などの社会インフラに支障を来すのではないかと日本だけでなく、世界的に騒がれた。
筆者の会社でも対策本部が設置され、副社長を対策本部長としてY2Kへの対応に陣頭指揮を執った。筆者も事業部門の責任者を仰せつかり、部門系システムを中心に監視のために会社で徹夜をした思い出がある。このころから企業に情報担当の統括責任者を置く動きが出てきて、CIOの任命を受ける人たちが増えていった。今では経営者の職務としてのCIOが定着し、取締役や執行役員でCIOを名乗る人たちが珍しくなくなった。
では、そうした経営者が経営や事業へのICTの取り込みに目覚めたのか。自ら直接関与し、経営とICTの整合を良くしているのか?実態は残念ながらそうではない。例外はあるものの、大手中小を問わず使われない情報システムの無駄な投資やプロジェクトの遅延、動かないコンピュータやシステム裁判などが繰り返されている。経営者がシステム部門長に丸投げし、システム部門がベンダーに丸投げする構図は温存されている。経営者から投げる対象がCIOに変わっただけのことだ。相変わらずITに無関心の経営トップは多く、ICTに対する理解は思うほどには進んでいない。
うまくいっている会社はトップとキーマンの両輪がある
一方でこの15年のICT技術革新はめざましく、経営とICTの密着度もすこぶる変化している。ICTが経営のインフラであると言っていたのはバックヤードのシステム化が中心だったころの話であって、フロントの仕組み作りではICTが経営戦略や事業デザインを実現する武器である。
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