[インタビュー]

「シリコンバレーは“場所”ではなく“マインドセット”だ」米Pivotalのロブ・ミーCEO

2015年12月15日(火)志度 昌宏(DIGITAL X編集長)

PaaS(Platform as a Service)構築のためのソフトウェア群Cloud Foundryの商用版などを提供する米Pivotal。2015年8月に同社CEOは前Paul Maritz(ポール・マリッツ)氏からRob Mee(ロブ・ミー)氏に交代した。Mee氏は、アジャイル開発のコンサルティングと関連ツールを提供するPivotal Labs(2012年にEMCが買収)の創設者であり、アジャイル開発やDevOps(開発と運用の融合)などの専門家だ。同氏にアジャイル開発の最新事情などを聞いた。(聞き手は志度 昌宏=IT Leaders編集部)

米PivotalのCEOであるRob Mee(ロブ・ミー)氏米PivotalのCEOであるRob Mee(ロブ・ミー)氏

 Pivotalジャパンは2015年12月3日、東京・六本木で自社イベント「Pivotal Summitジャパン2015」を開催した。同イベントの基調講演に、新CEOであるRob Mee(ロブ・ミー)氏が登壇し、「デジタルトランスフォーメーション時代に求められるアプリケーションの未来像」と題して講演した。

 同講演でMee氏が強調したのは、ソフトウェアによるトランスフォーメーションの重要性とアプリケーション開発のスピードアップ。UberやAirbnb、Netflixなど“Distrupter(破壊者)”と呼ばれる振興企業のいずれもが、「ソフトウェアによって競争力がある製品やビジネスモデル、顧客体験などを生み出している」(Mee氏)からだ。

 しかしMee氏は、「イノベーションはスタートアップ(ベンチャー企業)の専売特許ではない」として、自動車業界や金融業界、メディア業界などで、既存の大企業が各界での主導権を確保するためのソフトウェア開発に乗り出していることを例示したうえで、「必要なのは、スタートアップと同じスピード。それにはモダン(近代的)な方法論とモダンなクラウドプラットフォームが必要だ」(同)と訴えた。

 Mee氏が講演で指摘した、いくつかのキーワードが意味するところを直接に尋ねた。

−−アジャイル開発の専門家として、「ウォーターフォールは不自然だ」と指摘した。“不自然”さは、どこにあるのか。

 ソフトウェア開発にとっては不自然という意味で、すべての開発にとってウォーターフォール型が不自然と言っているわけではない。

 ソフトウェアエンジニアリングの歴史を振り返ってみてほしい。1990年代後半のソフトウェアエンジニアリングは他の工学を真似ることが中心だった。しかし建設や土木などとソフトウェアでは本来、作り方も対象も全く違う。

 例えば、橋を架けることとソフトウェアを比べてみよう。半分が出来上がったとき、橋は変更が難しいがソフトウェアは、そこからでも変えられる。しかも、ソフトウェアは何でも対象になる。橋のシミュレーションや会計ソフトなどなどだ。つまり、ソフトウェア開発では要件はいつ変わるか分からない。だから、変更させないことを前提にしたウォーターフォールは、ソフトウェア開発には向かないということだ。

 自然な姿はといえば、要件変更と、それへの修正を継続的に繰り返す方法、つまりアジャイル開発である。

 講演でも話したように、シリコンバレーは最早、場所を示しているのではなく、マインドセット(習慣化した考え方)を指している。マインドセットは、移動させられるので、Pivotalが支援しているようなアジャイル開発やそれによるビジネス速度の向上などは、東京でもロンドンでも実現できる。

 実際、当社のアジャイル開発の支援拠点である「Pivotal Labs」は現在、東京都を含め全世界に16カ所にある。浸透度などで地域差はあるかもしれないが、目指すところは共通だ。投資家もスタートアップ企業も、シリコンバレーという場所にいなければならないわけではない。

−−アジャイル開発といえば、ScrumやXP(eXtreme Programming)といった開発手法が挙がるが、「モダンな方法論」とは、これらのことか。

 Scrumはチームを対象にしたプロジェト管理手法で、プログラムコードの開発中にも最新技術の適用を可能にする。その意味で,重要な手法の1つだが、私が「モダンな方法論」と呼んでいるのは、Scrumのスーパーセットであり、プログラム開発チームへの適用にとどまるものではない。

 なぜなら、開発チームがアジャイルになれば、関連部分にも影響がでるからだ。 具体的には、要求を出すビジネス部門では要求の定義の仕方が変わるし、ITや経営の戦略の立て方、そして予算の考え方も変わる。それぞれの関連部門に新たなビジネスチャンスが生まれてくるというわけだ。

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