[市場動向]

富士通と安川情報のIoTビジネス、実用性に優れる一方で将来戦略に疑問符も

2016年1月25日(月)田口 潤(IT Leaders編集部)

2016年、最もホットなITキーワードの1つである「Internet of Things:モノのインターネット」。しかし工場や設備系のITは生産部門や施設管理部門が管轄するケースが多い。製品自体のIoT化や、モバイルデバイスによる人のIoT化になるとなおさらで、情報システム部門やCIOは管轄外となりがちだ。当然、それでいいわけではないし、それで済むわけでもない。

 一口にIoTといっても、4つの発展段階(ステージ、成熟度)があるとされる。(1)機器監視によるオペレーションの効率向上や問題の発見、(2)新たな製品・サービスの実現や提供、(3)協業などによる収益機会の増大、(4)機器や設備の自動化や自律化、である。それぞれの詳細は別の機会に譲るとして、米GE(General Electric)が進めるIndustrial InternetやドイツのIndustry4.0は、まずはステージ(2)や(3)の実現を目指している。

 一方、日本におけるIoTの試行や取り組み事例は、今のところ大半がステージ(1)。機器や設備の監視、その延長線上にある予防保全、危険作業従事者や高齢者の遠隔見守りなどである。このステージのIoTを担うのは主に事業部門だろう。CIOや情報システム部門が関わるとしても、センサーやモバイルデバイスが生み出すデータを蓄積・分析するIT基盤やセキュリティの相談に乗る程度かも知れない。

 しかしIoTの取り組みがステージ(1)で終わることはない。(1)に取り組めば(2)や(3)に移行すると考えるのが自然だ。そうなるとCIOやシステム部門が強く関与するだけでなく、主導しなければならなくなるシーンが増える。複数のCIOとITコンサルタントが、異口同音に次のように話す。

 「急ピッチで進化するICTの動向を読み、採用する技術を見極めたり、複数の事業部門の利害を調整したりする必要がある。既存の業務システムとの連携やサイバーセキュリティ対策も欠かせない。権限を持った専門部署を新設するならともかく、情報システム部門が担うしかないし担うべきだ」

 では情報システム部門がIoTに取り組む場合、何から着手するべきか?当然、情報収集が第一歩になる。そこで以下では、富士通が2016年1月中旬に発表した「ユビキタスウェア」と、安川情報システムが以前から進める「IoT/M2Mソリューション」を紹介したい。どちらもステージ(1)に焦点を当てており、実用性に優れるのが特徴だ。一方で発展性には多少の疑問も残る。そんなところに日本のIoTの最前線と課題が表れていると考えられる。

富士通:すぐ使えるセンサーとソフトウェアを売りに

 2015年5月から「FUJITSU IoT Solution UBIQUITOUSWARE(以下、ユビキタスウェア)」を展開する富士通は2016年1月20日、新製品10種の提供を始めると発表した。これまでは、ユーザー企業と実証実験に取り組むための試作品に近かったが、新製品では、その完成度を高めている。

 ユビキタスウェアの構成を図1に示す。構成要素の1つはセンシングデバイス。機器組み込み用のICチップ「コアモジュール」と「IoTの使い方を提案するために開発した」という端末群がある。コアモジュールは、加速度や、気圧、地磁気、ジャイロ、マイクといったセンサーと、マイコン、通信機能(BLE:Bluetooth Low Energy)を集積した16.6×12.2mmの極小ボード。気圧を計ると高さが計測できるので、人が自宅の1階にいるのか2階にいるのかを検出できるというものだ。オプションでGPSも追加できる。

図1:「FUJITSU IoT Solution UBIQUITOUSWARE」の構成図1:「FUJITSU IoT Solution UBIQUITOUSWARE」の構成
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 端末群は「すぐに使える」のが特徴だ。位置情報の検出に特化した「ロケーションバッジ」や、体温や脈拍などを把握する「バイタルセンシングバンド」、音や画像で人の動きを検知する室内設置用の「リモートケアベース」、犬などペットを見守る「ワンダント」がある(図2)。いずれも出荷は2月下旬以降である。なお2015年には、ヘッドマウントディスプレイをリリース済みである。

図2:「すぐに使える」とする端末群図2:「すぐに使える」とする端末群
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