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NEC、複雑な「耳の穴」の形状を生体認証に活用

2016年3月8日(火)杉田 悟(IT Leaders編集部)

個人の身体的特徴の違いを活かした認証技術がバイオメトリクス認証(生体認証)技術だ。認識率が高まり、個人認証の方法として様々な分野で実装されている。そのバイオメトリクス認証技術で定評のあるNECが長岡技術大学の協力で、新たな部位を使った認証技術を発表した。それが、人間の耳穴の形状を使ったものだ。

 生体認証には、銀行ATMなどに利用されている指紋認証や静脈認証、眼球の虹彩認証、顔認証、声紋認証など、様々なものがある。顔認証技術や指紋認証技術で、世界的に高い評価を得ているNECが新たに生体認証に使おうと考えたのが、なんと耳穴の形状だ。

 耳穴は立体的で複雑な構造をしており、そのサイズや形状は個人によって千差万別であることは知られているが、今回発表された認証技術は、その複雑な耳穴の形状を照らし合わせるわけではない。認証に使われるのは、耳穴に音を送り込んだ際に、複雑な形状に反響して得られる音響の特性だ。

 一般に音響信号は外耳道から鼓膜に達し、中耳、内耳へと進む。NECの実験では、特に外耳道を通って鼓膜で反射して返ってくる信号成分と、鼓膜を通過して奥で反射して返ってくる信号成分が重要であることがわかったという。

(図1)個人によって異なる耳穴の音響特性(出所:NEC)

  この2つの信号成分を取得するために、マイクロホン一体型イヤホンを耳に装着して、スピーカーから耳穴に数100ミリ秒の音響信号を送り込む。その音が鼓膜、中耳、内耳で反響した音をマイクで拾い、その特性を測定する。これを可視化した場合、スペクトラム包絡(山谷形状)となって表される(図1)。このグラフ状の山・谷の部分が耳穴で反射した地点に関係しており、このグラフ形状が耳穴の形状を示すことになる。論理上、2つと同じグラフ形状は存在しないということになる。

 受信信号には、外部からの音だけでなく、心臓音など体内からの雑音がどうしても含まれてしまう。その雑音の影響を排除するために、複数回の受信信号の波形を加算して平均を取る「同期加算法」を用いる。反響から得られる特徴量はごく少数で、少ない計算量に抑えられている。NECの技術は、このわずかな特徴から99%という高い認識率を実現した。測定にかかる時間は1秒程度だという。

 この認証方法では、イヤホンを耳に挿しておくだけで個人認証が行えるため、認証用機器に手をかざすといった動作が不要となる。NECでは、重要インフラ施設の保守・管理や警備など、安全・安心に関わる業務でのなりすまし防止や、無線通信・通話における内容の秘密保持、特定の場面での音声ガイドサービスなどでの適用を視野に、2018年度の実用化を目指すとしている。

 ただし、例えば中耳炎などの病気や耳垢の溜まりすぎといった、正常でない状態でどれだけ認識できるかといった実験はまだ行われていない。耳垢が溜まりすぎれば、何らかの影響が出そうなものだと考えてしまう。今後NECでは様々な状態を想定した実証実験を行っていき、どの程度まで対応可能かを調査していくとしている。

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