[調査・レポート]

産官学でITを活用した地方創生に臨む―アクセンチュア福島イノベーションセンター<下>

2016年3月18日(金)IT Leaders編集部

「地方創生」というと、「ふるさと納税」や「観光振興」などを思い浮かべる方も多いかと思うが、政府は2015年6月30日に「地方創生IT利活用促進プラン」を打ち出し、地域の課題解決や経済復興へのIT活用を促している。「地方創生の成功にはITが不可欠」ということだ。ここに紹介する福島県会津若松市の取り組みは、産官学でITによる地方創生に臨むひとつの好事例と言える。

地方創生にオープンデータやIoTの活用を

5.市民主導への改革の取り組みと実証事例

 2014年5月に、増田寛也氏を座長とする日本創成会議から、消滅可能性都市を明らかにした通称「増田レポート」が出された。私は少子高齢化・財政問題を地方が乗り切って自立していくためには、これまでの公助に頼り切った国民一人ひとりの意識を、自助の意識に変えることが大前提だと考えている。これは全国共通課題である。

 そのために一番初めに取り組んだのは「電気の見える化」事業である。毎月の使用料を月末に明細で見るだけでは善処しようがないが、すでに会津若松市内600世帯がスマートメーターを導入。この参加世帯は15分単位で確認出来る仕組みになっている。「昨日の夜はたくさん電気を使ったんじゃないか」というデータを、家族で見えるようになると意識改革が起きる。参加世帯の省エネ率は27%削減という成果を達成した。それが自助の体験である

 市役所は多くの公共データをオープンデータとして公開している。今後も新たに取得したデータを次々に公開して行く計画である。一歩一歩、気づいた市民から自助の意識へと変わり、行動へとステップを踏んでいけばいい。自助を基本として、必要な時にはコミュニティで助け合う共助、セーフティネットとしての公助の順番に市民の意識が変化した時に、その地域は持続可能都市となると考えている。

 市の公用車の一部は電気自動車を導入しており、振動や急ブレーキを感知出来るセンサーを搭載している。そこから提供される急ブレーキを踏んだと判断できるデータと警察署が持つ過去の人身事故の発生箇所データをマッシュアップして、人身事故危険箇所を明らかにする分析も実施した。分析の結果、市内のある特定箇所で人身事故が多く、これからも起きる可能性が高いという結果が出た。データでは公用車がその箇所で急ブレーキを掛ける頻度が高く、現地を見ても「止まれ」の標識がなかった。これまでの経験に加えて、客観的データ分析による政策決定が、ITを使った街づくりの典型例である。

 さらに、道路の陥没などを見つけた市民がスマートフォンで写真を撮り、オープンデータに送るとする。市の担当者はそれを見て道路の補修をする意思決定を行うように業務改善がなされる。橋に設置されたセンサーからは補修が必要かどうかのデータが送信され、市の職員は維持管理や点検で道路を巡回する非効率な業務から解放される。市民が日常の生活の中で、気軽に街づくりに参加してもらい、それを見て、市役所が判断して行政を行う。公用車が常時、データを収集するIoTというモノのインターネットから情報が集まる社会。大きな社会インフラの維持や修繕方法を変えていく仕組みとなる。

6.IoTと地方創生

 インターネットが登場し普及することで、リアル社会の他にバーチャルな空間が登場し、バーチャル空間でのビジネスが急成長し台頭してきた。そして、ITは第3次産業革命として位置づけられ、すべての産業のバージョンアップに貢献してきた。更にIoTの時代に入り、それが普及することは、リアル社会をデジタル化することを意味しており、多くの分野を横断して抜本的に改革することを可能にする。インダストリー4.0と言われる製造業の新たな改革から始まっているがデジタル化の最大の特徴は、意思や行動(プロセス)、そして結果の全てをデータとして見える化することである。これまでは、全体が見えない状態の中で経験や勘に頼り、できる限りの改善を繰り返してきた。多くの改革方法論を試みてきた先進国や企業は、この数年、新たな手が打てず行き詰まってきていたといっていい。

 IoT社会は、客観的データにより現状を把握できるようになり、経験者も発想豊かな若者も同じプラットフォーム上で考え、意見を交換することができるようになるのである。また、初期データで仮説を立て、実証を繰り返す中で大量のデータを分析する。これにより仮説を検証し、改善点を見出し、プロセスを修正する、といったいわゆるPDCAサイクルを確実、高速かつ高い頻度で回すことができるようになるのである。地方創生は地方が自立する戦略を策定し、自走できるように検証していくことから始まる。この大いなるチャレンジにIoTを最有力の社会インフラとして取り入れることが、地方創生のカギを握ることになるだろう。会津若松市で推進を続けているスマートシティプロジェクトや、予防医療の視点でIoTを活用させる取り組みなど、会津大学、それを先導する企業と共に取り組んでいきたい。

 日本は1961年に導入された「国民皆保険」制度のおかげで国民の多くが医療を受けることができるようになった。その結果として、日本は国民一人ひとりの健康医療に対する意識は、健康をケアする予防医療ではなく、病気発生後にその病気を治療する医療体制が出来上がった。予防医療のスタートとして健康診断が実施されてきたが、その結果を受けて通達される再検査や健康指導の多くは実行されずに放置され、早期予防が徹底されることがなく生活習慣病は全体の30%を占めるありさまである。現在の日本国民の健康および予防医療に対する意識は、低いといわざるを得ない。

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