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知っておきたいOSSの最新事情、レッドハットが2016年の戦略を説明

2016年4月25日(月)田口 潤(IT Leaders編集部)

企業情報システムにオープンソースソフトウェア(OSS)を利用するのは今や常識。そればかりか先端的ソフトウェアの多くが、OSSとして生まれる時代でもある。であるならばOSS最大手である米レッドハットの製品戦略は、使っているかどうかに関わらず知っておいた方がいいだろう。そこでレッドハット日本法人が4月20日に開催した新年度事業戦略説明会から、2016年に同社が何に力を入れるのかを拾ってみよう。

 結論からいえば、その答は(1)システムやアプリケーションの管理、(2)アプリケーションの開発・実行に関わるミドルウェアやプラットフォームの2分野の製品だった。中核製品である「RedHat Enterprise Linux(RHEL)」や、クラウド基盤ソフト「RHEL OpenStack Platform」も注力製品だが、これらはソリューションパートナーの強化策やエンジニアの増加策について言及された程度なので省略する。

 まず(1)に含まれる製品には、サービスとして提供される「Red Hat Insights」とソフトウェアの「Ansible」がある(図1)。Red Hat Insightsは同社の説明によると、「動作中のRHELの構成情報とRed Hatが蓄積したナレッジを定期的かつ自動的にマッチングさせ、重大なバグ/脆弱性の修正や典型的な設定ミスなどを発見し、対策案を含むレポートを生成する」サービスである。これによりバグや脆弱性が発現するのを未然に防ぐ予防保全を可能にするという。

図1:レッドハットのInsightとAnsible図1:レッドハットのInsightとAnsible
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 具体的には、各所に散在するRHELに「redhat-access-insights」というモジュールをインストールし、構成情報や現在動作しているサービスなどの情報を定期的にレッドハットに送信する。これを「Insights Rule Engine」と呼ぶソフトウェアで自動チェックすることで問題を検知し、対処策を提示する。Insights Rule Engineは同社が蓄積した問い合わせ情報やバグ修正の情報、エンジニアの知見などを元に動作するという。

 もう1つのAnsibleは、開発者などが用意する設定ファイルに従って、アプリケーションのインストールや設定、ネットワークやストレージの設定、あるいはサービスの起動/停止といった稼働環境の設定を実行する構成管理ツールの一種である。「Chef」や「Puppet」といったOSSのツールが有名だが、Ansibleは後発だけに設定情報の記述のしやすさや、管理対象のサーバーにエージェントソフトをインストールする必要がないといった特徴がある。アプリケーションの開発と実行を実質的に一体化する、いわゆるDevOpsに必須のツールでもある。米レッドハットは2015年10月に開発元のAnsibleを買収した。

 これら以外にもレッドハットは、RHELやその他のレッドハット製品を統合的に運用管理する「Red Hat Satellite」、ハイブリッドクラウド全体に渡ってオーケストレーションやガバナンス、ポリシーベースの制御を実現する「Red Hat CloudForms」といったソリューションを持っている。InsightsやAnsibleが加わったことで、システムやアプリケーションの管理面では大きく充実したと言えるだろう。

 (2)のアプリケーションの開発・実行に関わる製品では、アプリケーションサーバーである「Redhat JBoss Enterprise Application Platform(JBoss)」がある(JavaEE7準拠)。特に注目されるのはJBossに含まれるBRMS(ビジネスルール管理システム)の強化。機械学習とはまったく異なるが、関心が盛り上がっているAI(人工知能)の流れを汲む技術の1つである。

 自然言語に近い形で記述したルールに基づく業務の自動化のほか、多数の制約条件から最適解を発見する機能「Business Resource Planner」や、膨大なデータをリアルタイムに処理する複合イベント処理(CEP)といった機能を用意する。同種の製品はあまりなく、「IBM ILOGソフトウェア」がある程度である(こちらはOSSではない)。

 一方、PaaS(Platform as a Serviceの「OpenShift Enterprise」関連では、日立製作所がJ2EEアプリケーションの開発環境「Justware」の基盤に採用したという説明があった(図2)。しかし周知の通り、OpenShift Enterpriseはコンテナ技術の実質標準である「Docker」に対応したアプリケーションの開発と実行にフォーカスしたPaaSであり、例えば継続的開発が必要なWebアプリケーションが主な用途である。

図2 OpenShift Enterpriseの導入事例図2 OpenShift Enterpriseの導入事例
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 これに対し2000年代半ばに金融機関向けのJ2EEアプリケーション開発フレームワークとしてリリースされたのが日立の「Justware」。大規模なミッションクリティカル・システム向けである(図3)。開発対象の特性が大きく異なる点でJustwareとOpenShiftの組み合わせには違和感がある。日立にとってはJustwareの魅力向上、レッドハットにとってはOpenShiftの適用分野を業務システムにも拡大する狙いがあるにせよ、それがどの程度広がるのかを注目したい。

図3:日立のJustwareの構成図3:日立のJustwareの構成
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 このほかレッドハットが提供するマネージドサービスにも言及があった。1つは「OpenShift Dedicated」。クラウド上に専用のインスタンスを用意し、顧客にOpenShift環境を提供する。AWS(Amazon Web Services)を使ったサービスは2016年1月から提供中で、Google版も予定する。もう1つはモバイルアプリケーションを開発・実行するためのサービス「Red Hat Mobile」。2015年11月から試験提供しており、プロモーション活動を強化する。

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