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コンテナなど次世代アプリ向けのAPM、機械学習を装備した「Instana」が登場

2016年6月9日(木)田口 潤(IT Leaders編集部)

Systems of Engagement(SoE)のアプリケーションにおいて極めて重要なのがレスポンス性能である。一方で、SoEのアプリは外部のAPIを呼び出したり、様々なソフトウェア部品を駆使して構築される傾向があるので、適切に性能を監視するのは容易ではない。それを可能にするツールが登場した。

 アプリケーション・パフォーマンス監視(APM)という概念や、それをサポートする製品やサービスがある。メインフレームなど昔からある社内向けシステム用の性能監視ツールのことではなく、外部の消費者や顧客向けのアプリケーションに関するものである。よく「3秒過ぎると半数以上が利用を諦める」と言われるように、こうしたアプリケーションではレスポンス性能がとても重要だからだ。

 日本ではまだ一部のネット企業やクラウドサービス企業などに導入が留まるが、米国ではAPMとして確立した分野を形成している。よく引き合いに出して恐縮だが、例えば米GartnerのMagic Quadrant for APM(2015年11月)には、15の製品がリストされている(図1)。そんなAPM分野において、2015年にまったく新しいベンチャーが登場した。「次世代アプリケーションのための次世代モニタリング」を標榜する社員23人の米Instanaである。

図1 米ガートナーによるAPM分野のMagic Quadrant(出典:ガートナー)
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 「なぜ創業間もない、従って実績もないはずの、小さな企業を取り上げる?」と思われるかも知れない。理由の1つは、米Gartnerが発表する「Cool Vender 2016」のAvailability and Performance部門にリストされたこと。加えて同社が創業した経緯や、同社の言う次世代アプリケーション、同社の企業スタイルを聞いたところ、デジタルビジネス時代の1つの断面を示していると思えたからだ。どういうことか、ざっと紹介しよう。

 Instanaの創業メンバーは、有力APMベンダーである米AppDynamics(http://it.impressbm.co.jp/articles/-/11403)の経営や技術に関与していた人たち。その1人が話を聞いたPete Abrams氏(InstanaのCOO)であり、同氏によると2008年創業のAppDynamicsでさえ、最新のアプリケーションには技術的に対応しきれないのだという。

 どういうことかというと、例えばAppDynamicsではトランザクションに着目してプログラムコードにチェック用のコードを自動で埋め込み、アプリケーションのパフォーマンス──プロセスの処理時間やレスポンス性能など──を1分単位で監視する。これにより1〜2%のオーバーヘッドが生じてしまうが、問題ないレベルに思える。

図2 Instanaは独自技術によって1秒単位でアプリケーションのパフォーマンスを監視する
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 しかし、Abrams氏は次のように問題を指摘する。「今日のアプリケーション開発では、アジャイルやDevOps、継続的デリバリーが広く受け入れられている。それを支えるのはクラウド、コンテナ技術やマイクロサービスであり、これらをベースとしたアプリケーションは1分単位では粒度が荒すぎて、つぶさに挙動を把握できない。このようなことが起きるのは、ここ数年の間にアプリケーションを構成する基盤技術が変わったからであり、それ以前から存在する(AppDynamicsをはじめとする)APMツールが対応できないのは当然だ」。

 つまり今日のアプリケーションでは1日に数回、コードを変更することも珍しくない。マイクロサービスごと入れ替えることも多い、チェック用のコードを埋め込むアプローチではうまくいかないケースが出てくるわけだ。これに対しInstanaは「Dynamic Knowledge Graph」と呼ぶアプリケーションの構成を自動でモデル化する仕組みと、モデルに基づいて構成要素の最適な部分に「センサー」と呼ぶコードを自動配置する方式を開発した。これにより1秒単位で監視できるようにしたという。

図3 「Dynamic Knowledge Graph」と呼ぶ仕組みでアプリケーションの構成を自動でモデル化する
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 短い間隔で情報を取得しようとするとオーバーヘッドも大きくなるはずだが、「その通り。普通にはできない。詳細な説明は難しいのだが、Instanaでは数学的な処理をしてオーバーヘッドを最小化する仕組みを備えている」(同)。最新のツールらしく機械学習も使っており、監視対象アプリケーションから秒単位で生成される膨大なデータをInstanaが学習。問題が顕在化する前に、発生の可能性を指摘する予防保全の機能や、各種の設定を最適に変更するようレコメンドする機能も備えている。

 なおInstanaの社名はInstant Analisysから来ている。ソリューションの提供形態はSaaS。完全従量制であり、1センサー1分あたり0.0001ドルという。これだとよく分からないが、例えば5000センサーの場合では年間で22万3380ドル。これは日本の「ぐるなび」規模のWebサービスに相当するという。

 それはさておき、わずか7〜8年前のAPMツールが今日では通用しない局面が生じていること、それくらい欧米ではコンテナ技術やマイクロサービスを使う開発が増えている可能性があること、などに注目する必要があるだろう。実際、2015年4月創業の同社が2016年4月公開の「Cool Vender 2016」にリストされたのは、同社が宣伝したり、Gartnerに売り込んだりしたからではないという。

 「(ガートナーに)顧客である企業から、コンテナなどを利用したアプリケーションのAPMツールに関する問い合わせが多数あったようだ。そこでガートナーが調査したところ、Instanaをいち早く使っているカーシェアサービスのDriveNowや、大手小売りのMetroなどから当社を知った。我々自身がCool Venderにリストされたことに驚いている」(同)。

 ではInstanaの企業スタイルとはどういうことか。DriveNow、Metroがともにドイツの企業であることから推察されるように、同社はドイツ拠点のCodecentricという企業を母体に生まれ、開発拠点はドイツにある。しかし事業の拠点は米国シリコンバレーであり、そこではバーチャルオフィスで本社は存在しないのだ。Abrams氏の名刺にも電話番号とメールアドレスはあるが住所が記載されていない。

 「Instanaでは、社内コミュニケーションはソーシャルメディアのSlackやGoogle Appsを使っている。顧客とのコミュニケーションも同じだ。外部とのコミュニケーションにはGmailを使っているが、オフィスは費用もかかるので存在しない。(開発拠点を除き)社員は在宅勤務がほとんどだし、打ち合わせ場所には困らない。あえて言えば、顧客先がオフィスと言えるかも知れない」(同)。企業向けツールの企業のビジネススタイルも、着実に変わりつつある。

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