[市場動向]

日立のIoTプラットフォーム「Lumada」が持つ4つの特徴とは

2016年6月16日(木)杉田 悟(IT Leaders編集部)

日立製作所が、自社のIoT(Internet of Things:モノのインターネット)を発表したのが2016年4月のこと。他の大手ITベンダーに大きく遅れての登場だけに、どれだけ独自性を打ち出すことができているかが注目された。2016年6月1日に行われた同社のIR戦略説明会では、小島啓二執行役専務によるサービス&プラットフォームビジネスユニット事業の説明としてIoTプラットフォームの紹介に多くの時間が割かれ、その4つの特徴が明らかにされた。

OTとITの結集が「Lumada」

 日立のIoTプラットフォーム「Lumada(ルマーダ)」は、ライバルである富士通やNECよりも、より大きな範囲をカバーしているのが特徴だ。業務システムから制御システムまで、幅広い分野に携わる日立の特徴が反映されている。

 2016年4月の発表では、Lumadaが他社と大きく異なる2つの特徴が示されていた。ひとつが、Lumadaの開発が米国を中心に行われること。日立は米サンタクララに、サービス&プラットフォームビジネスユニットCEOである小島啓二執行役専務をリーダーとした同ユニットのグローバルヘッドクォーターを新設している。海外のリソースを取り入れながら6千名体制でLumadaの開発を進めていく予定で、ここへの投資額は、2018年度までの3年間で約1千億円という大規模なものになる。

 もうひとつの、他社にはない特徴が「OTとITの結集」だ。ご存知のように日立はプラントや交通インフラ関連の開発では、世界をまたにかけたビジネスを展開している。ここで培われた制御系の技術:OT(Operational Technology)はIoTに必要不可欠なものであり、ITとOT双方のノウハウを持つことを、IoTビジネスにおける日立の強みとして打ち出した形となっている。

 6月1日の戦略説明会ではLumadaについて、新たに4つの特徴が示された。それが「Single Platform, Multiple Solutions」「Open」「Adaptable」「Verified and Secure」だ(図1)。

(図1)IoTプラットフォーム「Lumada」の全容(出所:Hitachi IR Day 2016資料)
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Lumadaの強みとなる4つの特徴とは

 最初の「Single Platform, Multiple Solutions」(図2)は、ひとつのプラットフォームで複数の事業分野のソリューションを実現できるということだ。Lumadaを実際に活用するのは、各業界のユーザーに直接ソリューションを提供している「フロントビジネスユニット」。様々な業界の顧客を持つフロントビジネスユニットが、Lumadaという共通のプラットフォームを使ってソリューションを展開していく。

(図2)Lumadaの特徴「Single Platform, Multiple Solutions」(出所:Hitachi IR Day 2016資料)
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 日立はこれまで、様々な分野でソリューション開発を行ってきている。サービス&プラットフォームビジネスユニットは、各分野のソリューションを抽象化・一般化してテンプレート化する。これを「ソリューションコア」と呼ぶ。フロントビジネスユニットはこれらのソリューションコアをカスタマイズ、マッシュアップして、それぞれのユーザーに合ったソリューションに直していくという流れを考えている。

 2016年度に注力するソリューションコアとして、電力エネルギー分野の「Micro-grid」「Smart Energy」、産業・流通・水分野の「Optimized Factory」「Smart Logistics」、アーバン分野の「City Data Exchange」「Public Safety」、金融・公共・ヘルスケア分野の「Digital Payment」「Clinical Repository」、製造分野の「Predictive Maintenance」を上げている。

オープンで安全・安心なプラットフォームに

 次の「Open」(図3)は、「オープン・プラットフォーム」的な考え方を取り入れたもので、業種・業界を超えたオープン連携によるエコシステムの構築を目指す。そのため、Lumadaの多くがオープンソースで開発されているという。

(図3)Lumadaの特徴「Open」(出所:Hitachi IR Day 2016資料)
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 政府が提唱する超スマート社会「Society 5.0」は、様々な業界の優れたプラットフォームをつなぐエコシステムにより実現するとされている。日立としては、LumadaをSociety 5.0の基盤としていきたい考えだ。

 「Adaptable」(図4)は、様々なシステムに格納されたデータを仮想的に集積してビッグデータ分析を行うという考え方だ。例えば、ユーザーの情報系システムや現場系システムなど、従来連携性を考慮せずに開発されたシステムのデータを仮想化技術によってLumada上で共有、安全な状態でビッグデータとして活用できるようにする。

(図4)Lumadaの特徴「Adaptable」(出所:Hitachi IR Day 2016資料)
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 日立はグローバル展開してきたデータストレージ事業で、仮想化技術を磨いてきた。この技術を使って、各システムのデータを外に出さないですむ新しいデジタルソリューションを生み出すという。パブリッククラウドだけでなく、オンプレミスやプライベートクラウドなどの閉じたシステムでも適用可能にしたのも、仮想化技術のなせる業だ。

 最後の「Verified and Secure」(図5)は、Lumadaを構成する技術の安心・安全性を示すものだ。様々な業種のIT、OTシステムに加え、ビッグデータ処理や人工知能、ロボティクス、オープンソースBIツールの「Pentaho」など、すべて実績のあるソリューションに基づいていることが、安心・安全の根拠となっている。

(図5)Lumadaの特徴「Verified and Secure」(出所:Hitachi IR Day 2016資料)
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