[調査・レポート]

クラウド化進めるアスクル―SAPのAWS移行も視野に

―TerraSky Day 2016より―

2016年7月26日(火)杉田 悟(IT Leaders編集部)

セールスフォースのITインテグレーションで成長を遂げたテラスカイが2016年7月22日、プライベートイベント「TerraSky Day 2016」を開催した。同社はセールスフォースのインテグレーションのみならず、AWS(Amazon Web Services)関連ビジネスやSAP ERPのクラウド移行サービスにも進出するなど、クラウド全般への事業拡張を図っている。佐藤秀哉社長の基調講演にスピーカーとして登壇したアスクルのCIO兼執行役員である秋岡洋平氏は、現セールスフォースユーザーであり、将来的にはAWS活用も検討しているという、急速なクラウド化が進む同社の現状を語った。

アスクル CIO兼執行役員 e-プラットフォーム本部 本部長の秋岡洋平氏

 法人向け文具通販大手のアスクルは、現在100万点を超える商材を扱っている。2012年10月にはヤフージャパンと提携し、米やトイレットペーパーといった日用雑貨を扱う個人向けサービス「LOHACO」を開始するなど、更なる事業拡大を図っている。

 2017年12月には、LOHACO事業拡大のため関西に新たな物流センターを開設する。「物流を制するものがeコマースを制す」の例にならっての投資となる。

 国内に7カ所あるアスクルの物流センターでは、「マテハン」を駆使した自動化が図られている。「マテハン」とは「マテリアル・ハンドリング」のことで、構内の運搬作業や荷役作業を機械で行うことを意味する。

 自動化の目的は「スピード重視」の実現だ。構内にはベルトコンベアが回っており、マテハンにより瞬間的に目的の商品を抜き出して自動的に仕訳、梱包を行いトラックに積み込む。Webサイトでの注文からトラックに積み込まれるまでにかかる時間は、最短で20分という早さだ。

 これらを支えているのが、SAP ERPを採用した基幹システムと、その基幹システムと顧客、エージェント、メーカー、物流をつなぐ役目を担っている「SYNCHRO」シリーズからなる情報システムだ。

 「SYNCHRO」シリーズは、顧客の問い合わせ情報を取り込む「SYNCHRO SMILE」、エージェントとの顧客情報共有を行う「SYNCHRO AGENT」、メーカーと予測・発注情報、入荷予定情報を共有する「SYNCHRO MART」、物流のお届け情報や配送情報を仕入れる「SYNCRO CARGO」からなる。

 その他にも様々なシステムが稼働しているが、これらをアスクルでは「ECフロントグループ」「基幹システムグループ」「SYNCHRO(シンクロ)グループ」に分けている。更に、最近はビッグデータに注力しており、「ビッグデータAIグループ」も加わっている(図)。

(図)アスクルの情報システムを構成する4つのグループ
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 このうち、自社開発のECフロントグループとSAPの基幹システムグループがオンプレミスで稼働しており、シンクログループとビッグデータAIグループはほぼクラウドで動いている。SYNCHROシリーズを中心としたシンクログループはセールスフォースのプラットフォームであるForce.comを活用して開発されたものだ。

 秋岡氏はクラウド導入のメリットとして、定量的に見えるところでは「ITコストの低減」を上げている。アスクルでは重要なKPIとして、売上高に対するIT経費率を毎年追いかけている。それが、「クラウド化により約半分になった」という。

 現在オンプレミスで運用されている基幹システムグループの方は、SAP ERPがベースとなっている。アスクルは流通業なので、とにかくトランザクションの数が多い。その数は、国内のSAPユーザーの中でもトップクラスだという。

 今後ビジネスの成長とともに、オーダー数の増加、出荷の増加、請求の増加など更なるトランザクションの増加が見込まれている。現在SAPは専用のデータセンターで運用しているが、将来的にインフラ投資の増大は避けられない状況だ。

 一方、AWSを筆頭にクラウドのデータセンターサービス(IaaS:Infrastructure as a Service)の進化は早く、コストが柔軟なキャパシティプランニングが行えるようになってきているなど、「従来型データセンターとの差は開く一方」と感じている。

 そこでアスクルでは、「最終的にはAWSの上にSAP HANAを乗っける」つまりSAPのクラウド移行を検討しているという。トランザクション数で国内有数のSAPがクラウド移行に成功すれば、「あらゆるシステムにクラウド化の可能性が出てくる」(テラスカイ佐藤秀哉社長)と、クラウド推進派の期待も大きい。

 アスクルの中では、今後ピッキング作業のロボット化や膨大なセンシングデータを活用した挙動制御などIoT方面の新システムの導入も増加していくことが予想されている。このような、新たに生まれてくるシステムについても「1社でインフラを整えてというのはナンセンス」と割り切っている。アスクルのクラウド化は、必要に応じてこの先ますます進展していくようだ。

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