[調査・レポート]

国内IoTユーザーの半数が「限定的導入」にとどまる─IDC

2016年8月4日(木)杉田 悟(IT Leaders編集部)

IDC Japanは2016年8月3日、すでにIoT(Internet of Things:モノのインターネット)に取組んでいる国内ユーザー企業を対象に、その利用成熟度を調査した。国内IoTユーザー企業の成熟度は低く、ほぼ半数が「限定的導入」の段階にあるという結果が出た。

 調査は、IoTを推進している、従業員1,000名以上の企業の、課長職以上の担当者163人からの回答をもとに、IDC独自の評価手法「IDC Maturity Scape」を適用させて分析したもの。

 IDC Maturity Scapeは、IT環境の導入状況を客観的に評価するための独自手法で、まったく導入していない場合をステージ0(未導入)とし、導入後の成熟度をステージ1(個人依存)、ステージ2(限定的導入)、ステージ3(標準基盤化)、ステージ4(定量的管理)、ステージ5(継続的革新)までの5段階で評価する。

 IoTの場合、ステージ1で期待できるビジネス成果はわずか、あるいはまったく期待できない。ステージ2は競合他社と顧客ニーズによりIoTの必要性を認識しはじめている段階だが、成果はまだ。ステージ3になってIoTの成果がある程度見え始める。この段階では、具体的なROI(投資対効果)を見極めるのが課題となる。ステージ4では、IoTソリューションがCapex(設備投資)とOpex(運用コスト)にインパクトを与えている。初期段階の企業変革ももたらしている。ステージ5が、IoTが企業のデジタル変革に主要な影響力を及ぼし、重要な推進役になっている段階となる。

 今回の調査の結果、すでにIoT導入を進めている国内企業のうち、ステージ1が2.8%、ステージ2が47.9%、ステージ3が36.1%、ステージ4が12.6%、ステージ5が0.6%であることがわかった。ほぼ半数がステージ2までに止まっており、最上位のステージ5はわずか0.6%だった(図)。

(図)国内IoTの成熟度ステージ分布(出展:IDC Japan)
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 これは、一部の部署や一部のプロセスでのみIoTが実施されており、組織全体のビジネス基盤として活用している企業は限られている現状を示しているという。

 IoT先進国である米国とのギャップは大きく、ステージ2の割合は日本が米国より15ポイント程度高く、ステージ5になると米国が日本より10ポイント程度高いという結果になっている。

 多くの日本企業がステージ3に進めていない理由としてIDC Japanは、IoTの費用対効果が見えにくいこと、IoTに係わる技術標準が乱立しその選定が難しいこと、法規制が障壁となっていること、情報セキュリティ上の不安が払しょくできないことを挙げている。

 多くの場合、IoTはある程度の規模で導入しない限り明確な成果は出にくいので、小規模導入で、ROIなどの成果が上がることを確認してから次のステージに進むというプロセスを踏もうとすると、あっというまに壁にぶち当たる。

 情報セキュリティに関しては、総務省、経済産業省から「IoTセキュリティガイドライン」が2016年7月に公開されている一方で、複数のセキュリティベンダーがIoT対応ソリューションの開発に乗り出しているので、完全に不安を払拭するのは難しいにしても、近い将来ある程度の対策は可能になりそうだ。

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