[真のグローバルリーダーになるために]

【第47回】香港での案件受注が社内の人材育成策の見直しにつながる

2016年11月11日(金)海野 惠一(スウィングバイ代表取締役社長)

日本ITCソリューションは、香港での鉄道カードシステム構築案件を無事落札した。高橋社長が主催する苑田専務、三森事業部長との食事会で、課長の佐々木は今回の受注の成功要因を社長に説明すると同時に、グローバルリーダー育成の課題を3つ挙げた。入手する情報量が少なすぎる、真面目で相手の奸計を見破れない、人事考課には相手を信用させる手段として人格や個性を評価する仕組みがないである。

 「グローバルなリベラルアーツ、つまり一般教養の勉強であれば、日本の新聞を読んでいるだけでも十分じゃないのかね?」

 「ダメです。日本の新聞の内容であれば、彼らとの会話は5分と持たないでしょう。例えば日本の報道は。ロシアのプーチンについては、彼に対して欧米が批判しているぐらいのことしか報道していません。欧米の新聞は、報道する情報の範囲と判断の幅がかなり広いので、読者も常日頃から判断しながら読む習慣がついています。

 プーチンのことを知ろうとすれば、欧米の新聞は西側の意見だけのため、『なぜプーチンがロシアの国民から80%も支持されているのか』が理解できません。東側の動きを読むには東側の情報を得る必要があるのです。ロシアには『バルダイクラブ』というダボス会議の東側版がありますが、そこでプーチンが何を言っているのかを理解できれば、ロシア国民がなぜ彼を支持しているのかが分かります。それぞれの立場にたった情報を分析しないと世界の状況は理解できないと思います」

 「プーチンか。確かに日本の新聞だけでは、彼が親日なことと、ウクライナ侵攻でアメリカの経済制裁を受けていることぐらいしか分からないでしょうね。私は英国のエコノミスト紙には必ず目を通しているから、佐々木さんが言っていることはよく分かるよ」

 社長の賛同に気をよくした佐々木は話を続けた。

 「先ほど日本人が正直だという文化の話をしましたが、欧米とか中国では、ものごとには裏があると考えています。彼らは表と裏の文化を持っているのです。これが日本人には理解できません。欧米人とか中国人が日本人をビジネスパートナーとして信頼しない理由がそこにあると考えています。

海外の“表と裏”を学ぶための手段が華僑商法

 彼らの表と裏を学ぶための手段が華僑商法です。華僑商法は孫子の兵法に代表されますが、中国人のビジネスの仕方です。元々は戦争の策略ですが、今の中国人はビジネスの戦術として勉強しています。これを勉強することでビジネスの表と裏が分かるようになるはずです。インドにもユダヤにも、レバノンやシリアにも彼らの商法がありますが、日本人と中国人の文化は近いので、孫子の兵法が一番理解しやすいと思います」

 「孫子の兵法か。最近、巷では関心が高いようだね。孫子については当社でも勉強したらいいとは思っていたよ」

 「最後ですが、先ほど日本人は個性とか人格を人事考課では重視していないと申し上げました。ですが、それ以上に今の日本人はアイデンティティを持っていません。我々は日本の歴史と歴史上の人物をもっと勉強し、日本人とは一体誰なのかということを知る必要があります。慰安婦問題一つを取っても、答えられる日本人は極めて少ないでしょう。ですから『日本の精神』というものを勉強しなければなりません。それは歴史から学べます」

 「なるほど。佐々木さんが言うように、日本人はアイデンティティを持っていない人が多いな。これも戦後の教育のせいだろう。近代史を勉強している人がほとんどいないから、中国や韓国からの戦争の謝罪要求も勉強していない。政治家でも答えられないのが現状だろう」

 社長はそう言うと、苑田専務に指示を出した。

 「苑田さん、今、佐々木君が言ったことを社内でも早急に検討してくれないか」

 その頃には料理もほぼ終わり時刻は8時を回っていた。

 「みなさん。今日はありがとう。勉強までさせてもらったよ。我が社にグローバルリーダーがなぜ出てこないのかがよく分かった。そういえば当社のグローバル会議でも海外から来た人たちと最近話題になっている慰安婦の話をしているのを聞いたことがないな。なぜでしょうか、苑田さん」

 「そういうセンシティブな話は禁止しています。日本語でもうまく説明できないのに下手な英語で説明したら、海外から来た人たちに誤解されるだけですので」

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