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[市場動向]

デジタルビジネスの嵐の中で生き残れるか、CeFILの横塚氏が示した危機を示すデータ群

2016年10月12日(水)田口 潤(IT Leaders編集部)

CIO支援のための任意団体、CIO賢人倶楽部が2016年10月6日に開催したセミナー。その基調講演に立った人材育成支援団体CeFILの横塚裕志理事長は、様々なデータを駆使しながら、集まったCIOやITリーダーに向けてデジタルイノベーションへの取り組みを訴えた。デジタルビジネス、あるいはデジタル革命が進む中で、このままでは日本企業の多くは生き残れないという危機感からだ。その論拠は「経営者から一般社員、学生までを含めた勉強や学びの不足」。示唆に富むので、横塚氏の講演を再録する。

 「今日の講演は『デジタル革命の嵐の中で日本は生き残っていけるのだろうか』。こうタイトルした裏側には、生き残れないのではないかという問題意識がある。米Cisco Systemsのジョンチェンバース前CEOは、2015年7月の退任講演で『10年後までに今の企業の40%が姿を消すだろう』と述べた。これは現実になるだろうし、日本はもっと多いかも知れない」——。人材育成支援団体CeFILの横塚裕志理事長は冒頭、こう切り出した。

 まず取り上げたのが国別に見た労働生産性の比較。日本はトップ10から遙かに遠い21位(図1)。図にはないが人材競争力でも19位と低位置にある。これについて同氏は学びの不足を指摘する。「中核を担うビジネスパーソンが勉強しない。例えばCeFILでは練りに練ったデザイン思考の教育コース(4日間)を提供しているが、学びに来ない。多いのは『4日も業務を離れられない』という理由だが、これだけ変化が激しい時代に日々の業務だけをやっていてどうなるのか」

図1:国別の労働生産性(就業者1人当たりの名目付加価値)。日本は21位図1:国別の労働生産性(就業者1人当たりの名目付加価値)。日本は21位
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 一方で派遣会社数では、日本は事業所数が8万4000弱ある。米国の2万、英国の11万7000など各国に比べ突出する(図2)。「国民1人当たりでは1700人に1社。コンビニエンスストアは2500人に1店舗」(同氏)。単純には言えないにしろ、日本の強さの1つだった現場力が低下する可能性は高いだろう。

図2:国別の派遣会社の事業所数。日本は突出して多い図2:国別の派遣会社の事業所数。日本は突出して多い
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 もう1つ、同士が示した資料がYahooニュースにおけるトピックの国別差異(出典)。世界、自国内などカテゴリー分けされているトピックの中で、日本は芸能ニュースが35%に達するという(図3)。米国Yahooの芸能ニュースは6%、英国のそれは12%でしかなく、日本のいびつな姿を浮かび上がらせた。もちろん、それだけ平和である証拠ととらえることもできるが、「やはりこれも勉強しないことを示している」(同)と考えられるだろう。

図3:Yahooニュースのカテゴリー別割合。日本では芸能ニュースが3割に達する図3:Yahooニュースのカテゴリー別割合。日本では芸能ニュースが3割に達する
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 ここから横塚氏は、デジタルビジネス革命に話を転換し、その例を挙げていく。「1つはTOTOのトイレ。これはもはや健康管理ツールである。住設機器メーカーという業界の枠を超えようとしている」。

 そして自動運転。近い将来、自動運転車が普及したとき、社会はどう変わるかを想像してほしいと訴えた。「自家用車は少なくとも半減するだろう。部品メーカーやディーラーに深刻なダメージを及ぼすし、修理工場も保険も運輸会社もそうだ。不動産業も変わる。自動運転車に便利な土地が値上がりし、そうでなければ下がる」。店舗も現在は駐車場完備の大型店が有利だが、自動運転車は降りたら勝手に遠くで待機したり別の人を乗せたりできるから、駐車場の必要は小さくなるという理屈だ。

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