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[ベテランCIOが語る「私がやってきたこと、そこから学んだこと」]

ITのグローバル化に向けた挑戦と日本企業が実践するべきこと

2016年10月28日(金)寺嶋 一郎(元・積水化学工業情報システム部長)

 前回は、ITガバナンスの一環としての全社のICT標準化を行ったその経緯と成果をお話した。今回は、グローバルに向けてのITの展開の背景とその挑戦をお話したい。多くの日本企業にとって難題であり、唯一の正解があるわけでもない。筆者も悩みながら進めてきた。何かを読み取っていただければ幸いである。

 グローバル化という言葉が叫ばれて久しい。今では多くの日本企業が、海外に進出し、海外事業の比率を上げているから当然だが、積水化学の海外進出は早かった。1962年には、米国とドイツに現地会社を設立、その翌年にはシンガポールで合弁会社を設立している。といっても輸出型の進出ではない。プラスチックのパイプのような製品は、輸出をしても空気を運んでいるようなものなので、海外の企業を買収して現地生産し、販売する「地産地消」の形で進出することが多かった。

 情報システムはどうしていたのかというと、買収した会社は自社のシステムをそれぞれ構築して使用。1990年代以降は連結決算のために一定のフォーマットのエクセルシートを送付し、記入後に返送してもらっていた。つまり海外進出は早かったが、システムはバラバラで統合や連携といった面では決して自慢できるものではなかった。

日次の海外売上の見える化に向けて

 それでも決算為替や原油などの材料費が安定していた時は大きな問題はなかった。ところが2004年頃になるとその変動幅が拡大し、事業の利益の着地点がぶれだすケースが増える。もっと早く海外子会社の実情を知り、早めにアクションを取らなればならなくなったのだ。手本になったのは国内の子会社にあった日次で売上の状況が分かる「売上速報」というシステム。少子高齢化で国内市場がシュリンクし、海外市場が次のフロンティアだということで、2006年以降M&Aでの海外進出が盛んになるにつれ、海外売上比率の高い事業のトップから「海外の子会社も同じように日次で売上を把握したい」という要望が出てきた。

 さて海外の売上速報の仕組みをどうやって作るか。当時は一部の海外子会社を除き、日本と直接ネットワークはつながっていなかった。調べてみると、海外子会社をすべて専用線でつなごうとすると大きなコストがかかることが分かった。国内なら図面などのデータの受け渡しでネットワークは必須だが、売上速報のためだけに高額の費用をかけてネットワークを引く必要があるのだろうか。飛び交うのは少量の数値データで、それもほぼ一方通行であることを考えると結論は自ずとノーになった。

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