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[市場動向]

エクスポネンシャル(指数関数)エコノミーを理論的に分析、ナカシマプロペラの久保氏が企業の生き残り策を提唱

2016年11月21日(月)田口 潤(IT Leaders編集部)

クラウド活用ですら十分にできないのにビッグデータやIoT、AIなんてとんでもない。何よりも時期尚早であり、今取り組んでも苦労するだけ−−。こう考えるITリーダーは少なからずいるのではないだろうか?それに対し「今すぐに取り組むべき」という主張がある。2000年以前の考え方やアプローチでは、2000年以降の指数社会を生き残れないというものだ。

 社会や経済、技術のデジタル化が進む中で、企業はいかに生き残り、勝ち残りを図るべきか。特に日本経済の強みであり、コアの1つでもある製造業はどうすべきか−−。極めて重要だが、簡単には答が得られない難題である。IoTに取り組んだところで大した効率化にはつながらないし、AIにしても海外勢が先行している。それで活路が開けるとは限らないにせよ、従来通り生真面目に“ものづくり”に取り組むという企業も少なくないかも知れない。

 一方、この難題を真正面から考察し、生き残り戦略を提唱する人がいる。大小様々な船舶用プロベラ(一般にはスクリュー)の専門メーカーであるナカシマプロペラ(岡山市)に勤務し、イノベーション室長を務める久保博尚氏である。ビジネスシステムイニシアティブ協会(BSIA、木内里美会長)が2016年11月に開催したカンファレンスにおいて「始まった不可避の未来−−変貌する社会を企業はどう生き抜くか−−」と題して基調講演に登壇し、デジタル化の進展に関する現状認識と(特に製造業の)生き残り策を提唱した(写真1)。

写真1:ビジネスシステムイニシアティブ協会(BSIA)のカンファレンスで講演するナカシマプロペラの久保博尚イノベーション室長写真1:ビジネスシステムイニシアティブ協会(BSIA)のカンファレンスで講演するナカシマプロペラの久保博尚イノベーション室長

 特に筆者が注目したのは、デジタルビジネス時代に関する久保氏の分析である。学者でも研究者でもない、地方の中堅企業の技術者である久保氏の分析は、粗さはあるかも知れないが、デジタルの本質を捉えているように思えたのだ。それはどんなことなのか。CIOなどITリーダーの方々にも示唆に富む話だと考えるので、以下に再録してみよう。

船舶用プロベラで世界一のシェア。だが

図1:ナカシマプロペラは船舶用プロペラのトップ企業図1:ナカシマプロペラは船舶用プロペラのトップ企業
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 ナカシマプロペラは、知名度は決して高いとは言えないが国内シェア85%、海外でも20%のシェアを持つ船舶用プロベラの最大手企業である(図1)。

 久保氏はまず、そんなナカシマプロペラにおける、ものづくりから話を始めた。「当社のスクリューは量産品ではなく、すべて異なる。大きいモノは直系10m、重さ100トンにもなる銅合金製。これを職人の技で作ってきた。最近では燃費のためにCPRP(炭素繊維シート)を4000枚使ったプロペラも作っている。しかし職人技に加えて、コンピュータによる流体解析も大事だ。当社でも現在では、5000コアのCPUを専用の冷却装置で冷やしながら日々、解析の高度化に努めている」

 続いて示したのが図2。「2005年から2015年の間に、プロペラの生産数は年間で331から460へと1.5倍になった。しかしコンピュータの計算能力は1000倍以上にもなっている。我々は、これをどう捉えるべきなのか。考察すると、答は“指数社会”にある」

図2:プロペラの生産数とCPUコア数の推移図2:プロペラの生産数とCPUコア数の推移
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 このあたりは読者も見たり聞いたりしたことがあるはずの“エクスポネンシャルエコノミー(指数関数経済)”というキーワードに通じる話である。とはいえ、これだけだと「モノの生産性とCPU性能の伸びを比べることに意味があるのか」という疑問が出てくるが、久保氏は次の論点に移る。

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