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[イベントレポート]

イノベーションを生み出すには、デジタルとアナログ双方での環境づくりが重要

パネルディスカッションレポート【IT Leaders Forum 競争戦略としてのワークスタイル革新】

2016年12月28日(水)森 英幸(IT Leaders編集部)

2016年11月29日、インプレスは「IT Leaders Forum 競争戦略としてのワークスタイル革新」セミナーを都内で開催した。当日は、ユーザー事例のほか、Sansan、ワークスモバイルジャパン、Box Japanの最新ソリューションを詳説するセッションが設けられた。本稿では、パネルディスカッションの様子から、イノベーションと働き方改革の関係について迫ってみたい。

イノベーションには創発的なコミュニケーションが不可欠

PwCコンサルティング合同会社 シニアマネージャー 井手健一氏

 あらゆる業界で新たなビジネスモデルを生み出す原動力となっているデジタル革命は、同時に人々の働き方も大きく変えようとしている。むしろ、働き方改革が先で、新たなビジネスの創出はそれに付随するものと捉えることもできる。

 本セミナーで実施されたパネルディスカッションのテーマは「イノベーション創出企業に聞くワークスタイル」。モデレーターはPwCコンサルティングの井手健一氏が務め、パネリストにはリクルートホールディングスの長谷川潤氏とグーグルの津谷由里氏が登壇した。

 ディスカッションの冒頭に井手氏は、デジタル革命の旗手ともいえる新興のメガプレーヤーが次々と登場していることに触れた。例えばタクシー業界には車両を所有しない「Uber」が、メディア業界にはコンテンツを作成しない「Facebook」が、宿泊業界には宿泊施設を所有しない「Airbub」が、新たなイノベーションを生み出し、業界を席巻している。

 これらはほんの一例にすぎず、他のあらゆる業界にもその驚異は迫っており、業界構造を変革しないと生き残れないという危機感が広がっている。井手氏は、イノベーションを起こすには、創発的なコミュニケーションが行われるように企業体質を変革する必要があると主張する。

 「変革のためには、多数のアイデアを試していくしかないだろう。そのためには、まずアイデアが常に生み出されるように企業体質を変えるしかない。組織的にアイデアを生み出すには、創発的なコミュニケーションが必要だ(図1)。ビジネスのコミュニケーション手段としてメールが浸透しているが、メールに頼りすぎている企業が多いのではないかと常々感じている。メールはすぐに返事をしなくてもよいツールであり、アイデアをダイナミックに展開する用途には適していない。コミュニケーションと働き方のあり方を考える時期にきているのではないか」(井手氏)。

図1:アイデア創出をサポートする仕組みがイノベーションを起こす<出典:井手氏のプレゼン資料より>

会社がコミュニケーションを取りやすい環境を作ることが重要

株式会社リクルートホールディングス 管理本部 セキュリティ統括室 グループマネージャー/株式会社リクルートアドミニストレーション 働き方推進プロジェクト 長谷川 潤氏

 この井手氏の問いかけに対し、リクルートのグループ企業にバックオフィス機能を提供するリクルートアドミニストレーションにおいて働き方推進プロジェクトに参画する長谷川氏は、まずリクルートのコミュニケーション重視の姿勢を説明した。

 リクルートの企業文化には、「起業家精神」、「圧倒的な当事者意識」、「個の可能性に期待し合う場」という3つの柱があり、なかでも2つ目の「圧倒的な当事者意識」を育むために、フラットなコミュニケーションとフィードバックを重視している。

 「フラットというのは、上下関係や部署の垣根を越えてコミュニケーションし合うことだ。私が中途入社して驚いたのは、知らいない部署の人から『ちょっといいか?』とよく話しかけられることだった。コミュニケーション主導で物事が始まり、動くのがリクルートの姿。現在、会社として推進しているツールは、ビデオチャット、クラウドを使ったファイル共有、テキストチャットの3つで、これらが浸透するにつれて情報の流動性が高くなり、コミュニケーションのスピードが高速化したという実感がある」(長谷川氏)。

グーグル株式会社 Google Cloud パートナー営業部 パートナーセールスマネージャー 津谷 由里氏

 一方、法人向けにクラウドサービスを提供するGoogle Cloud パートナー営業部に所属している津谷氏は、イノベーションが生まれる環境について、グーグル社内で行われた調査を例に紹介した。

 グーグルは、人事に関してもデータ分析を行っているが、その調査によると、生産性が高く、イノベーティブな仕事をしている部署は”心理的安全性”が高いという共通の特徴があった。

 例えば、心理的安全性が高い環境では人は不安になりにくく、リスクを取らなければならないときや何かにチャレンジするとき、また何かミスをしたときでも、恐れずにまわりに発言ができる。心理的安全性が高い環境を作るには、チーム内でのコミュニケーションも非常に重要なポイントとなる。グーグルには「Share everything you can」という標語があるほど共有文化が根付いていて、他の会社なら部外秘になるような情報にも、ほとんどの社員がアクセスできるという。

 「資料は完成してから共有するのではなく、共有されている場所で作成することで、それを目にした人がコメントを書き込むなど、ドキュメント上でコミュニケーションが始まることもある。グーグルで有名な『20%ルール』(勤務時間の20%を自分の好きな活動に充てられる制度)も、普段の仕事では接触する機会のない人との、新しいコミュニケーションを生み出す仕掛けとして機能している」(津谷氏)。

 長谷川氏と津谷氏の発言を聞いた井手氏は、「会社は社員に気づきを与えることはできないが、刺激を与えることはできる」という言葉を引き合いに出し、会社としてコミュニケーションを取りやすい環境を作ることが重要だと訴えた。

関連キーワード

働き方改革 / リクルート / Google / イノベーション / デジタルトランスフォーメーション / 従業員エンゲージメント / チームビルディング / 心理的安全性 / プロジェクト管理 / Box / Sansan / ワークスモバイルジャパン

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