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[インタビュー]

“コミュニケーション疲れ”を起こさないチャットツール―12万社が使う理由は徹底したビジネス視点

「メールじゃ仕事になりません」山本敏行社長自らが語る、ChatWorkの目指す世界

2017年2月14日(火)池辺 紗也子(IT Leaders編集部)

ワークスタイル変革や生産性向上に取り組む企業の間で、社内コミュニケーションを加速させるツールとして「ビジネスチャット」が注目を集めている。そのトップランナーが、2011年にリリースされ、今や世界で12万社以上が利用する「チャットワーク(ChatWork)」だ。このツールの特徴、多くの企業に支持される理由は何か。米シリコンバレーで起業して以来、世界市場に挑み続けるChatWork代表取締役の山本敏行氏に直接尋ねてみた。

 

既読機能はあえて付けない――“コミュニケーション疲れ”を防ぐ「メールとチャットの間」

――競合のビジネスチャットツールが次々と登場してきています。その中で、チャットワークの特徴や強みは何でしょうか?

山本氏:まず1つは「タスク機能」です。「チャット×タスク」がチャットワークの一番の強みと言ってよいでしょう。タスクの期日も設定できますし、何かを依頼した際の「言った・言わない」「忘れてしまった」などのロスを防ぐことができます。別途プロジェクト管理ツールを使えばいいという意見もあるかもしれませんが、そういったツールを使いこなせる人は、実のところあまり多くありません。簡単にコミュニケーションが取れるチャットツールの中に、“付箋を貼る”ぐらいの軽い気持ちで使えるタスク機能というのが、業務においてちょうどいいバランスなんです。ITが苦手な人でも使えることが大事です。実際に、「タスク機能があるからチャットワークを選んだ」という声は多数あります。

ITが苦手な層でも手軽に使える「タスク機能」(出典:ChatWork)

――ITが苦手な層でも使える手軽さは重要ですね。他に売りはありますか?

山本氏:説明が難しいのですが、「利用者が心地よく使える」という設計思想があり、ここにすごくこだわっています。例えば、チャットワークには、この手のツールでは定番の既読機能(相手が自分のメッセージを閲覧したかがわかる機能)をあえて付けていません。既読機能は、プライベートにおいては便利かもしれませんが、ビジネスにおいては上司も部下も不幸になる機能だと僕は思っています。「見たのになぜ返事をしないんだ?」「なんでまだ見てないんだ?」「ああ、見てしまったからすぐ返事しないといけない」――こんなストレスは誰も幸せにしない。だから、チャットワークに既読機能はつけないと決めています。

 チャットワークの目指しているポジションは、「メールとチャットの間」なのです。完全なリアルタイムにはしない。だから、例えば「オンライン・オフラインの表示機能」も付ける気はありません。PCの電源を入れて、さあ今から集中して作業をしようと思った時に、いきなり「今いい?」と話しかけられ、リアルタイムで返事を求められる――嫌ですよね? だから付けない。本当に急いでいる時は電話をすればいいと思います。使ってみたら、この心地良さをわかっていただけるでしょう。チャットワークから違うツールに乗り換えたら“なんだか疲れる”のは、チャットワークにはそういった思想が明確にあるからです。

――メール以外のコミュニケーションツールがビジネスの世界でも普及すると、コミュニケーションのスピードや頻度ではプラスになる一方で、集中して作業を行いたい人にとってはマイナスな環境になるのではないかという懸念がありました。一時話題になった「SNS疲れ」のようなことが起きづらいように考えて開発されているわけですね。

山本氏:はい。メールの文化に慣れたユーザーが、急にリアルタイムのチャット文化に馴染もうとしても、疲れてしまってツールを開くのが怖くなるというケースは起こりがちですね。チャットワークは、業務で毎日使うものだからこそ、そういったことが起きづらいように細心の配慮を払って開発しています。

 こういった設計思想や理念の説明は非常に難しいです。機能表にすると、○と×で、「この機能は付いているか?」「値段はいくらか?」というところでしか見られませんから。それでも、ビジネス向けのチャットツールが次々と出てくる中で、チャットワークがいまだに伸び続けているのは、多数のユーザーに、私たちの理念を共感いただいているからだと思います。

――エンジニア的、技術者的な発想ではなく、業務を円滑に回すにはどんなさじ加減がよいのかというビジネス指向が根底にあるわけですね。

山本氏:CEO(最高経営責任者)がエンジニア出身だと、どうしてもエンジニアの発想になってしまいがちです。でも、僕はそもそもITが苦手で、ビジネスのことしかわからない。また、ChatWorkのCTO(最高技術責任者)を務めているのは僕の弟で、兄弟なのでお互いに言いたいことが言える。そのディスカッションの中で生まれてきたものが、今のような形になっていて、そこも強みだと思っています。

チャットワークを使えば業務コストが下がる?――「サービスのハブ」化を目指す

――チャットワークの今後の展開を教えてください。

山本氏:チャットワークは、「サービスのハブ」になっていこうとしています。チャットによるコミュニケーション強化や生産性アップだけでなく、バックオフィスのコストが下がったり、売り上げが上がったりするような、ビジネスに直結した効果を生む各種サービスをチャットワーク上で提供していく計画です。

 例えば、2016年12月には、オンライン秘書サービスの「ChatWork アシスタント」の提供を開始しました。BPO(Business Process Outsourcing)の得意な会社と提携して、秘書や一般事務、人事・総務、会計・経理などのバックオフィスを、リモートでできる作業であればなんでも引き受けるというものです。スケジュール調整、請求書発行、採用のための履歴書チェックや面接調整、Webの更新代行など、なんでもチャット越しに依頼していただくだけでいい。特に今、中小企業では人材不足が問題になっていて、バックオフィスに優秀な人材を採用するのはとても難しいという実情があります。そこを僕たちがチャットを通して解決していこうというものです。

 また、2017年1月には、採用支援の会社と提携して、「ChatWork 採用支援」も始めました。チャットワークのユーザー企業が、提携会社の持つ新卒生のプロフィールを閲覧し、直接スカウトするサービスです。ツールの会社とは思えないようなことをやっていますよね(笑)。このサービスのサポートをほかならぬチャットワークで行います。これも中小企業の人材不足を解決しようというところから思いついたものです。

 2017年は、このような企業のバックオフィス部分を強力にサポートするサービスを順番に出していく予定です。

――中小企業をメインに、12万社以上が利用しているチャットワーク上で展開していくわけですから、相当な広がりの期待が持てそうですね。サービスはいくつぐらいリリースする予定ですか?

山本氏:1月の時点ですでに2つリリースしていますから、そのようなハイペースでどんどん出していきたいですね。

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