変化するビジネス環境に対応し、より効率的なコミュニケーションを実現するために、新しいビジネスコミュニケーションツールが求められている。ビジネスの効率化とスピードアップを実現するためには、どんなビジネスコミュニケーションツールが必要なのか。その背景となるテクノロジー事情を踏まえ、考察していく。

 ビジネス環境の変化に合わせてITが進化すると同時に、ITの進展に伴ってビジネス環境もまた、ますます変化していく。結果、人と人とのコミュニケーションにも新しい形が求められている(図1)。

図1:ビジネスとITは相互に影響を与えながら進化している。ビジネス現場におけるコミュニケーションツールもまた変化を遂げてきた図1:ビジネスとITは相互に影響を与えながら進化している。ビジネス現場におけるコミュニケーションツールもまた変化を遂げてきた
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ビジネスコミュニケーションツールはメールからチャットへ

 ビジネスのスピード化に対応したコミュニケーションツールの変化の1つに、メールベースからチャットベースへの移行がある。チャットはメールやグループウェアを代替する部分もあるが、紙をベースにしたコミュニケーションの置き換えよりも、文字通り会話の置き換えが主だ。ビジネスの現場では、紙とその代替のコミュニケーションは、大量の情報を正確に伝えるためのニーズが大きい。しかし、それ以外の、もっとライトなコミュニケーションも企業内では常に行われてきた。

 「次のミーティングの日時決まった?」「去年のプロジェクトの資料どこだっけ?」--。こうした、返事が一言で戻ってくる問い合わせについて、メールというツールはいかにも重い。しかも一言で済むことでも、尋ねた相手は外出しているかもしれないし、その知識を持っているのは尋ねたのとは別の人間だったりもする。対して、会話と同じくらいの手間で、こうした会話の欠点を補えるツールとして利用されるのがチャットである。つまり、ビジネスコミュニケーションのうち、よりスピードの必要な部分だけを切り出したチャットというツールが改めて注目されているのだ。

コミュニケーションに転換を迫るビジネス環境の4つの変化

 チャットに代表されるコミュニケーションの新しい機能が必要とされる背景には、ビジネス環境がITの進化に伴って変化していることが挙げられる。なかでも大きな要因として考えなくてはならないのが、(1)モバイル化、(2)SaaS(Software as a Service)の進展、(3)クラウドストレージへの移行、(4)ソーシャルメディアの普及、の4つである。これらの変化を踏まえ、今後のコミュニケーションツールに求められる機能について考察していこう。

(1)モバイル化

図2:世界のモバイルデータのトラフィック予測(出所:『Cisco Virtual Networking Index:全世界のモバイル データ トラフィックの予測、2015 〜 2020 年アップデート』、http://www.cisco.com/web/JP/solution/isp/ipngn/literature/white_paper_c11-520862.html)図2:世界のモバイルデータのトラフィック予測(出所:『Cisco Virtual Networking Index:全世界のモバイル データ トラフィックの予測、2015 〜 2020 年アップデート』、http://www.cisco.com/web/JP/solution/isp/ipngn/literature/white_paper_c11-520862.html)
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 スマートフォンの登場で、社外から社内へのアクセスは飛躍的に便利になり、社内とのコミュニケーションも社内データへのアクセスも進んでいる。またタブレットは、PCに準じる操作性と視認性をもたらし、企業アプリケーションへのデータ入力を大幅に容易にするとともに、顧客への情報提示にも威力を発揮している。企業活動やコミュニケーションをはじめとした多くのシーンでモバイルシフトが必須になっており、ビジネスコミュニケーションツールのモバイル対応の重要性は今後もますます高まっていく(図2)。

(2)SaaS(Software as a Service)の進展

 近年では、異なるベンダー同士のサービス連携も進み、自社の業務に最適なアプリケーションをSaaSで構築できる環境が整いつつある。こうした動向を鑑みると今後、コミュニケーションツールには豊富な連携アプリケーションを持つことが求められるようになる。実際、ベンダー各社は連携に注力し、従来にない機能を次々と拡張している。

(3)クラウドストレージへの移行

 オンプレミスに蓄積されていた企業内情報のクラウドストレージへの移行が進んでいる。クラウドストレージの活用にあたっては、セキュリティやSLA(Service Level Agreement:サービスレベル契約)をチェックする必要がある。だがビジネスコミュニケーションでの利用を考えると、セキュアなデータの置き場所であるだけでは不十分だ。すなわち、単なるストレージとしてではなく、さまざまなアプリケーションのファイル形式をサポートできる「コンテンツマネジメントプラットフォーム」としての機能も評価しなければならない。

(4)ソーシャルメディアの普及

 いまやSNS(Social Networking Service)がコミュニケーションのスタンダードになっているということは言うまでもないだろう。実際、SNSのように直接用件に入れるツールがメールよりも適したシーンが多々見受けられるようになっている(図3)。ビジネス利用を前提とするならコンシューマー向けツールではなく、企業向けにセキュリティなどに留意して開発されているサービスが安心だ。

図3:FacebookとTwitterのユーザー数の推移(出所:『平成27年版情報通信白書』、総務省、http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h27/html/nc242000.html)図3:FacebookとTwitterのユーザー数の推移(出所:『平成27年版情報通信白書』、総務省、http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h27/html/nc242000.html)
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 非正規社員の急増もチャット型ツールの普及に拍車をかけている。メールアドレスを社員以外には発行できないというポリシーを持つ企業は少なくないが、それではビジネス現場のコミュニケーションが不十分になってしまう。加えて、パートタイマーやアルバイトにも利用をうながすには、教育が簡単で導入ハードルの低いサービスが適している。

目指すワークスタイルの実現に向けたサービスの選択を

 コミュニケーションツールの導入で検討すべきことは、「円滑なコミュニケーションプラットフォームとなりうるサービスか」「コミュニケーションをビジネスの成果に結びつける外部アプリケーション連携が可能か」という点だ。前者では機能だけではなく導入・運用のしやすさも重要になる。後者では、現在使用している機能を置き換えられるアプリケーションの連携だけではなく、将来必要とするアプリケーション連携も考えなければならない。

 個別業務に対応するだけでなく、今後どんなワークスタイルを構築していくべきかを考慮し、そのために求められるワークフローやモバイル強化などを含めたコミュニケーションの全体像を考えて、サービスを選択する必要がある。