CIOコンピタンス CIOコンピタンス記事一覧へ

[ザ・プロジェクト]

ピッキング作業をITで省力化=人員削減ではないという取組み―エフピコ

「攻めのIT経営銘柄 2016」選定企業のIT戦略<18>

2017年3月14日(火)佃 均(IT産業アナリスト)

広島県福山市に本社を置くエフピコが「攻めのIT経営銘柄」に選定されたのは、2015年・2016年と2年連続。2015年は最適な配送ルートと納品時間を管理・実現する「配車計画システム」「配送状況確認システム」、2016年はピッキング作業を効率化する「音声ピッキングシステム」が選定の対象となった。執行役員・情報システム部ジェネラルマネージャーの井上隆仁(たかみ)氏は「当社のITはコストを削減することが主眼ではありません」と言う。

 こればかりではない。現在、RDチェックシステムで割り出した到着予定時刻は、75%以上が±15分の誤差となっている。

 「システムを導入した2014年4月当初は、30%にも達していませんでした。RDチェックシステムは過去の納品実績データを基にして到着予定時刻を割り出す仕組みですが、当初は基になる過去の実績データがなかったからです。それでも2年もかからず、75%まで精度が高まりました。±30分の誤差で見れば、ほぼ100%を達成しています」

 音声ピッキングの話に戻すと、音声ピッキングシステムに着目したのは「現在の体制で生産性・品質をアップ」という考え方に基づく。どんなに品質がよく、高性能な製品を作っても、正しく必要な時に納品されなければ信用を失ってしまう。それが競争力あるいは付加価値になるという考え方だ。

103万円・130万円の壁を回避する

 「スーパーの店・部門別の出庫指示に従って、保管場所の棚からまとめて製品を持ってくる。それが仕分けエリアに並べられる。当社はそれを“1次ピッキング”と呼んでいます。次は納品先ごとに仕分け、当社の言い方ですと“2次ピッキング”をしていきます。この“2次ピッキング”の工程が、いちばん人手がかかるんです」

 その人員を削減する――と考えがちだが、エフピコはそうではなかった。

 「仕分け作業はパート、アルバイトの方が担っています。配送センターの近くに住んでいる家庭の主婦が中心なんですね。そうすると、非課税の枠103万円、社会保険料免除の枠130万円が障壁になってきます。加えて人手不足で、時給1000円以上でもピークの8月や12月にパート、アルバイトが集まらない」

 10人でやる仕事を7人でこなす。効率化で人員を減らすのでなく、平常月の勤務時間をピークに振り替えてもらう。あるいは別の仕事をしてもらうために行っている。このあたりはエフピコ物流の小泉社長のノウハウだ。

 「仕事がら、ピッキングシステムにかかわる色いろな情報が入ってきます。その中に、アメリカのヴォコレクト社のシステムがありました」

両手が使えると視野が広がる

 「Vocollect Voice」がそれで、カスタマイズされる前のシステムを、井上氏自身がテストした。2014年の春、「これなら使える」と判断した。紙のリストを持って移動することなく、両手が使える。目線が上がるので視野が広がる。それだけで探す時間が短くなり、ミスが減る。

 「必要なのは行番号と4桁コード、それと本数。物流改革の中で製品の4桁コードのルールが統一されていましたし、作業者は前もって決めた言葉で対応するので、複雑な言語処理機能は必要なかったんです」

ヘッドセットを使用しているので作業はフリーハンドで行える (提供:エフピコ)

 具体的には、データセンターに設置された専用サーバーで音声に変換されたデータが、腰に装着したレシーバーに無線で飛んでくる。飛んでくるのは行番号と4桁の商品コードだ。ヘッドセットのイヤホンにその音声が流れ、ピックアップしたら製品に貼付されているJANコードの下2けたを読み上げる。システムは製品コードとJANコードを管理しているため、それで照合する。照合できれば、ピックする本数の指示が流れる。

 システムの構築はヴォコレクト社の代理店である東洋ビジネスエンジアリング(B-EN-G)が請け負った。情報システム部の要員は40人強で、ネットワークから業務アプリケーションまでサポートしている。B-EN-Gがパートナーとして動いたので、作業は順調に進んでいった。

 福山のピッキングセンターで本稼働したのは2014年11月、現在は全国の拠点に導入されている。作業者が使うのは「はい」「JANコード下2桁」「もう一度」といった簡単な言葉だが、「全国に展開するに際しては、微妙な発音の違いが伏兵でした」と笑う。

音声ピッキングシステムを最初に導入した福山クロスドッグセンター(2014年8月稼働) リサイクル工場を含め地上3階、延床面積は約3万5000㎡の規模を持つ(提供:エフピコ)音声ピッキングシステムを最初に導入した福山クロスドッグセンター(2014年8月稼働)。リサイクル工場を含め地上3階、延床面積は約3万5000㎡の規模を持つ(提供:エフピコ)
拡大画像表示

 「食品トレーがなかったら、現在の食生活は成り立ちません。例えばスーパーマーケットで肉や魚などの食材を店頭に出せなくなる。その意味で、当社はインフラを担っていると考えています」

 高品質な製品を、必要なときに確実に届ける――なるほど、全国21の全物流拠点に非常用発電設備を配備しているのはそのためなのだった。

バックナンバー
ザ・プロジェクト一覧へ
関連記事

Special

-PR-

ピッキング作業をITで省力化=人員削減ではないという取組み―エフピコ [ 2/2 ] 広島県福山市に本社を置くエフピコが「攻めのIT経営銘柄」に選定されたのは、2015年・2016年と2年連続。2015年は最適な配送ルートと納品時間を管理・実現する「配車計画システム」「配送状況確認システム」、2016年はピッキング作業を効率化する「音声ピッキングシステム」が選定の対象となった。執行役員・情報システム部ジェネラルマネージャーの井上隆仁(たかみ)氏は「当社のITはコストを削減することが主眼ではありません」と言う。

PAGE TOP