[ザ・プロジェクト]

「足りないなら育てる」、SOMPOホールディングスが挑むデータサイエンティストの育成策

2017年4月6日(木)小山 健治(フリーランスジャーナリスト)

データに基づき意思決定を下したり新しいサービスを創出したりする−−。こうした経営に舵を切りたい一方で、データサイエンティストやデータアナリストといった人材の獲得が課題になっている。その課題に対し「必要な人材は自社で育成・採用する」ことを基本に、より能動的な施策に打って出たのがSOMPOホールディングスグループだ。同社のチーフ・データサイエンティストである中林 紀彦 氏が「データマネジメント2017」(主催:日本データマネジメント・コンソーシアム=JDMC)に登壇し、実践的なデータサイエンティスト組織の作り方や人材育成についての考え方を解説した。

 例えば、食生活の乱れなどで「6カ月後に生活習慣病予備軍になる可能性が80%」と予測されたなら、その人に適したトレーニングメニューを作成し、予定表の空き時間に自動的にメニュー登録していく。健康状況の予測と最近の飲食傾向などからは食事の改善メニューを生成。冷蔵庫にある食材とスーパーの特売情報からメニューを絞り込み、スマートフォンにレシピのレコメンドと買い物リストを送信する。

 「単にデータを蓄積して可視化するだけでは付加価値は高められない。私たちは“一人ひとりのお客様”に向けて究極のドリルダウンを実施した状態で将来を予測したレコメンドを指向している。そうしたデータ分析の高度化こそが競争力の源泉になる」と中林氏は強調する。

世界中の企業がAI人材を奪い合っている

 ただ、同社が推進するデータ戦略にも課題がないわけではない。最大のボトルネックになっているのが人材だ。中林氏によれば、世界では今、データ活用を主導できる人材、特にAI(人工知能)にも精通している人材が不足している。GoogleやFacebook、Amazon.comといった米国の大手IT企業は言うまでもなく、製造や金融、サービスなど、あらゆる業界の大企業が躍起になってAI人材を奪い合っているのだ。急速な実用化のスピードに大学や研究所での人材育成が追いつかず、企業ニーズに十分に応えられていない。

 中林氏は、AI研究の第一人者として知られる東京大学の松尾 豊 准教授による「肌感覚では世界で数万人規模のAI人材が不足している」という指摘を引き合いに出しながら、「SOMPOホールディングスグループでも、データ活用による知見を事業に実装するための人材が不足している事情は全く同じだ」と明かす。

 SOMPOホールディングスグループのデータサイエンティスト・チームは、大きく3階層からなるグループ横断組織として編成されている。(1)データ戦略の立案と実行およびデータサイエンス・チームの組成、人材採用・育成にあたる「チーフ・データサイエンティスト(ホールディングス)」、(2)各専門分野(画像、音声、自然言語、行動)に特化した知見により複数の事業部門をまたいだテーマを主導する「シニア・データサイエンティスト(ホールディングス)」、(3)ビジネスドメインの知見に基づき事業現場でのデータ分析をリードしてオペレーションに組み込む「データサイエンティスト(事業会社)」である(図3)。

図3:SOMPOホールディングスのデータサイエンティスト・チームの組織階層(中林氏の講演資料より)図3:SOMPOホールディングスのデータサイエンティスト・チームの組織階層(中林氏の講演資料より)
拡大画像表示

 グループのコアになる精鋭部隊だけに、ビジネスとデータサイエンスの両方を理解した人材が求められる。結果、マンパワーの不足もさることながら、単純に頭数を揃えただけでは何ともならないところに、この課題解決の難しさがあるわけだ。

実データを使った実習にも取り組むBOOTCAMPを開始

 そこでSOMPOホールディングスグループでは、「必要な人材を自社で育成して採用する」ことを基本方針に打ち出した。それ沿って「第1回データサイエンティスト特別養成コース『Data Science BOOTCAMP』」を2017年4月に開講。AIやデータサイエンスに高い関心と素養を持つ人材を社内外から広く募集した。

バックナンバー
ザ・プロジェクト一覧へ
関連記事

「足りないなら育てる」、SOMPOホールディングスが挑むデータサイエンティストの育成策 [ 2/3 ] データに基づき意思決定を下したり新しいサービスを創出したりする−−。こうした経営に舵を切りたい一方で、データサイエンティストやデータアナリストといった人材の獲得が課題になっている。その課題に対し「必要な人材は自社で育成・採用する」ことを基本に、より能動的な施策に打って出たのがSOMPOホールディングスグループだ。同社のチーフ・データサイエンティストである中林 紀彦 氏が「データマネジメント2017」(主催:日本データマネジメント・コンソーシアム=JDMC)に登壇し、実践的なデータサイエンティスト組織の作り方や人材育成についての考え方を解説した。

PAGE TOP