[市場動向]

顧客のトランスフォーメーションをパートナーと共に支援-AWSジャパン、新パートナー戦略を発表

2017年4月10日(月)五味 明子(ITジャーナリスト)

アマゾン ウェブ サービス ジャパン(以下、AWSジャパン)は2017年4月7日、2017年度の国内パートナー戦略を発表した。2017年4月時点で国内APN(Amazon Partner Network)パートナーの数はコンサルティング(SI)パートナー170社、テクノロジ(ISV)パートナー236社となっており、昨年から85社の増加となっているが、AWSジャパン パートナーアライアンス本部 本部長 今野芳弘氏は「パートナーエコシステムはAWSにとって大切な競争力のひとつ。今後もAWSの対象市場の拡張とともにパートナーエコシステムの進化を促し、お客様に新たな価値を届けていく」と語り、パートナーエコシステムのさらなる拡張を目指す。

AWSジャパン パートナーアライアンス本部 本部長 今野芳弘氏

 今野氏は2017年度のパートナー戦略として「ITトランスフォーメーションとデジタルトランスフォーメーションという2つのトランスフォーメーションを加速させる」ことを掲げている。顧客のビジネスに2つの側面からトランスフォーメーションをもたらすために、AWSとパートナーが協力してAWSクラウドの導入を支援し、「顧客に"New Normal"を届けていく」という。

AWSのパートナービジョンにおけるテーマは2つのトランスフォーメーション。パートナーとともにクラウドというNew Normalでもって顧客にトランスフォーメーションを届けていくことをめざす
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 2つのトランスフォーメーションのうち、ITトランスフォーメーションは大規模なアダプション、もしくは移行領域のビジネス拡大を指しており、SAP ERPの大型案件などが中心となる。ここでのパートナー施策は、以下の通り。

  • エンタープライズシステムの移行構築能力の向上支援
  • パートナーとAWSの協業体制強化による移行促進
  • 大型案件につながるソリューション軸の強化
  • 顧客に真のクラウド活用を提案するためのトレーニング拡充

 特に注目すべきは大型案件へのフォーカスで、SAP ERPなどオンプレミスの基幹システムのクラウド移行や、Oracle Databaseなどの商用データベースからAmazon AuroraやAmazon RDSといったクラウドデータベースへの移行、さらには顧客のデータセンター全体または一部をAWSクラウドへ移行する案件などが中心となる。

 もう1つのデジタルトランスフォーメーションに関してのテーマは"イノベーション"で、AIやIoT、DevOpsといったトレンドを顧客のビジネスに取り込ませることが施策の中心となる。Amazon AIやAmazon Kinesis、AWS IoTなど最新のITトレンドに則したAWSのオファリングメニューの積極的な登用も含まれる。

  • AI関連サービスのパートナーを支援
  • サーバーレスアーキテクチャの普及/拡大
  • Amazon Rekognition、Amazon Lexなど新サービスの利用支援
  • 関連トレーニングの充実
  • IoTおよびDevOpsの拡大支援

 最新のITトレンドを活用して新たな価値を生み出すデジタルトランスフォーメーションは、UberやAirbnbの成功で世界的にも注目される動きとなっているが、日本企業にとっては苦手な領域でもある。とくにDevOpsの活用に関しては海外企業から大きく遅れを取っており、グローバル市場での競争力低下を危惧されていることから、この分野に強いパートナーの育成が早急に望まれるところだ。

パートナープログラムを時宜に沿って変更する

 AWSジャパンは今回、パートナープログラムに関する3つのアップデートを発表している。

パートナープログラムの基本はTierによる差別化。コンサルティングパートナーもテクノロジパートナーも厳格な基準で運用されている。最上位のプレミアパートナーは国内では7社のみ
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 1つめは「パートナーの差異化プログラムの充実」だ。AWSジャパンはもともとAPNプログラムのTier(プレミア、アドバンスド、スタンダード、レジスタード)によるパートナー差異化を行ってきたが、そのほかにもパートナー各社の得意分野による世界共通の選択基準を用意している。従来、この選択基準には各種のAWSサービスにセキュアな安定運用の付加価値を提供できる「MSP(運用サービス提供者)プログラム」と、専門技術者分野や特的市場分野に秀でた「AWSコンピテンシープログラム」という2つのプログラムがあったが、新たに特定のAWSのサービス/製品の顧客事例を複数もち、一定の実績があるパートナーを認定する「AWSサービスデリバリープログラム」が加わる。

代表的な国内パートナー企業のMSPおよびコンピテンシー取得状況。プレミアパートナー7社はすべてMSP取得ずみ。IoTコンピテンシーにはソラコムが唯一の日本企業として認定されている
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新たに加わったサービスデリバリープログラムの内容。AuroraやKinesis、Redshiftなど、特定のサービスに関する専門知識やスキル、経験が求められる
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国内企業のサービスデリバリプログラムの取得状況。AuroraやPostgreSQLなどデータベース関連の案件が増えている状況を反映している
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 2つめは「リセラープログラムのアップデート」だ。顧客から非常に要望の多かったアップデートで、これにより、リセラーとの契約において準拠法を日本法、管轄裁判所を東京地方裁判所に変更可能となった。これに伴い、顧客企業はリセラーを通してAWSとの契約を日本法に準拠することを選択できるようになる。

 3つめは「特定の業界規制が関係する案件の支援」だ。日本でも三菱東京UFJ銀行のAWS移行が大きなニュースになったが、AWSでは現在、金融および政府/公共系の案件が劇的に増加しており、これらを支援できるパートナーの育成に努めているが、規制がきびしい業界であるため、パートナーにも業界に特化した高いスキルと専門知識が求められる。2016年に最上位のプレミアコンサルティングパートナーの1社に認定されたNTTデータ(後述)は金融および政府/公共系の実績が豊富であるため、今後の活躍が期待されるところだ。

プレミアパートナーにNECとNTTデータが加わる

 AWSはパートナー企業をTierで格付けしているが、その中でもトップクラスの実績と経験、さらには多数の技術コンサルタントを抱えている企業のみが認定される最上位クラスのTierが「AWSプレミアコンサルティングパートナー」である。日本国内のAPN参加企業でプレミアパートナーは7社、このうち2016年11月に新たにプレミアパートナーに加わったのがNECとNTTデータだ。会見には両社の担当者も出席し、パートナーとしてAWSビジネスにかける意気込みを示している。

◆NEC SI・サービス市場開発本部 エグゼクティブエキスパート 川井俊弥氏

NEC SI・サービス市場開発本部 エグゼクティブエキスパート 川井俊弥氏

 NECは2012年からAWS案件を手がけてきたが、2016年11月にMSPを取得しプレミアパートナーに昇格することができた。現在、顧客企業の投資はSoRからSoEへと移行しつつある。顧客のグローバル化やデジタルトランスフォーメーションを推進シていく上でも、AWS自身の圧倒的なイノベーションのスピードは、NECとしても学ぶところが多く、現在は「AWSとビジネスをする」ということを体系的に理解し、学んでいる途上にある。今後の事業目標は2年間で120億円だが、その数字はファーストステップであり、もっと拡大していくつもり。ソリューションアーキテクトは現在200名いるが、そこからさらに50名を厳選して、ソリューションアーキテクトプロフェッショナルを育成していく。

◆NTTデータ ビジネスソリューション事業本部 データセンタ&クラウドサービス事業部長 濱口雅史氏

NTTデータ ビジネスソリューション事業本部 データセンタ&クラウドサービス事業部長 濱口雅史氏

 NTTデータは2012年から法人顧客に対してミッションクリティカルなシステムにAWSを活用して提供してきた。手がけたインスタンス数は10万を超える。また、NTTデータのソリューション基盤としてもAWSを活用している。NTTデータのAWS案件の中心はラージエンタープライズで、最近は金融、政府/公共系が増えている。単なるITインフラではなく、ビジネスプラットフォームとして位置づけられるAWSを活用した、最適な次世代エコシステムをAWSとともに提供していきたい。

◇ ◇ ◇

 AWSのパートナー認定基準は非常に厳しく、最上位のプレミアコンサルティングパートナーに至っては、5年連続で獲得している国内企業はNRIとcloudpack(アイレット)の2社のみである。NECの川井氏は「プレミアパートナーになるための監査項目が非常に多く、またAWSのビジネスのスピードが早すぎて、最初は追いつくのにかなり苦労した」と振り返っていたが、おそらく既存のSIer文化とはまったく異なるAWSクラウドのビジネスはNECのような大手SIerにとってもキャッチアップが大変な世界だったことは想像できる。

 国内企業のクラウド移行が進まない理由の1つとして「パートナー不足」が挙げられることは多い。だがクラウドの知識をもたないパートナーに任せると、クラウド移行は高い確率で失敗する。そしてAWSもパートナー選択の重要性を認識しているからこそ、パートナープログラム運用の基準を緩めることはない。AWSが掲げる顧客のトランスフォーメーション支援を実現するには、パートナー企業自身のトランスフォーメーションが先に必要であることは間違いない。

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