[松岡功が選ぶ“見逃せない”ニュース]

2017年4月の3本:経産省とコンビニ5社が「コンビニ電子タグ1000億枚宣言」/日本オラクルと新日鉄住金ソリューションズがクラウド事業で協業/日本企業のAI導入率は1.8%

2017年5月9日(火)松岡 功(ジャーナリスト)

2017年4月のニュースから松岡功が選んだのは、「経産省とコンビニ5社が『コンビニ電子タグ1000億枚宣言』」「日本オラクルと新日鉄住金ソリューションズがクラウド事業で協業」「日本企業のAI導入率は1.8% ――MM総研調査」の3本である。“見逃せない”理由と共に、それぞれのニュースのポイントをお伝えする。

経産省とコンビニ5社が「コンビニ電子タグ1000億枚宣言」

 経済産業省と大手コンビニエンスストア5社が2017年4月18日、2025年までにコンビニで取り扱う全商品にRFID技術を使った電子タグをつけることで合意したと発表した。

 経産省主導で策定した「コンビニ電子タグ1000億枚宣言」に5社が合意したもので、コンビニにおけるレジ・棚卸し業務の効率化や従業員の負担軽減、さらには販売情報などをメーカーや物流業者と共有してサプライチェーンを最適化する仕組み作りを目指す構えだ。

 セブン-イレブン、ファミリーマート、ローソン、ミニストップ、ニューデイズで取り扱う全商品が対象で、使用する電子タグは年間約1000億個の見込み。食品メーカーなどが、これを商品につけて出荷するのが前提となる。2018年をめどにコンビニ各社が特定の地域で実験を始め、課題を洗い出していく方針だ(表1)。

表1:「コンビニ電子タグ1000億枚宣言」の内容(出典:経済産業省)
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[選定理由]

 経産省と大手コンビニがこうした取り組みに本格的に乗り出したことで、小売業およびそのサプライチェーンが抱える課題の解決に向けて大きく前進すると考えるからだ。

 小売業は少子化の影響を受け、人手不足と労務コストの上昇に直面している。また、大量生産、多頻度配送を通じて物流体制が高度に効率化されているものの、サプライチェーン全体としては食品ロスや返品といったさまざまな課題が生じており、現場スタッフの負担増や運営コストの増大を招いている。

 電子タグを利用すれば、レジ・検品・棚卸し業務の効率化をはじめ、防犯ゲートを用いた万引き防止、消費期限管理の効率化による食品ロス削減など、さまざまな波及効果が期待できる。さらに、電子タグによる情報をサプライチェーン上で共有すれば、製造・物流・卸・小売の垣根を越えたムダの削減を図ることができるようになる。

 ただ、「コンビニ電子タグ1000億枚宣言」の留保条件にも記されているように、電子タグそのものの低廉化をはじめ、読み取り精度の向上などの技術的ハードルをクリアする必要がある。また、メーカーが商品に電子タグをつけることになるが、その費用負担についても取り決めが必要になる。

 こうした課題を乗り越え、かつてPOSシステムを作り上げてきた小売業界が、今回の取り組みでどのような先進的なIoT(Internet of Things)の仕組みを実現するか。この動きは他の産業へも大きな影響を及ぼすものになりそうだ。

日本オラクルと新日鉄住金ソリューションズがクラウド事業で協業

写真1:協業発表会で握手する日本オラクルの石積尚幸執行役副社長クラウド・テクノロジー統括と新日鉄住金ソリューションズの大城卓取締役常務執行役員ITインフラソリューション事業本部長

 日本オラクルと新日鉄住金ソリューションズ(NSSOL)が2017年4月25日、クラウド事業で協業することを発表した。NSSOLがマネージドクラウドサービス「absonne(アブソンヌ)」の新たなサービスとしてオラクルのクラウドサービス「Oracle Cloud」を加え、自社のデータセンターから提供を開始する(写真1)。

 NSSOLは自社のデータセンターに設置したOracle Cloud環境についても、absonneに適用している運用サービス「emerald(エメラルド)」によって包括的な運用を行えるにする。また、顧客のデータセンターへの導入にも対応する。

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