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富士通が「共創のためのサービス体系」を強化、これまでの実践ノウハウを活かす

2017年5月12日(金)川上 潤司(IT Leaders編集部)

富士通は2017年5月11日、「共創のためのサービス体系」の強化を発表した。最先端の情報収集や実状把握、PoC(新しい技術や概念の実証)の早期実践、などを支援するメニューを拡充したのが骨子。顧客と一丸となってビジネス価値を創り出す専任人材の育成計画にも言及があった。

 AIやIoT、3Dプリンタなど、ビジネスに多大なインパクトを与え得る技術の進化は加速するばかり。うかうかしていると、斬新な事業モデルを引っさげたプレイヤーに市場を根こそぎ奪われ兼ねない。何か行動を起こさない限り、明るい未来は開けない──。かつては、いささか大げさに聞こえた話が、年を追うごとにリアリティを増している。

 ここにきて、“デジタル”を前提とした変革がマストとの認識は急送に広がっているようだが、多くの企業にとっての悩みは、そもそも何から始めればよいのか、どこを見据えてどんな体制で臨めばよいのか、といった知識や経験が圧倒的に不足していることだ。オープンイノベーション、リーンスタートアップ、PoC/PoB…。さまざまなキーワードは聞こえてくるも、具体的アクションへの足がかりがつかめないといった声は少なくない。

 そうした企業の一助になるべく、ここ数年で次々と手を打ってきたのが富士通だ。2016年5月には、顧客と共にビジネスのアイデアを醸成し、具体的な事業やサービスに結び付けていく一連の取り組みを「共創のためのサービス体系」としてまとめて各種メニューの提供を開始。東京・蒲田の富士通ソリューションスクエア内に解説した「FUJITSU Knowledge Integration Base PLY」など、ハッカソンやアイデアソン、ワークショップを実施する“場”作りにも並行して注力してきた。今年に入って、顧客との共創をミッションとする組織体制として、「デジタルフロントビジネスグループ」を新設したのも記憶に新しい。

執行役員常務 デジタルフロントビジネスグループ長 宮田一雄氏

 「顧客が定めた仕様に沿って、インフラやアプリケーションをしっかり作り込むという従来ながらのビジネスにしがみつくベンダーは早晩見捨てられるだろう。“デジタルジャーニー”、すなわち先々が見通せず一筋縄ではいかないチャレンジの旅路を一緒に歩み、一緒に道を切り拓いていく存在になるために、『共創のためのサービス体系』の強化・拡充に全力を注いでいる。根底にあるのは、富士通自身が今までのままだと破壊されるという危機感だ」──。プレス向け説明会の冒頭、執行役員常務でデジタルフロントビジネスグループの陣頭指揮を執る宮田一雄氏はこう強調した。

 同氏は続けて、独自の動画検索技術がプロ野球選手のパフォーマンスを改善するサービスに結実した事例や、極寒厳しいフィンランドのガソリンスタンドにおける給油や決済の煩わしさをモバイルアプリで一掃した事例などを挙げながら、共創の取り組みが着実に前進していることを説明。幾多の経験を通して得られる知見や顧客からの要望といったものを常にサービス体系にフィードバックしており、今回の強化もその一環であるとした。

共創プロジェクトの実践ノウハウを活かす

 共創のためのサービス体系の大まかなフレームワークとしては、(1) テーマを定める「情報収集・問題発見」、(2) 事業価値を生むための発想を拡げる「アイデア創出」、(3) 実働する仕組みを整え市場の反応を確かめる「サービスの実装」の3フェーズを素早く繰り返すことを基本に据えている。今回のエンハンスは、各フェーズの実効性をさらに高めるためのものだ。

 まず「情報収集・問題発見」において、グローバルでのリサーチプログラムを新設した。以下の3つから構成する。

  • 現地視察:米国をはじめ「テクノロジー×ビジネス」の最前線を視察し、今後の取り組みの足がかりとなる情報を集中的にインプット。新進気鋭のスタートアップや先駆的ユーザーへの訪問、キーパーソンとの議論、専門家によるレクチャーなどをアテンドする。
  • 調査支援:顧客が海外視察の都合がつかなかったり、時期尚早と判断したりした場合などに、富士通グループの専門家がサーベイをした上でレポートする。当該テーマに関わる業界やテクノロジーの動向、先進事例に見られるビジネスモデルなど、個別の要請に応える。
  • デジタルビジネス研修:顧客企業において変革の前線に立つ人材を育成するプログラム。デジタルビジネスに関わる体系的な知識やスキルを身に付けることに主眼を置く。当初は「デジタル戦略」「デザイン思考」「AI・アナリティクス」「セキュリティ」に照準を当てる。

 まだ世の中に存在せず競争優位性を備えた斬新なアイデアは、そうそう湧き出てくるものではない。ここで重要となるのは、まずは“インプット”を増やす取り組みだ。今、起きていること、これから起きそうなこと、日常の業務の中ではなかなか触れる機会のない貴重な情報を貪欲に吸収するためのメニューに位置付けられる。

 続く「アイデア創出」では、プロトタイプ開発支援を強化した。プロジェクトでの発案をすぐに形にし“動くもの”として検証するサイクルを加速するのが狙いだ。これまでの共創案件で蓄積したノウハウに基づき、具体的な手順や手法を整理。2週間で3回のユーザー評価を得るサイクルを実践する(図1)。

図1 約2週間で3回のユーザー評価を得るスピード感でPoCを回す
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デジタルフロント事業本部長代理 柴崎辰彦氏

 デジタルフロント事業本部長代理の柴崎辰彦氏は「デジタルジャーニーは試行錯誤の連続であり、前進することもあれば、時には引き返してルートを変更することも強いられる。ここで大事になるのは、素早く作り、素早く試すこと。共創の一連の取り組みの中で数多くのアイデアソン/ハッカソン、プロトタイピングをこなしてきており、弊社なりに勘所がつかめてきた。そのノウハウを共創のためのサービス体系に凝縮した」と説明する。

 前述の3つのフェーズを何度も回すことで「これで行けそうだ」というコンセプトができあがったとしても、商用ベースに持ち込むにはまだ壁が存在する。システムの安定性、使い勝手、バックエンドのシステムとの連携…さまざまな面で、エンタープライズグレードの品質が欠かせないからだ。

 「サービスの実装」の最終局面で必要となる品質確保についても富士通は支援プログラムを用意する(図2)。実ビジネスとしての要件や機能の抽出、品質強化の具体的手法の策定、システム部門と連携したプロジェクト管理といったタスクを全面的にに支援するものだ。「ここでは、業務システムの構築・インテグレーションや、事業部門と情報システム部門との円滑な連携など、当社が従来から手掛けてきた領域の強みが活きる」(柴崎氏)。

図2 PoCから商用サービスに移行する際の“キャズム”を埋める
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 説明会では、共創の「実践の場」の拡充についても言及があった。中核となるのは前述の「PLY」である。そのほか、みなとみらいInnovation & Future Center、CO☆PITなど同様の施設を開設してきており、この4月には富士通九州システムサービスが福岡市のオフィス内に「Qube」をオープンさせた。IoTやAI、ロボットなどのテクノロジーを核にビジネスへの適用を探る場となる。さらに2018年3月には大阪にもPLYを新規開設する予定であり、これにより各種のハッカソンやワークショップを開催する場は8拠点に拡大することとなる。

執行役員サービステクノロジー本部長 徳田正之氏

 執行役員サービステクノロジー本部長の徳田正之氏は「PLYについては、初年度の社内外の利用者の内部目標を1万人程度としていたが、実際にはのべ1万8000人に達した。170回を超えるワークショップ、180社以上の来場、50件以上の共創活動…どの数字を見ても思った以上の成果が表れている。ありそうでなかったオープンな場をさらに強化拡充し、顧客との共創活動を加速していきたい」と話す。

人材育成を含めできることに全力を尽くす

 デジタルビジネスの可能性を探り実践に結び付けていく場やサービス体系の整備はユーザーにとって歓迎すべき動きではあるが、問題となるのは、共創プロジェクトの陣頭指揮を執る人材の確保だ。富士通は、全体を統括するプロデューサー、ビジネスを形作るデザイナー、技術面でサポートするデベロッパーといった「デジタルイノベーター」をデジタルフロントビジネスグループに結集させ、年度内に200人、今後3年で1200人体制にすることを目標に掲げているものの、そのハードルは決して低いものではない。

 宮田常務はこう話す。「SE部隊を中心に適性を備えた人材を1200人集めてくるのは確かに一筋縄ではいかないと認識している。ただし、今後を見据えた際の危機感を当社の経営幹部も皆“腹おち”しており、教育プログラムや評価制度の整備も含めてトップダウンで進めていく。既に人選も始まっていて、まず7月には60~70人が加わり、その後も3カ月ごとに増やしていく。デジタルイノベーターの育成は私にとって最大のミッションだ」。

図3 今後3年でデジタルイノベーターを1200人までに増やす
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 初年度は人材への投資と割り切り、収益を上げていくのは2年目以降という。「収益の柱は2つある。共創プロジェクトにおけるコンサルティングの対価を頂くというのが一つ。成果物を当社としてSaaSなどのサービスに仕上げ、その利用料を頂くというのが二つ目だ。顧客と共に事業を立ち上げ、レベニューシェア型で折半していくという新しい試みも都度検討していく。ジャーニーを踏破した先には、必ず明るい未来があると信じて、できることに全力を尽くしていかなければならない」(宮田常務)。
 

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