[中国電脳事情]

【中国電脳事情セレクション】「クラウド成長3年行動計画」で世界的クラウドベンダーの輩出を狙う中国、ほか

2017年5月31日(水)足立 治男

中国メディア各社の報道から、IT関連の最新動向を紹介する「中国電脳事情」。1カ月間に報じられた主要なニュースから重要なものをピックアップしてお伝えする。

「クラウド成長3年行動計画」で世界的クラウドベンダーの輩出を狙う中国

―21世紀経済報道(2017年4月14日)

 中国でIT部門を司る工業・情報化省は2017年4月10日、クラウドに関する国家戦略「クラウド成長3年行動計画(2017-2019年)」を公表した。同計画では、クラウドを次世代情報産業の目玉とし、クラウドを各方面の設計、生産、市場などの資源と整合させ、川上/川下産業間における高効率な接続・協同やイノベーションを促進するというもの。中国が国家戦略として掲げる「製造強国」や「インターネット強国」の重要な駆動力と位置づけられている。

 同計画には、2019年までに中国資本のクラウドベンダーの国際競争力を顕著に増強させることで、世界市場で大きなシェアを有するグローバルなクラウドベンダーを最低でも2、3社輩出するとも記されている。

 成長目標の数字としては、2019年までに中国のクラウド産業の市場規模を4300億元に引き上げることが目指される。工業・情報化省の統計では、2015年における中国のクラウド産業の市場規模は1500億元なので、2015~2019年の年平均成長率(CAGR)は30%にも達するという数字だ。

 業界では新たな動きが起こっている。2016年末、中国のIT大手、CES信息発展(上海中信信息発展股フェン有限公司)が「Tencent Cloud(騰訊雲)」をSaaSの開発フォームおよびAPIとして使用するという発表がなされている。今後はテンセントと共同で行政機関や業界向けの情報化技術などのソリューションを提供するという。

 また、同じくIT大手の神州信息(神州数碼信息服務股フェン有限公司)は4月12日、新たな経営戦略の重点としてクラウドへの注力を表明した。同社の中国金融機関向けクラウドサービス「神州信息金融クラウド」は、すでに中国内260社以上の金融機関が利用している。このほか同社は、中国国税部門の委託を受けて、税務署のクラウド型管理フォームも構築している。

Alibaba Cloudを猛追するTencent Cloud、米シリコンバレーのデータセンターが稼働開始

―新浪サイエンス(2017年4月27日)

 2017年4月25日、中国インターネット企業大手のテンセント(騰訊)が米シリコンバレーに設立したデータセンターが稼働を開始した。同社が運営するクラウドサービス(IaaS)「Tencent Cloud(騰訊雲)」が国内外で急成長しており、中国トップの「Alibaba Cloud(阿里雲)」との競争が激化している。

 テンセントには、今後もフランクフルト、ムンバイ、ソウル、モスクワといった世界の各都市にデータセンターを設置する計画がある。同社は海外展開を進める中国系企業や、中国に拠点を置く多国籍企業などを顧客として想定している。現在までに中国国内に十数か所のデータセンターを保有し、2014年から海外進出を進め始め、香港、シンガポール、トロントにデータセンターを設置している。

 2016年の「サービスとしての中国クラウドインフラ(Cloud Infrastructure as a Service)」市場規模は14.7億米ドルに達しており、前年比68%の成長となった。シェアはアリババクラウドが40%で首位なのに対し、外資勢で最大の競争相手である米マイクロソフトのシェアは5%にとどまっているという。

新華社とアリババが合弁会社を設立、「新華ネット」を強化へ

―新浪総合(2017年4月12日)

 中国2大通信社の1つ、新華社が運営するニュースポータルサイト「新華ネット」は2017年4月11日、傘下企業とアリババグループ系列のベンチャー企業と共同で合弁会社を設立する予定を明らかにした。

 公示によると、新華ネット、同社傘下の新媒文化社、中国経済情報社は、アリババグループ傘下の杭州アリババベンチャー投資会社および同社の有限責任パートナー(LP)である杭州数問雲投資会社と共同で、新華智聯科学技術公司を設立するという。資本金は4億9000元で、新華ネットが2億元を出資して40.8%の株主持分を保有する。

 この合弁会社は、ストレージ、生産、配信、計算など新華ネットの運営全般にかかる独占的技術の研究開発を行う。モバイル、SNS、スマート系の技術フォームを構築し、伝統的産業と新メディアとの融合を促していくとしている。

 新華ネットの担当者は次のようにコメントした。「アリババはビックデータやクラウドの領域でインターネット業界のリーディングカンパニーとしての地位を築いている。同社が保有する新しいメディア技術やデータ処理能力は中国最先端で、人材や経験も豊富。ゆえに、両社が提携する意義はとても大きい」

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