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[インタビュー]

電子領収書のスマホ対応を実現―電子帳簿保存法の規制改革に挑む

コンカー

2017年9月12日(火)杉田 悟(IT Leaders編集部)

2005年、e文書法が施行され、領収書などの保存文書の紙から電子への道程が引かれた。しかし、意外に厳しいルールに意思を折られ、実際に保存文書の電子化に踏み切る企業はごく一部に限られた。2015年、2016年と相次いで電子帳簿保存法に規制緩和が図られたことにより、ようやく電子化が本格化してきた。この規制緩和の流れを強力に推進してきた企業のひとつにコンカーがある。同社は1社でも多くの企業がペーパーレス化を実現できるよう、2017年8月には「領収書電子化 完全ガイド」の提供を開始している。三村真宗社長に、規制緩和への取組み、コンカーがペーパーレス化に果たす役割を聞いた。

3万円ルールとスキャナ保存

(写真1)領収書電子化完全ガイド

 コンカーが「領収書電子化完全ガイド」を公開したのは、電子帳簿保存法の改訂を受けて可能となった「領収書の電子化」を一気に普及させるためだ。日本文書情報マネジメント協会(JIIMA)などを通じて電子帳簿保存法の規制緩和に取り組んできたコンカーの、ひとつの集大成といえる。

 電子帳簿保存法の規制緩和の流れをおさらいしておく。1998年に施行された「電子帳簿保存法」は、会計帳簿や国税関係書類を電子保存するための方法を定めたもので、企業への財務会計システムなどの普及を受けて制定されている。正式名称は「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」で、これにより、事前に税務署に申請し、承認を受けておけば、紙の書類に代わって財務・税務システムで作成した電子データをデータベースで保存すれば良いようになった。

 当時、個人情報保護法の施行に紛れてあまり注目されることのなかった「e-文書法」は、2005年4月に施行されている。「民間事業者が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律」および「民間事業者が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」を総称したものだ。

(写真1)コンカー 三村真宗氏

 商法や税法など、法律で保存が義務付けられているほとんどの文書について、一定の条件下において電子化されたファイルでの保存を認めたもので、電子帳簿保存法ではもともとITシステムで作成した電子データが対象だったのに対し、e-文書法では領収書や契約書などもともと紙で作成された文書が対象となった。紙の文書をスキャナで電子化して保存できるようになった。

 法律で義務付けられている文書については、企業は7年間保存する義務がある。そのため、大企業ともなると大量の文書が詰め込まれたダンボールが、巨大な倉庫などに山積みとなっている。これを電子化して保存することで、文書保存にかかる手間やコストを削減しようというものだ。

 このe-文書法の施行を受けて電子帳簿保存法も2005年に一部改訂された。領収書や契約書についてもe-文書法同様、電子データで保存しても良いことになったのだ。これらはもともと紙の文書であることがほとんどなので、スキャニングして電子イメージとして保存(スキャナ保存)できるようになった。

 これでスキャナ保存を採用する企業が一気に増えるかと思われたが、改訂された2005年から2015年までの11年間で、税務署から電子帳簿保存法の承認を受けた企業数は、わずか152件に止まった。三村氏はその理由について「制度面とシステム開発面の双方に課題があったから」だと指摘している。

(図1)電子帳簿保存法の流れ
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 まず、制度面で最大の障害となったのが、対象となる契約書および領収書の額面が3万円未満に限られていたこと。3万円以上と未満で手続きが二重化してしまうので、メリットが薄れる。また、スキャナ保存のためにスキャニングする端末が、架台付きのスキャナーに定められていたことも、利用者にとっては足枷となった。

 システム面では、既存の経費管理システムをスキャナーと連携されるための開発が必要になること、改ざん防止のために電子署名とタイムスタンプが義務付けられていること、電子領収書を保管するために画像管理システムが必要になることの3点があげられる。領収書の電子化に対応するには、追加の改修コストが意外とかかるのだ。

 制度面での規制緩和はまず、2015年に行われた。最大の課題とされた3万円ルールを取り払った。承認件数は改訂から1年で233件。11年間の累計である152件を1年で大きく上回った。ただ、日本の企業数からして、合計380件あまりという数字は決して普及しているとはいえない数字だ。

 コンカーの三村氏は、「電子化端末の拡大、すなわち最も身近な端末であるスマートフォンが領収書の電子化に使用できるようにならないと、電子領収書の本当の普及は難しい」と考え、JIIMAなど国内の関連団体と協力して規制緩和を政府などに働きかけることにした。

 外資系ベンダーであるコンカーの三村氏がなぜ熱意を持ってスマートフォンでの領収書電子化に取り組んだのか。その一因となるエピソードがある。

 コンカーは本社を米ワシントン州に本社を置く、世界2位のSaaSベンダー。三村氏が米国本社を訪れた際に、大変ショックを受けた出来事があったという。

 本社では、多くの米国企業がそうであるように、ビルの1階にあるスターバックスで打ち合わせを行うのが慣例となっている。三村氏が訪れた日も、本社のエグゼクティブたちとスターバックスで打ち合わせを行った。打ち合わせを終えると、ひとりの社員がレジでまとめて支払いを済ませ、領収書を受け取っていた。

 「領収書が必要なのは日本も米国も変わりないようだ」と考えながら見ていると、領収書を受け取ったその社員、スマートフォンで領収書の写真をパシャリと撮ると、その場で領収書をゴミ箱に捨ててしまった。三村氏が驚いていると「今どき、紙の領収書で財布を膨らませているビジネスマンはいないよ」といわれたという。米国の法律では、紙の領収書の代わりにスマートフォンで撮影した領収書の写真でも申請が行えるからだ。「日本でもこんなスマートな日常が送れたら」と思ったのが、日本で電子帳簿保存法の規制緩和に挑むきっかけになったという。

 これで奮起した三村氏らの働きかけが実を結び、3万円ルールが撤廃された翌2016年に、電子化端末の規制緩和が行われた。架台付きのスキャナだけでなく、ハンディスキャナーによるスキャナ保存が認めれたほか、デジタルカメラやスマートフォンで撮影した写真データでも、サインを書き込むなどルールに則っていれば認められるようになった。これで規制面での課題はほぼクリアできたことになった。

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