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エンタープライズ2.0の可能性と具体的事例

2007年12月14日(金)

本稿ではNEC社内におけるエンタープライズ2.0への取り組みと、失敗の経験から得られた導入成功の秘訣について紹介する。

エンタープライズ2.0の考えとツール群

エンタープライズ2.0には一般的と呼べるような定義はまだないが、弊社では「ウェブ2.0のモデル/技術を企業内に適用し、社内外の膨大な情報を活用し企業力を高めるもの」と定義している。

この「企業内での利用」ということを踏まえたうえで、活用できるウェブ2.0のコンセプトに「集合知」が挙げられる。さらに集合知は、「企業と顧客をつなぐマーケティング」と「企業内や企業間をつなぐコミュニケーション」という2つの側面に分けることができる。この集合知は、ブログ、SNS、Wiki、ソーシャルブックマーク、IM(インスタントメッセンジャー)、RSS、検索などのテクノロジーで実現することができる。企業に活用可能なウェブ2.0のコンセプトとしてもう1つ挙げられるのが、「システム連携」である。このシステム連携は、マッシュアップが重要なテクノロジーで、ウェブAPI、Ajaxなどもこの範疇に属する。

こうしたエンタープライズ2.0系のツールの中でも、「三種の神器」と呼べるほど重要なのが、ブログ、SNS、Wikiの3つである。これらはいずれも「コミュニケーションの場を簡単に提供する」ためのツールで、従来のメールやメーリングリストで行われてきたコミュニケーションとは異なり、経緯も含めた形で情報を蓄積していくことで情報のコントロールを可能にする。以前に、社内ウェブサイトを使ってプロジェクト管理を行うという手法がもてはやされたこともあったが、有用なウェブサイト構築にはスキルが必要される一方、これらのツールはCGM(Consumer Generated Media)の利点を活かしながら情報発信できるので使い勝手が良い。

適切なツール選びが導入成功のカギ

しかし、似ているところがあるにせよ、これらのツールはそれぞれ本来の開発目的が異なるため、目的に合っていないツールを導入しても成功はおぼつかない。ブログは、連絡/通知したい情報の発信/共有に利用すべきツールで、時系列に情報が蓄積されるため状況や経緯を把握しやすいという特長を持っている。一方、SNSはコミュニケーションの活性化に利用すべきツールで、企業内の組織を越えた人中心の人脈を作るのに適している。また、Wikiは複数のメンバーで文書作成するのに利用すべきツールで、バージョン管理が行えるのでソフトウェア、マニュアル、仕様書などの作成に向いている。こうした各ツールの特徴を把握したうえで、目的に合ったツールを選択することが大切となる。

また、ツールの選択だけでなく、そのツールが自社のワークスタイルとなじむのかどうかについても検討が必要になる。たとえば、昨今ではブログやSNSを導入しようとしている企業は少なくないが、そもそもそうしたツールの特徴である部門間を越えたプロジェクトが必要となるワークスタイルが自社にあるのか、またそれらの自然発生的なプロジェクトを正式な仕事のプロジェクトとして認定できるような企業風土なのかという点も重要にある。そうでない企業にブログやSNSといったツールだけを導入しても、単なる連絡ツールとして利用されるだけとなり十分な効果を発揮することはできない。

社内事例1~Wikiによるユーザー参加型の開発

弊社の開発スタイルは、開発部門がユーザーからニーズを聞き、仕様を決めて、コーディングして、デバッグするという流れが一般的である。しかし、弊社が現在開発している社内用の検索エンジンでは、こうした従来の開発スタイルとは異なる、Wikiを利用したユーザー参加型で開発を進めている。

このような選択をした背景には、Yahoo!やGoogleのようなインターネット用の検索エンジンとは性格が異なり、企業内の検索エンジンはグループウェアや部門ファイルサーバー、極端には各社員のPC内にある情報も検索対象とする必要があったため、多くのユーザーの声を採り入れながら開発を進めたいと考えたからである。

この開発には600名ほどのメンバーが参加しており、Wiki上でディスカッションを行いながら仕様を決め、使い勝手などの感想や意見もすぐに書き込めるようになっており、開発工程にユーザーも加わるユーザー参加型の開発となっている。ユーザーも自分の意見が採り入れられて実装されたりすると、「いっしょに作り上げた」という気持ちが出てきて愛着がわくようになるといった効果が見られる。このような開発スタイルを選択したことにより、非常に使い勝手の良い検索エンジンを開発できたと自負しており、近いうちに製品として外販する予定にしている。

社内事例2~社内ブログ「イノベーションカフェ」

また、弊社では「イノベーションカフェ」と呼ばれる、SNSと似た社内ブログを立ち上げている。当初はルールを設けず自由に利用できるような運用としていたのだが、トラブルが起こるようになったため、いったん停止してルールを策定してから再開し、現在は1日のアクセス数が700人程度、1日の書き込み数が150件と、グループ内のコミュニケーションに活用されている。

導入に失敗する5つの理由

弊社の経験をふまえ、筆者はエンタープライズ2.0の導入の失敗には、次のようなケースがあると考えている。

  • 今流行っているからやってみようという場当たり的な対応
  • 増えた情報をさばく仕組みや、成果につなげる仕組みが欠如
  • 発信型のコミュニケーションが主体で個人のモチベーションに依存→陳腐化
  • 個人日記などの発信により、情報統制がとれなくなった
  • 既存システムとの共存で、逆に社員の負荷が増大した

いずれも表面的な部分しか考えず導入した際に起こる失敗であり、真に導入効果を発揮するためにはエンタープライズ2.0系ツールの本質を理解することが重要となることを留意してほしい。

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