[技術解説]

企業コンピューティング、いざ仮想化へ、製品選びから運用まで

早わかり、仮想化のすべて Part2

2008年10月17日(金)IT Leaders編集部

仮想化の対象領域はPCからサーバー、ストレージ、ネットワークまで幅広い。それだけに、仮想化に取り組む企業にとって押さえておきたいポイントは多い。何を基準に製品を選んだら良いのか。そもそもどのような製品があるのか。コスト増につながる要素は潜んでいないのか。見逃せない製品・サービスの動向や、運用で留意すべきポイントを明らかにする。

選択肢が急拡大する仮想化製品群

編集部

仮想化製品のうち、特にベンダー間の競争が激しく、急速に機能が充実してきているのがサーバーの仮想化ソフトである。著名なベンダーだけでなく、知る人ぞ知るベンダーも今年に入って新機能を搭載した製品を発表しており、ユーザー企業の選択肢は数年前に比べて格段に増えている。

大手ではマイクロソフトが2008年7月9日に「Windows Server 2008 Hyper-V」の出荷を始めた(表2-1)。Hyper-Vはネットワーク・カードやハードディスクのドライバ・ソフトを1つの仮想サーバーに集約して、ほかの仮想サーバーがそれを共有するアーキテクチャになっている。いったん仮想環境を構築してしまえば、仮想サーバーの追加が比較的しやすくなる。ゲストOSの種類はWindowsとノベルのLinuxディストリビューション「SUSE Linux Enterprise Server(SLES)10」に限られるが、各OS用のドライバはネイティブで動作するため性能劣化が少ないのが利点だ。WindowsかSLES10をゲストOSとするなら使いやすいだろう。

画像:表2-1 画像:表2-1

SLES10自体もオープンソースの仮想化機能「Xen」をベースにした仮想化ソフトを備えている。マイクロソフトとノベルは製品の相互運用強化の面で提携しており、WindowsをゲストOSとする仮想サーバーをSLES10上で動かす際の性能に工夫を施す見通しだ。

シトリックス・システムズ・ジャパンも「Xen」を基に開発したサーバー仮想化ソフト「Citrix XenServer 4.1」を6月23日に発表した。仮想化市場をけん引してきたヴイエムウェアの「VMware Infrastructure 3」と同様に、複数のサーバー間で仮想サーバーを移行する機能を備える。必要に応じて仮想サーバーを追加するプロビジョニング機能もある。

サーバー以外の分野でも選択肢拡大

ネットワークの分野では以前から、シスコシステムズやアライドテレシス、ノーテルネットワークスが複数台のスイッチを1台に見せるなどの仮想化機能を備えるスイッチ製品を販売している(表2-2)。そこに加わる形で最近、特徴ある製品が出てきた。

画像:表2-2

米ブレード・ネットワーク・テクノロジーズは6月30日、独自の仮想化機能を搭載した1Uサイズのラックマウント型スイッチを発売した。ラックに搭載する複数台のスイッチを1台の仮想スイッチとして動かす。サーバーを追加する際に仮想スイッチに対してネットワークの設定をすれば、個々のスイッチを設定する手間が省ける。同社は従来、米IBMや米ヒューレット・パッカード(HP)へのOEM提供に専念してきたが、ネットワーク仮想化の需要を見込んで自社ブランドでの販売に踏み切った。

ストレージにおいては、仮想化製品の裾野が広がりつつある。EMCジャパンは8月6日、独自開発の仮想化機能「仮想プロビジョニング」を備えた中規模向けストレージ装置を発表した。

複数のシステムで共有するストレージ装置は通常、個々のシステムが将来必要になるディスク容量を計算して、あらかじめ十分なディスク・ドライブを搭載しておく。そのため、どうしても初期投資が膨らんでしまう。導入後、発生するデータ量はシステムごとにバラつくので、一部のディスクはいっぱいなのにほかのディスクはガラガラという無駄な状況を生むこともある。

仮想プロビジョニングは複数台のディスクを1つの巨大なディスクと見なすことで、この問題を解決する。ストレージ装置を共有するシステムがそれぞれ、大容量の仮想ストレージを使っているかのように利用できる。個々のシステムが仮想ストレージに書き込むデータは、実際は物理ディスクに均等に書き込まれるのでディスク・ドライブの使用率を平準化できる仕組みだ。

この機能は一般にシン・プロビジョニングと呼び、日立製作所やネットアップも類似機能を持つ製品を販売している。またデルは、米本社が2008年1月に買収した米イコールロジックの仮想化機能を搭載したストレージ装置を2月から販売している。

初期のハードルを下げる検証施設が続々

仮想化に取り組む際のハードルを引き下げる動きも活発になってきた。7月に入ってから国内の大手ベンダーが相次いで、仮想化製品の動作を検証したり実際に使ったりできる施設を開設したのだ(表2-3)。

画像:表2-3

直近ではデルが9月1日、「ソリューション・イノベーション・センター」を東京・三田にオープンした。同社のサーバーやストレージで構築した環境を使って、ヴイエムウェアやシトリックス、マイクロソフトのサーバー仮想化ソフトの動作を検証できる。

写真2-1
写真2-1 日本IBMの「IBMクラウド・コンピューティング・センター@Japan」の設備

8月1日には日本IBMが、「IBMクラウド・コンピューティング・センター@Japan」を東京・晴海に開設(写真2-1)。ユーザー企業は同センターで開かれる無料のワークショップに参加できるほか、有償でセンター内の設備を使って仮想化製品の検証を行える。

7月には日本HP、SAPジャパン、伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)、シマンテックがそれぞれ検証施設を開いた。CTCの「Competency Center for VMware」は名称の通りヴイエムウェア製品の導入を想定している。現時点では、シマンテックの「仮想化ソリューションラボ」もヴイエムウェア製品が対象だ。ユーザー企業はヴイエムウェア製品とシマンテックのバックアップ・ソフトなどを組み合わせた際の動作確認のために、無償で設備を利用できる。

SAPジャパンの「Co-Innovation Lab Tokyo」も仮想化ソフトとしてはヴイエムウェア製品が対象だ。7月16日のオープンに合わせて、ヴイエムウェア製品で仮想化したサーバーでERP(統合業務)パッケージのバージョンアップ作業を実施。ERPパッケージに付き物の複数サーバーをセットアップする手間や購入費用などを減らせることを確認した。さらに、システム開発で特にやっかいな問題である開発の手戻りも“効率よく”行えることが分かった(詳細はPART3「サーバー統合だけではない仮想化の魅力」を参照)。

仮想化の推進に積極的なベンダーが協力関係を築く動きも目立ってきた。マイクロソフトと日本HP、CTCの3社は8月27日、マイクロソフトの仮想化ソフト「Hyper-V」の動作検証分野で協業を始めた。Hyper-Vを用いて仮想環境を構築する手法を早期に確立して、今秋からサービスとして展開していく。

これに先立ち日本IBMと日本オラクル、アシストの3社は7月10日、IBM製品とオラクル製品を活用した仮想化技術の促進を目的に「アシスト・IBM・オラクル仮想化アライアンス」を設立した。IBMのサーバーとストレージで構成するシステム上でオラクルの仮想化ソフト「Oracle VM」を動かし、推奨のシステム構成を明確にする。

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