[製品サーベイ]

選択肢広がるシンクライアント製品比較─セキュリティとコスト削減で再び脚光、本格導入に踏み切る企業が増加

製品サーベイ 第1回

2008年10月20日(月)IT Leaders編集部

シンクライアントに関心を寄せる企業が増えている。情報漏洩の防止やシステム運用の効率化が企業の喫緊の課題となる中、その解決策として注目しているのだ。製品の選択肢も充実し始めた。低価格化、高性能化と相まって、多様なニーズに応えられる環境が整いつつある。

2007年7月、大和証券グループはセキュリティと事業継続基盤の強化を目的にシンクライアントを導入すると発表。導入台数が合計1500台と国内最大規模だったため、大きな話題を集めた。2010年度までに合計3万台と、はるかに大量の導入を決めたところもある。昨年イージス艦に関する情報流出事件が発覚した海上自衛隊である。ほかにも外為どっとコムや大林組など、セキュリティ意識の高い企業の導入事例は、もは枚挙にいとまがない。

再評価される「サーバー一元管理」

シンクライアントとは、多くの処理をサーバー側に担わせることを前提に、必要最小限の機能のみを搭載したコンピュータ端末を指す。ディスク装置は搭載せず、周辺機器を接続する入出力端子も絞り込んでいる。

最初に世を賑わせたのは90年代半ば過ぎのころだ。パソコンが高機能化と高価格化の一途をたどっていた当時、そのアンチテーゼとしてネットワークコンピュータという呼称で登場。しかし、折しもパソコンは大量生産によって価格が急落するようになり、「低価格」のアドバンテージが薄れたシンクライアントは日の目を見ることなくブームが去った。

だが、ここにきて別の観点からシンクライアントは再評価されるようになった。仮想化をはじめとする技術進歩の追い風もあり、「運用管理の効率化」と「セキュリティの確保」を両立できる業務端末として企業が注目するようになったのだ。

あたらめて特徴を整理しよう。まずシンクライアント導入による大きな利点として、TCO(総保有コスト)削減効果がある。多くのモデルはディスクも冷却ファンも持たないため消費電力を抑えられるほか、駆動部分がないことから故障しにくく、通常3〜5年といわれるパソコンの寿命に対し、シンクライアントは10年近く利用できると言われる。

また、サーバーでOSやアプリケーションを一元管理するため、個々の端末に対してのアプリケーション導入や不具合に対処するパッチ適用が不要となり、システム担当者の煩雑なメンテナンス業務を軽減できる。

だが今注目を集めているのはセキュリティ面での特徴だ。シンクライアントはフロッピーディスクやハードディスクなどの記憶装置がないことからデータを端末側に保存できない。人為的ミスや悪意によって重要なデータが流出したり持ち出されたりといったリスクを抑える効果が見込める。企業の社会的責任として内部統制やセキュリティ対策の強化が求められる中、その解決策の一つとしての期待が高まっているのだ。

注目株は「仮想PC型」

シンクライアントは、サーバーでのOSやアプリケーションの実行方法、データ転送方法の違いにより、いくつかのタイプに分かれる(表1)。これまでは「画面転送型」がシンクライアントの大半を占めていたが、最近は画面転送型の一種である「仮想PC型」が注目されている。

表1 シンクライアントは実現方法によって大きく4つに分類できる

この方式は、サーバー上に「仮想パソコン」を形成するもので、アプリケーションだけでなくOSもサーバー上で動かす。最大の特徴は、サーバーリソースを最適配分できる点にある。クライアントの利用状況によって随時変化する負荷に応じリソースを動的に配分可能で、効率的なサーバー運用を実現できる。

高性能化が進み動画処理も

現在入手できる代表的なシンクライアントの仕様をまとめたのが次の表2だ。最近の傾向としては、これまで弱点とされてきた高性能化へのシフトが挙げられる。

表2 代表的なシンクライアントの仕様一覧

CPUは処理性能を高めながら消費電力を抑えたCeleron Mなどを搭載、動作クロック1GHz以上が主流だ。メモリーは最大で1G〜4GBまで搭載できるモデルもあり、最新のパソコンと比べてもそん色ない。

一定以上の処理能力が要求されるマルチメディア対応に力を注ぐモデルも増えてきた。これまでの画面転送型の場合、動画再生や高精細な画像表示、一般の電話を代替するソフトフォンなど、負荷のかかる処理を苦手としていた。しかし状況は一変、サーバー性能やネットワーク帯域の向上はもちろんのこと、シンクライアント側に専用ソフトを搭載して対応するモデルが登場してストレスなく利用できる環境が整いつつある。

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